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「生き方」

カンボジアの貧困の子どもたちにランドセルを!活動を続ける八田洋介さん


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「子どもの思い出のランドセルや古着、もし処分に困っていたら、それを必要としている海外の子どもたちに届けます!」そんな活動をコツコツと続けている方がいます。八田洋介さんは福岡市の教師を早期退職し、単身でベトナムに渡り、ベトナムを拠点としながらカンボジアなどの貧困の子どもたちにランドセルや古着を届ける活動をしています。一時帰国された八田さんに活動にかける思いを伺いました。

「福岡 絆 プロジェクト」を立ち上げた八田洋介さん

八田洋介さん八田洋介さん

2023年4月、NPO法人「福岡 絆プロジェクト」を立ち上げた八田洋介さん(64)です。
最近では、2023年11月にもカンボジアのシュムリアップ市の小学校を訪問し、教え子や保護者から提供のあったランドセル19個を届けました。
「一人で届けに行くことも多いのですが、今回は賛同していただいた、教え子の保護者の奥田一行さんも一緒に訪問できましたので、いつもより多く渡すことができました。」

「一人で届けに行くことも多いのですが、今回は賛同していただいた、教え子の保護者の奥田一行さんも一緒に訪問できましたので、いつもより多く渡すことができました。」
ランドセルを渡しているのは同行した奥田一行さんランドセルを渡しているのは同行した奥田一行さん

小学校では贈呈式があり、たくさんの子どもたちの中から、現地の先生が「ぜひ、この子に渡してあげてください。」という子どもたち19人にランドセルが贈られました。
「子どもたちは、スポーツバッグやリュックサックで学校に通っていますが、6年の間には古くなって使えなくなります。その点、ランドセルは日本で6年間使った後としても、頑丈に作られているので、その後の6年間も十分に使えると思います。特に厳しい環境の中で育っている子どももたくさんいますので、そういう子たちが安心してランドセルを背負って学校に通えたらという願いがあるんです。また、日本の子どもたちも自分が使っていたランドセルが海外でまた役に立っている。参加してよかったとボランティアの芽を育てる意味でも有効だと考えています。」

子どもたち19人にランドセルが贈られました。

カンボジアの教育制度は日本と同じ6・3・3制で、最初の9年間が義務教育とされています。しかし、特に地方の農村部では子どもが貴重な労働力になっていたり、制服や学用品などの必要なものを揃えてあげられない家庭も多く、学校に通っていない子どもも多くいるそうです。

シュムリアップは世界遺産となっているアンコール・ワットがある市で、海外からも多くの観光客が訪れていますが、都市部を離れると農村地帯が広がっており、そこに住む人々は、決して豊かではない暮らしをしています。
子どもたちは、ほとんどがサンダル履きで登校し、はだしで通う子たちもいます。

シュムリアップ市の郊外シュムリアップ市の郊外
サンダル履きやはだしで登校サンダル履きやはだしで登校

これまでランドセルを贈ったある1人の女の子の家庭の事情です。
両親が都会に出稼ぎに行き、祖母が1人で3姉妹の面倒をみています。最初の頃は両親からの仕送りもあったそうですが、途中で滞り、連絡が途絶え、今はなんとか祖母が1人で3人の孫を育てています。そんな厳しい家庭環境の中、頑張って学校に通う女の子にもランドセルが贈られました。
「カンボジアは仏教が国教で、人々は厚く仏教を信仰しています。子どもたちは手を合わせて、ニコッと微笑んで感謝の気持ちを表してくれます。言葉は通じませんがその笑顔のために活動を続けているようなものです。今は、ランドセルや古着を贈るという一過性の幸せしか与えられていない状況です。しかし、この事が一つの種になり、育っていき、負のスパイラルから抜け出すきっかけになってもらえたらと思います。そして、日本人って優しいなあという思いで育った子どもたちが増え、日本との親善交流にもつながっていけたらと願っています。」

