らっきょうの旬は、5月~7月。6月が出荷の最盛期です。スーパーの店頭にも、生らっきょうやらっきょう酢、保存瓶が並んでいて、初夏の訪れを感じます。この時期、自家製のらっきょう漬けをつくる方も多いのでしょうね。作り方、漬け方もそれぞれにおうちの味があるのでしょうが、今回は、私が数年前に教えていただいて、シャキシャキ食感のまま1年中、美味しく食べられる甘酢漬けのレシピをご紹介します。
鹿児島はらっきょうの一大生産地
鹿児島県のらっきょうの生産量は、鳥取県に次いで全国第2位。日本全国の生産量のおよそ30%が鹿児島産だといいますから、まさに一大生産地です。特に人気なのが、主な産地である日本三大砂丘のひとつ「吹上砂丘」で採れる砂丘地らっきょうです。もともとこの地域の土壌は、保水力が低く、痩せていて、作物の栽培には不向きな土地でした。その土壌を活かして何とか作物をつくれないかと取り組んだのがらっきょうづくりでした。すると砂丘地の水はけの良さが、良質のらっきょうづくりに適していて、実が引き締まり、繊維が細かく、肉質がしっかりしていて歯ごたえが良い砂丘地らっきょうができたのです。
試行錯誤の末、今では押しも押されぬ特産物になり、このらっきょうが店頭に並ぶのを楽しみに待つファンも多いのです。私は、夫がらっきょう好きということもあって、これまでらっきょうの甘酢漬けを漬けていましたが、それこそ自己流で、鷹の爪を入れたり、市販のらっきょう酢で漬けてみたりと、つくり方もまちまちでした。それはそれで、楽しかったのですが、数年前に教えてもらったレシピでつくったところ、「らっきょうの甘酢漬けつくるならこのレシピ!」と思うようになりました。
「色々つくってみたけどこのつくり方が1番よ!」と家村悦子さん
レシピを教えて下さったのは、親戚の家村悦子さん(鹿児島市在住)です。
悦子さんは、お友達からこのつくり方を教えてもらったそうですが、「このつくり方だと、時間が経っても果肉がクタクタにならずに、1年中シャキシャキ食べられるのよ。シャキシャキ感が全然違うものね。」と太鼓判を押します。この甘酢漬けが食べたくて、夫の和範さんは、この時期になると「悦子さん、立派な土付きらっきょうを見つけてきたよ。」とニコニコしながら買ってくるんだそうです。「こうなると漬けなきゃね~(笑)去年は8キロも漬けたのよ。」と悦子さんも嬉しそう。今年は、私も悦子さんも、まだ漬けていませんが、これからやってみようかと思う方に、つくり方をご紹介しますね。ちょっと手間がかかるけど、とてもおいしくできますよ。
悦子さんの1年中シャキシャキ、らっきょう甘酢漬け
悦子さんの甘酢漬けは、下漬け、仮漬け、本漬けと3段階の工程でつくります。私が去年つくったらっきょう2㎏分の材料で、つくり方をご紹介しますね。
材料
- らっきょう(土付きが良い)2㎏(ひげも薄皮もとった状態で)
- 下漬け用
水 1000㏄
塩 500g - 仮漬け用
水 1000㏄
酢 300㏄ - 本漬け用
水 600㏄
酢 400㏄
砂糖 1㎏
らっきょうの選び方
らっきょうは「土付き」のものと「洗い」のものが出ています。「土付き」の方が、水に浸かっていないため、実がしまっていてシャキシャキした食感を楽しむのにはおすすめですが、時間がない方は、洗いらっきょうでも美味しくできますよ。らっきょうは、鮮度の良い芽が生えていないものを選びましょう。芽が生えていると栄養分が芽の方に取られてしまうんですって。生命力旺盛ならっきょうは、放置しておくとすぐに芽が伸びてきてしまいますので、購入したらすぐに下処理することが大事。去年、私は購入してから、ちょっと、ほったらかしてたら、あっという間に芽が生えてきてしまいました。
すぐに取りかかれないときは、乾燥を防ぐために新聞紙などにくるんで、必ず冷蔵庫に入れて、できるだけ早く漬け込んでしまいましょう。甘酢漬けをつくる時私は、実がキュッとしまった、食べやすい大きさの小ぶりのものを選んでいます。
作り方
- 流水で洗って、らっきょうのおそうじをしましょう。
まずは下処理です。ボウルにらっきょうを入れて、流水にさらしながら軽く揉み洗いすると、土と一緒に大まかな薄皮も剥がれていきます。このあと、取り残した薄皮は手できれいに取り除いていきましょう。思いのほか骨がおれますが、薄皮や汚れが残っていると痛みの原因になるので、ここは丁寧に…
