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「生き方」

金曜日はカレーの日 南九州市の元地域おこし協力隊岩崎泰依さんが作るスパイスカレー


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毎週金曜日のお昼前になると、南九州市役所の玄関前にテイクアウトのカレー屋さんがやってきます。本場インド仕込みのスパイスカレーのお弁当が好評で、すぐに売り切れてしまう人気ぶりです。このスパイスカレーを作っているのは南九州市の元地域おこし協力隊の岩崎泰依さん。協力隊の任期を終えて間もない2021年10月から週に一度の販売を始めました。

実は岩崎さん、これまで20回以上インドを旅し、1年間暮らしたこともあるインド通。自分でスパイスを調合して作ったカレーを友人にふるまったり作り方を教えたりしているうちに、その味と知識が評判となり、協力隊の任期終了後はスパイスカレーの販売が主な仕事となりました。岩崎さんの作るスパイスカレーを食べてみたくて、南九州市知覧に出かけてきました。

カレー好きもそうでない人も食べたくなる味

3月最後の金曜日、11時45分からの販売ということで少し早めにお邪魔しました。メニューは週替わりで、毎月最終金曜日は鶏肉を使ったチキンバターマサラ弁当の日。ターメリックライスにチキンバターマサラ(マサラとはスパイスを混ぜ合わせた調味料の総称だそうです)、ひよこ豆の粉とジャガイモ、ニンジン、スパイスを混ぜて揚げたフリッター、そしてタケノコとゼンマイのアチャール(スパイスを使った漬物のようなもの)が入ってひとつ600円、大盛りは700円です。テイクアウト用のケースに入っていても、スパイスのいい香りが漂ってきます。

タケノコとゼンマイのアチャール(スパイスを使った漬物のようなもの)が入ってひとつ600円、大盛りは700円です。

あらかじめ予約するお客さんが多く、この日は指宿からのお客さんも。ちなみに私も予約しておきました。岩崎さんは配達もあって仕分けに大忙しです。

あらかじめ予約するお客さんが多く、この日は指宿からのお客さんも。ちなみに私も予約しておきました。岩崎さんは配達もあって仕分けに大忙しです。

時間になるとさっそく年配の男性がやってきました。地元知覧町在住で毎週買いにこられるそうです。
「カレーはそんなに好きじゃないんだけど、ここのはうまいから来るんです。ひとりだからさ、たまには外食しようと思ってね。」
続いて買いに来られたのは同じく地元の60代の女性。自宅から2㎞の距離を自転車でやってきました。
「他では食べられない味ですよ。私、ピリピリしたスパイスがダメだったんだけど、ここのは大丈夫なの。岩崎さんのおかげでインドが身近に感じられるようになりましたよ。岩崎さんのことを応援したい気持ちもあって、月に2回ほど買いに来ます。」
12時を過ぎると市役所の職員の方々が次々とやってきました。この日を心待ちにしているという方も。

行列ができました行列ができました

予約なしの飛び込みのお客さんも何人かやってきて、この日用意した分はすぐに完売しました。誰もがおいしいと口をそろえる岩崎さんのスパイスカレー。いただいてみると香り豊かで味はまろやか、副菜もスパイシーなのにやさしい味で、人気なのがよくわかりました。

バターチキンマサラ弁当バターチキンマサラ弁当

岩崎さんが届けたいのは、インドの家庭料理だといいます。
「私が好きなのは、インドのおうちのごはんなんです。インドでは、おかあさんが家族の体調やその時期の食材に合わせてスパイスを調合して食事を作ります。インドのホームステイ先で食べたごはんはほんとにおいしかったです。私の作るインド料理は現地そのままではなくて、このあたりの食材やみなさんの口に合わせて独自にアレンジしています。」

地域おこし協力隊のその後は…

学生時代にインドを旅して以来インドが大好きになった岩崎さん。とりわけ現地で出会った布と食に魅了されました。布への深い興味は、やがて南九州市へ地域おこし協力隊としてやってくるきっかけになったのですが、その経緯については以前ご紹介しました。