言葉は通じませんがその笑顔のために活動を続けているようなものです。
今は、ランドセルや古着を贈るという一過性の幸せしか与えられていない状況です。

4年前にカンボジアの小学校を訪問した時は、朝食を食べずに学校に行く子も多いと聞いたことから、全校生徒約600人にそれぞれ1本ずつパンもプレゼントしました。

子どもたちにパンをプレゼント子どもたちにパンをプレゼント
全校生徒約600人にそれぞれ1本ずつパンもプレゼントしました。

できる人が、できる時に、できる範囲で

では、八田さんがこのような活動を始めるきっかけは何だったんでしょうか?
八田さんは、北九州市出身で、大学は福岡大学の法学部に入学しました。そこでボランティアサークルに入り、様々な養護施設を訪問し子どもたちと触れ合う活動をしてきました。また、学生時代一人暮らしをしていた地域で、ちょっとしたきっかけから子どもたちのソフトボールチームの監督をつとめる事となり、子どもたちと喜怒哀楽を共にしました。その経験から、子ども達と近い関係の仕事がしたいと、教師を目指す決意をし、通信教育で教員の資格をとり、福岡市の小学校の先生となりました。
今から29年前の阪神淡路大震災の時には、勤めていた小学校の子どもたちに呼びかけ文房具や生活用品を集め、支援物資を車に積んで震災1週間後に宝塚に行き、ボランティア活動を行いました。

八田 洋介さん八田 洋介さん

「頭で考えないですぐ行動してしまうんです。何も難しいことは考えていません。体が自然と動いてしまうんですね。」

そして、55歳の時、体力の衰えを感じた八田さんは、動けるうちに動いておきたいと思い、早期で教職を辞め、日本各地を車で旅しながら、災害が起きた地域があれば、そこに行ってボランティア活動をするという生活を送っていました。
八田さんの車は、助手席から後部座席にかけてフラットになり、そこで寝泊りをし、食料も持参で自己完結型のボランティア活動に努めました。

八田さんの車八田さんの車
災害ボランティアとして活動する八田さん災害ボランティアとして活動する八田さん
九州北部豪雨 日田の災害の様子九州北部豪雨 日田の災害の様子

2016年の熊本地震、2017年の九州北部豪雨、2018年には東日本大震災からの復興が続く宮城県でカキの養殖の手伝い、そして2020年熊本の人吉・八代などを襲った令和2年豪雨でのボランティア活動などを続けてきました。
「できる人が、できる時に、できる範囲でいいのでやれることをする。その姿勢が大事だと思うんです。何も大がかりなことはできなくても、そうした小さな活動の広がりや、優しい思いやりが、被災した方たちへの心にきっと届くと思うんですね。」

そして、今後は海外にも目を受けようと、国際交流基金(JF)が募集している海外での日本語教師に応募し、
希望していたベトナムでの採用が決まりました。
そして、ベトナムの高校で日本語を教えた後、コロナで一時帰国したりしましたが、任期を終えた後も、ベトナムの子どもたちに日本語を教える活動をしていきたいと、ベトナムに留まり、現在は、個人で日本語教室を開いています。
その中で、カンボジアで日本語教室をしている方と出会い、現地は貧富の差が大きく、かなり厳しい生活をしているという子どもも多いという話を聞きました。

実際、八田さんがカンボジアの首都のプノンペンのホテルに宿泊した時のことです。夜になると、通りの壁に毛布や布で雨よけを作り、家族がそこで寝泊りしている光景を目にしました。また、子どもたちがざるやボールを手に、道行く人にお金を恵んでほしいとお願いする姿もあちこちで見かけたそうです。

