住民みんなで知恵と力を出し合い、地域と暮らしを守っている、日置市東市来町高山地区。ここには、山のふところに点在する6つの集落があります。
高山地区公民館支援員の住吉仲一さん(67)に案内していただきました。
「尾木場は棚田がきれいで黒メダカも住んでますよ、一本杉っていう大木もあるんですよ、高塚西にはホタル、桑木野には岩屋観音ってとこがあって、そりゃもう神秘的で…」と、高山の名所自慢があふれ出します。
「ここにくると、気持ちが安らぐって、皆さん言いますよね。」


高山地区では、各集落の自治会が一つになった高山地区公民館を中心に、平成14年から「高山ふるさと秋まつり」を開催。地元でとれた農産物の販売、こんにゃく作りやかずら細工作り、マス釣り大会といった体験型イベントをひらいて、高山に足を運んでもらう取り組みを続けています。
「初めのうちは、まず知ってもらうのが大変だったけど、今は、毎年楽しみに来てくれる人たちも多かですよ。よそから人が来るようになると、きれいにしとかんなって思うでしょ。家庭でも、お客さんがくるってなればきれいするがね。それと同じ。だから、花を植えてみたり、80歳90歳の人たちが、定期的に草払いもしやっとですよ。」
多くの人をひきつける高山地区ですが、山がちな地形は、お年寄りが暮らすのには不便もあります。その一つが、買い物です。大型スーパーまでは10数キロ離れており、車の運転に不安があったり、車を持っていなかったりという人には、支援が必要。そこで「がんばろう高山」では、自前のワゴン車を使って、月に4~5回程度、住民の希望を募ってお買い物ツアーを実施。さらに、週に2回、移動販売車もやってきます。
「ほんの少しですけど、毎回1000円のガソリン代を補助して、来てもらってます。たくさん売れるわけじゃないし、車の維持費も大変みたいですけどね、ありがたいですよ。」と住吉さん。
移動販売車「木之下商店」の木之下正廣さん(69)です。隣のいちき串木野市からやってきます。
「もうやめようかて思うけど、やめがならんの。頼りにされてるからね。常連さんにやめようかねぇって言ったら泣かれてね。やりがいがあるよね。」
足腰の弱ったお客さんのところへは、あらかじめ電話で頼まれていたものを、玄関先まで届けます。
ヨーグルトやパン、お菓子などを買った小野博文さん(72)
「車がないからね。毎回楽しみだよ。よくしてくれるしね。」
桑木野美代子さん(75)も木之下さんの到着を待っていました。
「前はバイクに乗ってたんだけど、足が痛くて。助かるよね。」
自宅近くでのお買い物を望む人も、お店に出かけてお買い物したい人も、みんなが不便なく買い物できるように。買い物ツアーと移動販売車の運行は、住民全員が会員となって支え合っている「がんばろう高山」ならではの発想です。
高山地区では、今、新しい計画が進行中です。
公民館前にある古民家を、お茶やランチが楽しめるスペースにして、高山を訪れる人はもちろん、地域のみなさんが寄り合える場にしようというのです。道路向かいの消防車庫跡は、地元産の野菜のお店に生まれ変わる予定です。
「できることは何でも、まず自分たちでやってみるんです。地域力ですよ。外から人が来てくれるようになってからは、地元の魅力にも気がついてね、みんなどんどん動いていくんですよね。」と住吉さん。
ここでの暮らしをあきらめないために、自分たちで考えて、やってみる。高山地区のみなさんの取り組みは、やってやれないことはないんだと思わせてくれます。
高山地区のチャレンジ、またいつかお伝えしますね。
