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「暮らし」

師走の風物詩 表具屋さんの年の瀬の風景


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ある晴れた師走の朝、団地の商店街で障子の桟が陰干しされているのを見かけました。

近くの表具屋さんが障子の張り替え中なんだなぁ~と思いました。懐かしいような、ほっこりするような気持ちになり、覗いて見たくなりました。
障子の桟が陰干し
長い間この町に住んでいますが、この表具屋さんに入ったことはありませんでした。
勇気を出して、お店に入りました。

末吉表具店(鹿児島市) 突然のご訪問!ごめんくださ~い!末吉表具店(鹿児島市)
突然のご訪問!
ごめんくださ~い!

迎えてくれたのは、表具職人の末吉秋雄さん70歳。奥様とちょうど障子の張替え中でした。

障子の張替え中でお忙しそう…障子の張替え中でお忙しそう…

「さっき、障子を干してるのを見てたでしょ。何するの?」
「インターネットで記事書いてまして…師走だな~と思いまして…」
そんなやりとりがありまして…

忙しいお仕事の手を少し休めて、色々なことを教えて頂きました!

表具職人、末吉秋雄さん(70)表具職人、
末吉秋雄さん(70)

「昔はこの仕事は徒弟制度で、師匠のところに弟子入りして一人前になるもんだったんだよ。

私たちが、その徒弟制度の最後の世代の職人だろうねぇ。弟子入りして、5年間修行して、20歳の時に店を出したのよ。

だからもう50年以上やってるよ。もうこういう表具屋さんも数えるほどしかなくなったよね。」

表具師さん。

掛軸や額を作ったり、「ふすま」や「屏風」「障子」を仕立てたりする職人さんです。

「紙に関することはなんでも」と言っても良いくらい仕事の領域は広く、多岐に渡ります。

新しくつくるばかりでなく、古くから伝わるものを修復したり、日常の暮らしに密着した「ふすま」や「障子」の張替えまで、紙、布、糊(のり)を使っての職人技が求められる仕事です。

紙、布、糊を使っての紙、布、糊を使っての

 

職人仕事です!職人仕事です!

「昔はね、師走は忙しくて、走り回りおったよ。

建具を運ぶ大きな車も無かったから、お客さんの家に行って、そこで張り替えおったのよ。ミゼットっていう小型の三輪自動車があって、それに道具を積み込んで、お客さんの家で張り替えをしおったよ。

だから、あの頃は年の瀬の晩に、家に居たことはなかったよ。毎年、お客さんの家だったもんな~。」

末吉表具店 末吉秋雄さん(70)末吉表具店
末吉秋雄さん(70)

当時を懐かしそうにお話して下さった秋雄さん。その光景が目に浮かぶようでした。

伝統的な日本家屋が減り、和室のない家も増えてきました。

最近では、年末の風物詩だった障子の張替えの光景もあまり見かけなりました。それでも12月に入ると、障子の張替えを頼むお客さんが増えてくるそうです。

「やっぱり新年を新しい障子にして気持ちよく迎えたいという人がいるのよね。だからこの季節は忙しくて、精が出ますよ。」と、嬉しそう。

新年を新しい障子にして気持ちよく迎えたい新年を新しい障子にして気持ちよく迎えたい

店の中に並ぶ建具の数々を見ていて、改めて日本の建具ってスゴイなぁと思いました。

襖や障子は動く間仕切り。天然素材、和紙の断熱効果で冬は温かく、湿度の高い夏は紙が湿気を吸い取り、乾燥するとピンと張って自然調整してくれます。

障子は外からの視線を遮りながら、差し込む光を柔らかく取り込んでくれます。日本の気候風土に適した建具として長い間、重宝されてきたのが分かる気がしました。

こうした建具が、暮らしの場から年々少なくなってきていることを寂しくも感じました。

今年も残りわずか!夫婦二人三脚で、精を出します!今年も残りわずか!
夫婦二人三脚で、精を出します!

DIYブームで、最近は自分で張り替える人も増えてきているようですが、長年培った職人技で手際よく張り替えられていく障子をみていると、お正月を気分一新。真新しくなった障子で迎えたいという人たちの気持ちまで伝わってきました。

今も残る「師走の風景」に温かい気持ちに包まれたひとときでした。

師走の晴れの日、この光景にほっこり!師走の晴れの日、
この光景にほっこり!
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