夏休みも半分を過ぎ、「自由研究」の宿題を進めている子供たちも多いと思います。しかし、まだ始めていないという子供たちに、簡単でちょっと面白い研究をご紹介します。カラーペンは一色ではなく、いろんなインクを混ぜて作られていますが、その混ざっているインクを分ける実験、ペーパークロマトグラフィーという実験です。実験は1日で終わります。
1、研究のきっかけ
子供と水性ペンで絵をかいていた時、水で濡らしてしまった所のペンの色が滲んでいくにしたがって、別の色も出てきて不思議に思ったことがありました。インターネットなどで調べてみたら、ペーパークロマトグラフィーという方法があり、混ざっているインクを分けることが出来ると書いてありました。
そこで、自分たちでも実際やってみて、色の分離を調べてみることにしました。
2、研究の方法
ろ紙をつかったペーパークロマトグラフィーの方法で、色を分離させて色の成分を見てみる。
☆実験は、白のコーヒーフィルターを使ってできると本やインターネットなどに書いてありましたが、1回やってみると購入したフィルターが薄かったのかうまく分離できませんでした。そのため、今度はインターネットでろ紙を購入し(100枚入りで1000円程度)、実験してみるとうまくいきました。
ろ紙は直径12.5㎝のものを使用。
長方形にするために、たて12㎝、よこ3.5㎝に切って使いました。
3、研究の仕方
- ・たて12㎝、よこ3.5㎝に切ったろ紙を用意
・下から2㎝のところに、調べるペンで線を引く
・その下にトレイを置き、水に浸す。
●注 ペンの線が直接水につかないようにする
- 図2のような装置で実験を行う・・ろ紙の一番上まで水が来たら取り出して、ドライヤーで乾かす
- 実験するペン
- ピュアカラー(水性)
- ラッションペン(水性)
- マッキー(耐水性)
- マッキー(油性)
- 筆ペン
- サインペン
私達は、合わせて、37本のペンの色の分離を調べましたが、水性のペン数本だけでも色の分離は確認できるので、十分な自由研究になると思います。 - 実際の実験の様子
実験を始めると、ろ紙が水を吸って、水が上の方に上がっていきます。その途中で、色が滲んで、分かれて現れます。その色が分かれていく過程を観察するのも面白いです。
4、実験の結果
ピュアカラー(水性)の場合
☆特徴のあった色だけをピックアップして紹介します。
ピュアカラー 黒
ペンの色は黒なのに、はっきりとは黒は出ず、茶色と青色が分離されました。
ここでアドバイス!
実際のろ紙を貼るだけでなく、どのように色が分離されたのかを観察して色鉛筆で描きました。そして、どの色が何ミリ~何センチの幅で出たのかを測り書きました。以前、自由研究の審査員をしてくださった先生から、写真を貼るだけとか、実験の結果をただ貼るだけでなく、それがどのように見えたのか自分の目で観察して描いたり、測ったりすることが大事だと教わりました。ろ紙だけ貼っても、時間が経てば退色してしまうかもしれませんし、色鉛筆で描くことで、時間が経っても観察の結果を正確に伝えることが出来ると思います。
ピュアカラー 茶色
ペンは茶色なのに、青色や黄色も分離されました。
ピュアカラー 緑
ペンは緑色ですが、緑よりも青色が濃く出ました。
ピュアカラー オレンジ
オレンジ色のペンですが、黄色と濃いピンク色がはっきりと出ました。
ピュアカラー 灰色
ペンの色からは想像しにくい、黄色が分離されました。
ラッションペン(水性)の場合
次に同じ水性ペンのラッションペンで実験。
ここでは、上記のピュアカラーと同じ色で比較して紹介します。
ラッションペン 黒色
写真ではわかりにくいと思いますが、最初にうすい黄色が出て、先端にうすい赤色が出ました。全体的にうす黒く、その中にうすいピンク色も混じっていました。同じ水性の黒色でも、ピュアカラーとは違う色が分離されました。
ラッションペン 茶色
先端に灰色が出て、赤茶色、黄色とオレンジが混ざった色が分離されました。ピュアカラーの茶色は青色が分離されており、同じ茶色なのに違う色が分離されました。
ラッションペン 緑
緑色のペンですが、青色のインクが強く出て、ピュアカラーの緑色と同じような分離となりました。
ラッションペン オレンジ
ペンの色はオレンジ色ですが、ピンク色と黄色がはっきりと出て、ピュアカラーのオレンジ色と同じような分離となりました。
他にも面白い分離が出来たのは、筆ペンです。
筆ペンの場合
黒からは想像しにくいうすい紫色、はっきりとした青色などが分離されました。
この他、耐水性のペン、油性のペンを全色水に浸してみましたが、色は分離されませんでした。
油は水に溶けにくいし、耐水性という事は水にも強いという事ですので、こういう結果になったのだと思います。そこで、油性の場合は除光液に浸したら分離できるとペーパークロマトグラフィーの方法に書いてあったので、除光液に浸してみることにしました。
油性マッキーの場合
油性マッキー 紫色
いろいろな色が分離されました。
最初に水色、そして青色、紫色、赤紫、ピンク色の色に分離されました。
油性マッキー 茶色
茶色のペンですが、うすい青色、うすいきみどり、黄色、茶色、赤色、オレンジ色といろいろな色に分離されました。
油性マッキー 赤色
赤色のペンですが、はっきりと黄色も分離されました。
5、実験をして分かったこと、感想
- 液体を吸い上げて色が分離されていく過程を観察するのはとても面白かったです。だいたい5~10分でろ紙の上まで液体を吸い上げて、ペンによってさまざまな色が分離されました。
もともとの色とは想像つかないような色も分離され興味深かったです。 - 同じ水性ペンでも、ラッションペンとピュアカラーでは、同じような形で分離されるものと、違う形で分離されるものに分かれました。
- また、同じ黒色でも、ラッションペン、ピュアカラー、筆ペン、それぞれ違う色の分離になりました。
- 耐水性のペン、油性のペンは、水では分離されませんでしたが、除光液に浸すと多くのペンは色が分離されました。
- このことから、ペンを作る際、いろいろな色のインクを混ぜて工夫して作られているんだという事がわかりました。
6、なぜ色が分離するのか?
インクは色によって水への溶け方が違っているそうです。水に溶けやすかったり混ざりやすかったりする性質のあることを親水性というのだそうですが、親水性の高いインクの色は水によく溶けてろ紙を登りやすく、逆に親水性の低いインクの色は水に溶けにくいのでろ紙を上昇しづらい。この事から、色が分離されるという事です。
この実験は、実験するペンの本数にもよりますが、例えば12色の水性ペンであれば、2~3時間もあれば十分終わる実験ですし、まとめまで書いても頑張れば1日で終われる自由研究だと思います。色が分離されていく過程も面白いですし、ペンの色というのは1色のインクだけで作られているのではないという事もわかり、興味もわくのでぜひ親子で取り組んでいただきたいと思います。