- らっきょうを切る
根っこと芽先の部分をカットしていきます。悦子さんによると、「この時、頭としっぽの部分を切りすぎてしまうと、出来上がりが柔らかくなってしまうので、切りすぎないことが大事よ」とのこと。この作業が終わったら、再び流水で洗って、ザルに上げ、キッチンペーパーなどで水気をしっかりと拭き取ります。水分が残っていると、カビなどが発生する原因になってしまうので、このひと手間をおしまないで。 - 下漬け(まず、らっきょうを塩漬けします)
水1000㏄、塩500gを火にかけて冷まします。
塩の分量が多いので、全部溶け切らないのですが、溶けなかった塩は、らっきょうの上にのせておけば大丈夫です。これを煮沸消毒した保存瓶に入れて10日間ほど置いておきます。
- 塩出し
10日後、10時間の間に5~6回に分けて水替えをして、塩出しをしていきます。大体2時間ごとの水替えになりますので、この日は、家にいて、らっきょうの水替えの日と決めています。 - 仮漬け
今度は、仮漬けです。水1000㏄、酢300㏄を火にかけて冷まします。この漬け汁でらっきょうを漬けて、さらに10日間置いておきます。 - 本漬け
いよいよ最後が、らっきょう酢をつくっての本漬けです。水600㏄、酢400㏄、砂糖1㎏を準備します。らっきょう酢をつくる時の砂糖は、悦子さんは、白砂糖か三温糖を使っているそうですが、私は、甘酢漬けをつくる時、いつも氷砂糖でつくっていたので、この時も、そうしました。「氷砂糖でもいいのよ」と悦子さん。甘味は、それぞれ使い慣れたもので良いみたいです。分量の材料をとろ火にかけ砂糖を溶かして、らっきょう酢をつくります。この漬け汁を冷まして、らっきょうを漬け込みます。
この時、らっきょうがしっかり浸かっていなくても「そのうち、らっきょうが沈んでいくので大丈夫よ。」とのことでした。このまま、冷暗所で保存します。悦子さんは、この時、種を取った鷹の爪を2本くらい入れておくそうです。「味が、ピリッと締まってくるみたいよ。でも、これはお好みでね…」10日ほど経つと、艶やかなカリカリのらっきょう甘酢漬けのでき上りです。これで、もう十分のおいしく食べられますが、もうちょっと経つと、味が馴染んで、染みてきて、よりおいしくなっていくそうですよ。
時間がかかった分、嬉しさもひとしお。このつくり方だと1年間、変色せず、カリカリのまま、歯ごたえの良い甘酢らっきょうを楽しむことができますよ。
この時期、つくっておくととても重宝
お茶請けや箸休めにそのまま食べても美味しいし、ピクルス代わりにソースとして使ったり、和え物やめんつゆなどに添える万能薬味として、とても優秀。うちでは台所の名わき役として活躍しています。残ったらっきょう酢も、栄養と旨みが溶け出した調味液として重宝しますよ。これからの暑くなる季節、夏バテや食欲不振にも効果を発揮しそうです。悦子さんに美味しくできるコツを聞いてみたところ、「とにかくレシピの分量通りにつくったら美味しくできますよ。」とのこと。
私は去年2キロ漬けましたが、おすそ分けしたり、ちょこちょこ食べていたら、残りが心細くなってきました。今年はもう少したくさんつくってみようかなぁ。らっきょうの出荷の最盛期は6月。鹿児島県産のらっきょうが出回るのは6月10日頃までと聞きましたから、早く取りかからなきゃと思っているところです。
鹿児島県民は生らっきょう好き
JA鹿児島県経済連の方から、興味深い話を聞きました。鹿児島県産のらっきょうは、加工用としてではなく、生らっきょうのまま出荷される割合がとても高いんだそうです。初夏が旬の生らっきょうを家庭で漬け物にしたり、食材としてお料理に使う方が多いんでしょうね。そういえば、そのままスライスして酢みそで食べたり、天ぷらにしたりすると、だれやめのお供にも最高ですものね。旬の新鮮な生らっきょうは、栄養価が高く「畑の薬」とも言われているそうです。初夏の味をそのまま楽しむのも良し、ちょっと頑張って1年分の保存食をつくっておくのも良し、今の時期にしか出来ない初夏の台所仕事、らっきょう漬けにみなさんも挑戦してみませんか?