家族が通りに寝泊りしている家族が通りに寝泊りしている
お金を恵んでほしいとお願いする子ども達お金を恵んでほしいとお願いする子ども達

「首都のプノンペンでこんな光景を見るなんて、とても衝撃を受けました。カンボジアの現状を肌で感じ、何かできることはないかと考えたのです。」
そこで八田さんは、日本ではランドセルや古着の処分に困っている人もいるので、まずはそれを有効活用できないか?と考えました。ここでも「頭でいろいろ考えるより行動を!」という八田さんはすぐに行動します。

カンボジアの子どもたちにランドセルを

八田さんは、一時帰国した時、知り合いの先生や、教え子、その保護者などに呼びかけ、ランドセルや古着を集めました。

提供されたランドセルや古着
提供されたランドセルや古着提供されたランドセルや古着
提供されたランドセルや古着

息子さんが小学生の時、八田先生にお世話になったという上城圭子さんも、息子さんのランドセルやグローブ、古着などを提供しました。

上城 圭子さん上城 圭子さん
ランドセルなどを提供する上城さんランドセルなどを提供する上城さん

「息子の思い出のランドセルでしたが、倉庫にしまったままでいるよりも、カンボジアの子どもたちが嬉しそうに使ってくれたら、ランドセルにとっても幸せなことだなと思い、提供しました。今頃、息子のランドセルをカンボジアの子どもが使っていると思うとワクワクします。」

また、当時再任用されていた小学校で、八田さんの思いに賛同し、卒業式で背負ってきたランドセルをそのまま提供してくれる子どもたちもいました。

卒業式でランドセルを提供する子ども達卒業式でランドセルを提供する子ども達
卒業式でランドセルを提供する子ども達

また、八田先生の教え子が園長を務める筑紫野市の保育園では、古着やカバンなどの回収を呼び掛けるなど、少しずつ支援の輪が広がっています。

保育園でも八田さんへの支援活動保育園でも八田さんへの支援活動
保育園でも八田さんへの支援活動

八田さんは1年に4回ほど帰国するそうですが、その時に、集められたものを段ボールに詰めて、またベトナムに向かう時に持っていきます。
「1人で運べるのは20㎏×2の40㎏ほどで、大きな段ボールにランドセルが10個入ります。そのランドセルの中に古着を入れたり、隙間に古着を詰め込んでベトナムまで持って行きます。拠点としているベトナムのバリア・ブンタウ省からカンボジアのシュムリアップまでは、バスで運びます。バスを乗り換え、現地に着くまで大体15~16時間かかる道のりで、なかなか大変です。
昨年の11月は、支援者の奥田さんが一緒についてきてくださったので19個のランドセルを持っていく事が出来ました。ただ、ほとんどが1人で活動をしているので、1度に持っていける量は限られています。しかし、現地の小学校の先生が、『また、持ってきてくださるのを楽しみにしています。』と言ってくださっているので、地道に集めてコツコツと届けたいと思っています。」

シュムリアップの小学校で、現地の先生と記念撮影シュムリアップの小学校で、現地の先生と記念撮影

確かに、八田さんお一人で運べる量は限られているかもしれませんが、その活動を積み重ねていくと、贈られる数は相当な数になっていきます。継続した活動は、きっとカンボジアの子どもたちの心に届き、実を結んでいくと思います。


津上さんという支援された方への感謝のメッセージ

絆プロジェクトのロゴマークは水引の『梅結び』という結び方です。この梅の形は日本の活動の拠点である福岡県の県花であり、また、梅結びは固く結ばれていてほどけにくく『固い絆』という意味合いがあり、八田さんの思いが込められています。

絆プロジェクトのロゴマークは水引の『梅結び』という結び方です。今回、八田さんが帰国した時、上城さんは水引の紐を提供しました。水引結びの教室に通っていた上城さんは、日本の文化を知ってもらうためにも現地の子どもたちに水引の結び方を教えたらいいのでは?と八田さんに提案し、紐を提供したのです。

