昨年の夏休み、てのんでは親子で楽しく自由研究について学ぶワークショップを開催しました。参加者からも「来年も是非開催して下さい」というお声をいただき、2回目の開催を予定していましたが、新型コロナウイルスの感染予防のため、今年は取りやめる事にしました。
そこで、少しでも自由研究のお役に立てたらと、我が家で親子で取り組んだ内容をシリーズでご紹介したいと思います。
夏休みの悩ましい宿題の一つが「自由研究」ですよね。
何をテーマにして、どのように実験・観察を進め、まとめるのか、自由研究をするのはなかなか大変です。私も3人の子供が小学生の頃、親子で悪戦苦闘しながら取り組みました。
今年は、新型コロナウイルスの影響で休校が続いたため、夏休みが例年より短くなり、もしかすると自由研究の宿題は出ないところもあるかもしれません。ですが、自由研究は子供たちの科学の目を養うきっかけにもなると思いますので、宿題のあるなしに関わらず、なにか一つでも親子で取り組まれたらいい経験になるのではと思います。
例えば、夏休みに入る前から、植物の成長の観察を始めるのも良いかと思います。
そこで、娘が小学2年生の夏休みに取り組んだ「さつまいものかんさつ」についてご紹介します。
さつまいもの成長を観察する
私が流しの下の野菜ストックにさつまいもを置きっぱなしにしていたら、いつの間にか芽が出てきていました。そういうご経験ってありませんか?
私が「あー、芽が出てきてしまったね」と娘に言ったら、「1年生の生活科の授業でさつまいもは種から育てないで実から育てることを習ったから、さつまいもの実を育てると芽が出て大きくなるの?」というような事を言ったので「じゃあ、これを夏休みの観察にしようか!」という事になりました。
以下、親子でまとめた観察の記録を順を追ってご紹介します。
- 観察のきっかけを書く
- 観察の目的を書く
①さつまいもをいろんなところで育てて、そだちかたにちがいがでるかしりたい。
②さつまいもをそだてるにはどんなことがたいせつなのかしりたい。 - 観察の内容を書く
南のベランダ、北のベランダ、光の当たらない暗い倉庫の中、冷蔵庫の中、と4つの場所に2つずつ、水の入ったコップに入れたさつまいもを置いて、さつまいもを育てるにはどんなことが大切なのか調べる事にしました。
- 育ち方の予想をしてみる
予想をするということは、とても大事だと思います。
実際に観察してみて、自分が予想していたことと同じだったのか、それとも違っていたのか、もし違っていたらどうして違っていたのか、考察を深める事ができると思います。(そだちかたのよそう)
①日がたくさんあたるほうが、さつまいものそだちかたはいいと思う。
②さむいところよりあたたかいところのほうがそだつと思う。 - 観察を記録する娘は、絵を描くことが好きだったので、観察を始めた8月1日からほぼ毎日、ひたすら観察の記録を描かせました。A3の紙に、あらかじめ絵を描く枠と、観察した様子を文章にして書く枠を書いた用紙をたくさん印刷して、出来るだけ楽に描けるように工夫しました。
実際の観察の記録
8月3日の様子
娘が書いた記録(抜粋)
(みなみのベランダ)
①出ための数が11個になりました。くきがさらにのびて2cmくらいになりました。1つのめからのびたくきは2つから3つにわかれて、くきのさきにはみどり色の小さなはっぱがついています。
下の方からねっこがでてきました。(くらいそうこの中)
くきが3㎝くらいのびてきました。上にむかってまっすぐのびています。でもみどりのはっぱのようなものは出ていません。観察をしながら心がけたことは、子供一人で観察するのではなく、親子で観察した事です。
子供なりの発見がありますが、それを一人で上手に文章にして書くというのは小学校低学年ではまだ難しいと思います。ですので、「出た芽の数はいくつあった?」「伸びてきた茎の長さはどのくらいあるかな?」「茎の先に出てきた葉っぱは、どんな色をしている?どんな形をしている?」など具体的に観察の記録が書けるように導きました。
すると子供の方も「11個も芽が出ている」とか「茎が何センチあるか定規で測ってみよう。」などと細かに観察するようになってきました。
そして、1週間も経つとだいぶ変化が出てきました。
8月8日の様子
(みなみのベランダ)
くきの長さは6㎝くらいになりました。はっぱも2㎝~3㎝くらいの大きさになり、はっぱの数を数えたら、しっかりひらいているのが13枚ありました。(きたのベランダ)
くきがのびて、はっぱも出てきました。はっぱの大きさはみなみのベランダのものよりまだ小さいです。多くのはっぱはまだとじています。(くらいそうこの中)
くきの長さが2日で10センチものびました。びっくりしました。でもくきがのびているだけではっぱはあまりついていません。はっぱの色もうすい黄色でよわよわしいかんじがします。南側のベランダのさつまいもの成長が早く、日の当たらない倉庫のさつまいもは、ちょっと違った成長をしています。冷蔵庫のさつまいもは全く変化がありません。
8月12日の様子
そして、4日後にはこんな感じになりました。
用意した紙の枠には、さつまいもを描き切れなくなりました。観察を始める前は、枠を印刷した紙にずっと絵を描いていけばいいと、あまり深く考えずにたくさん印刷していましたが、さつまいもの成長は想像を超えていました。
紙を継ぎ足したりしながら描きました。
(みなみのベランダ)
はっぱがまた大きくなっていました。くきの長さはあまりのびていなくて長いくきで7㎝くらいです。はっぱはみどり色でとても元気です。(きたのベランダ)
みなみのベランダのさつまいものはっぱに大きさがおいついてきました。くきの長さも長いくきで8㎝あります。(くらいそうこの中)