今回、八田さんが帰国した時、上城さんは水引の紐を提供しました。
あわじ結び あわじ結び

上城さん「ロゴマークになっている『梅結び』の結び方は少し難しいですが、『あわじ結び』ならなんとかできると思います。この『あわじ結び』は末永く付き合うという意味もありますので、ぜひ、ベトナムやカンボジアの子どもたちに教えていただきたいという思いです。」

今後の活動について

八田 洋介さん八田 洋介さん

「私もだんだん年を取ってきますので、今後はこの活動を引き継いでくれる後継者を育てていきながら、活動を長く続けていきたいと思っています。そして、まだ活動を知らない方も多いので、SNSなどを通じて繋がる人たちを増やし、協力してくださる方が多くなっていくよう呼び掛けていけたらと思います。
そして、一緒に現地に行って、一緒に子どもたちのもとにランドセルを届ける体験を是非していただきたいと思います。あの子どもたちの笑顔、嬉しそうな表情をみると、絶対、自分も活動をしていきたいと思っていただけると思うんです。このようにボランティア未経験の方にもボランティアの輪が広がることを願っています。
ランドセルを通して優しい気持ちが伝わり、それが希望の種になり、一人でも多くの子どもたちが、前に向かって進んでいけるよう、そして未来が開けるよう、これからも活動していきます。」

八田さんの活動は、カンボジアの子どもたちにランドセルを贈ることが中心ですが、他にもベトナムの養護施設に古着などを贈ったり、プールで泳いだことのないカンボジアの子どもたちをホテルのプールに連れて行って泳がせたり、活動の幅も少しずつ広げています。

ベトナムの養護施設に古着などを提供ベトナムの養護施設に古着などを提供
上城さんの息子さんが使っていたグローブも贈られた上城さんの息子さんが使っていたグローブも贈られた
カンボジアのホテルで泳ぐ子どもたちカンボジアのホテルで泳ぐ子どもたち

このように単身ベトナムに渡り活動を続けている八田さんですが、奥様は福岡で夫の活動を陰ながら応援しています。
「これまでも何をやるにも妻には事後報告で、そんな私を理解してくれているのか、あきらめているのか、でもこっそり応援してくれています。先日、ベトナムのテレビ局が私を取材してくれて、そのことを妻にLINEで報告すると『すごいですね。尊敬しています!』と返信があり、はじめて褒められました(笑い)」
ご夫婦も固い絆で結ばれていらっしゃるようです。

最後に・・・

思いはあっても、行動に移すのはなかなか簡単なことではありません。
八田さんは、頭で考えるよりまずは行動を!という思いで、エネルギッシュに今やりたいこと、今やれることを実践されています。相手を思いやる優しい気持ちと、この子たちのために何か力になりたいという情熱が活動の原動力になっているのだと思います。
そしてこうした活動をしている八田さんご自身も幸せや喜びを感じているのかなと思いました。

八田さんは、1月下旬にまたベトナムに旅立ちます。
その際は、前述した先生の教え子で、保育園の園長をしている方が、新たに保育園で集めた古着やカバンを持って、八田先生と一緒にベトナムに行き、現地の養護施設に直接渡しに行く計画もあるそうです。
また、この1年半の間に、先生の教え子、保護者、元同僚の方が9組延べ10回、八田さんを慕って、現地での活動を体験したいと、ベトナムやカンボジアに訪問しているそうです。
八田さんにとって、多くの応援してくださる方の支えが大きな励みになっているそうです。
私たちも、八田さんの活動を応援させていただきたいと思っています。

八田さんの活動に賛同してくださる方。例えば、ランドセルや古着を提供したいとか、提供品を集めて回るお手伝いならできる、活動費の資金援助であればできるなど、支援をしたいという方は、フェイスブックで「福岡絆プロジェクト」をご覧になるか、または、直接、以下の八田さんのメールにご連絡ください。よろしくお願いいたします。
八田洋介さん連絡先  >>メールでのお問い合わせ

できる人が できる時に できる範囲でできる人が できる時に できる範囲で

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