くきがまたのびてきたなあと思ってみたらのびすぎて、今まではまっすぐにのびていたのにとちゅうからぐにゃっとまがっていました。くきの長さは60㎝くらいありました。8月16日の様子
(みなみのベランダ)
くきの長さは2日で1㎝くらいのびました。さいきんは大きくなるのがゆっくりです。ねっこがたくさんあるから水もよくへります。(きたのベランダ)
今はみなみがわのベランダより大きくなるのが早いかんじがします。くきも1ばん長いくきで12㎝あります。はっぱの数もみなみがわより多いです。それぞれの場所に2つずつさつまいもを置いたさつまいも、絵からもわかるように、南側のベランダも、北側のベランダも、1つはどんどん成長し、1つの成長はゆっくりでした。
また、北側のベランダのさつまいもが、南側のさつまいもよりも成長してきました。
単純に、南側の方が成長が早いのでは?と私も思っていたので、実際に観察をしてみないとわからないこともたくさんあるなあと思いました。
(くらいそうこの中)
くきがまた長くなっていました。1ばん長いくきで90㎝、ほかのくきも75㎝~90㎝くらいあります。はっぱはところどころについています。8月18日の様子
さらに成長したので、1枚の紙に1か所のさつまいもの様子を描くことになりました。
このころになると、娘も「葉っぱの数が多くてわからん」「どう描いたらいいのかむずかしい」と言うようになりました。その時は、なだめたり、励ましたり、私が少しさつまいもの様子を下書きしてあげたり、一緒に粘り強く取り組みました。
(みなみのベランダ)
さいきんはあまり大きくなりません。しかも今までははっぱの色がぜんぶこいみどり色だったのに、すこしきみどりになったはっぱがありました。かれてきたはっぱもありました。
(きたのベランダ)
とうとうみなみのベランダより大きくなりました。1ばん長いくきは13㎝5mmあります。見てもはっぱがこいみどり色で元気です。
(くらいそうこの中)
くきの長さをはかったら、長いくきで1m6㎝ありました。くきの長さが1m6㎝もあるからすごいと思います。
8月20日の様子
(みなみのベランダ)
くきの長さは前と変わっていませんでした。ベランダの気温が39どもあって、さつまいもを入れているガラスがあったかくなっていました。
(きたのベランダ)
1ばん元気がいいです。1ばん長いくきも16㎝5mmあって2日で3㎝も長くなりました。水もくきがいっぱいすってすぐなくなります。
観察は22日まで続け、その後まとめを書きました。
- 観察してわかったことを書く
●みなみがわの1つのさつまいもは1ばん早くそだっていたのに、とちゅうからきたがわのベランダのさつまいもにおいこされてしまいました。みなみがわはとてもあつくて8月14日ごろからは、39どもあってガラスもあたたかくなっていました。あまりあたたかすぎてもよくないのかなあと思います。●みなみがわときたがわのベランダにおいたさつまいもは、どちらも1つは大きくなって、1つはゆっくりとおおきくなっていきました。同じばしょでそだてても、めがでる力がつよいさつまいもとよわいさつまいもがあるのかなあと思います。●太いねっこが生えてきたらきゅうにくきやはっぱが大きくなりました。さつまいもが大きくなるためには、ねっこが水をいっぱいすいあげることが大切なのかなあと思います。●そうこの中のさつまいもはくきは1ばん長くなったけど、はっぱは黄色やうすい黄色でした。見たところよわよわしかったです。おひさまの光をさがすためにあんなにくきがのびたのかなあと思います。
●れいぞうこの中は、とうとうねもめもはえてこないで、さいしょとまったくかわりませんでした。
- 観察のまとめを書く
●さつまいもは日がたくさんあたりあたたかいほうがよくそだちますが、あまり日があたりすぎて気おんが高くなるところではそだちにくいことがわかりました。●同じばしょでそだてても大きくなるのが早いさつまいもとおそいさつまいもがあることがわかりました。
以上が娘ととりくんだ「さつまいものかんさつ」です。
1か月近く、毎日丁寧に観察すると、本当にいろんな発見があり、日々成長の変化を見るのが私も楽しみでした。
この「さつまいものかんさつ」は、科学コンテストで賞をいただき、審査員の先生から「2年生の子が、毎日、継続して観察を続け、根気強く細かく観察を続けたことがよかった」と言っていただきました。
その時、審査員の先生が「写真は、記録として撮っておいて、必要に応じて実験記録の中に貼るのはもちろんいいのですが、写真だけに頼らないということが大事です。結局、写真を撮ったことで満足して、自分の目で観察していないのです。写真に頼らず、スケッチをすることが大事です。」と話されました。
確かに、今日のさつまいもの様子といって写真を撮るだけだったら10秒で終わります。しかし、スケッチだとそうはいきません。葉っぱの枚数、大きさ、色、茎の長さ、根っこの様子など細かく観察しないと描けません。娘も1枚描くのに1時間くらいかかることもありました。つまり、その時間をかけて観察していることになるし、そうすることで細かな成長の変化に気づくという事だと思います。
このように、ある程度長期にわたって、植物や昆虫などの成長の観察を続けると、自然の力や生命の不思議を肌で感じることができると思いますので、夏休みの前から取り組まれてもいいのではないかと思います。
この他の自由研究のまとめ方のアドバイスについても、去年の記事に掲載していますので、参考にしていただけたらと思います。



次回も、理科実験や観察の自由研究のまとめ方のヒントを、具体的にご紹介します。