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食への探求心も尽きませんでした。毎年のようにインドを旅し、仕事で1年インドに駐在している間も各地を食べ歩きました。帰国後は好きが高じて日本のインド料理店に転職。平日はインド人シェフの作るまかない料理を食べ、休日にはあちこちのインド料理店に出向いて、6年間ほぼ毎日インド料理を食べ続けました。まさしく舌で料理を覚えたという岩崎さん。地域おこし協力隊として東京から南九州市にやってきたときは、食材が豊富でうれしくなったそうです。

「インド料理によく使うオクラが、大きな袋にいっぱい入ってびっくりするくらい安かったんです。東京では考えられないです。トマトやジャガイモ、お肉も地元のものばかり。カレーにぴったりで、自分に合った場所に来られてよかったと思いました。」
カレーを作ってふるまうと好評で、請われて料理教室を開いたこともありました。協力隊の任期は3年。その後はどうするかを考えるうちに、知覧でスパイスカレーを販売して暮らしを立てていこうと考えるようになりました。

スパイスカレーのお弁当屋さんをはじめた

岩崎さんは協力隊の任期終了を前に、大家さんの承諾を得て自宅の敷地にある倉庫の半分を調理スペースに改装。食品を販売するための許可もとって準備を整えました。屋号は、糸車という意味の「チャルカ」と「カレー」を一つにして「チャルカレー」。綿の栽培や糸紡ぎ体験の運営をしてきた協力隊としてのこれまでに、カレー屋さんとしてのこれからが加わった、岩崎さんにぴったりのネーミングです。こうして、任期を終えた翌月の金曜日から週に1回の「チャルカレー」をスタートさせました。
「メニューは、その時々で手に入る食材から決めます。野菜は地元の無人販売所で調達したり、農家の方からお安く分けていただいたり。お肉も県内産です。スパイスのカレーリーフやパクチーは自分で育てているんですよ。」

カレーリーフカレーリーフ
自分で育てたスパイス自分で育てたスパイス

スパイスカレー弁当の常連は主に地元の方々ですが、評判は口コミで広がり、遠くは100㎞以上離れた伊佐市からもお客さんがやってきたそうです。今では70~80食売れる日もあって、仕込みや販売にアルバイトの方の手を借りるまでになりました。

調理場の岩崎さん調理場の岩崎さん

岩崎さんのオリジナルレシピを商品化した調味料「おかずスパイス」も製造・販売しています。「おいしいからこれ売ってみたら?」という友人たちの声がきっかけでした。

和え物、炒め物、ごはんや納豆にも合います和え物、炒め物、ごはんや納豆にも合います

忙しくて1週間があっという間だという岩崎さん。コロナ渦や物価高騰のなかで、個人事業主として自分の暮らしを支える厳しさを感じていますが、何とか頑張っていきたいと話します。
「市役所の方をはじめ、地元の方々にはほんとうによくしてもらってます。カレーのおかげで仲良くなった人もいて、人とのつながりが広がりました。ここでカレーを作って大好きなインドを知ってもらうのが私の役割なのかなと思っています。」

チャルカ(糸車)とチャルカレーの岩崎泰依さんチャルカ(糸車)とチャルカレーの岩崎泰依さん

知覧にインドの風を運んできた岩崎さんのスパイスカレー、一度召し上がってみませんか。

◆チャルカレー

☆スパイスカレー弁当の販売は毎週金曜日(祝日はお休みです)
場所:南九州市役所前
時間:11時45分~12時30分(売り切れ次第終了です)

※毎回のメニューはインスタグラム(charcurry2021)で告知します
ご予約はインスタグラムのダイレクトメッセージ
または電話(岩崎泰依さん080-6619-1861)でお願いします

☆「はじめてさんのスパイスカレー教室」は不定期開催で予約制
※ご希望の方は岩崎さんまでお問い合わせください

☆おかずスパイスは下記でも販売しています
道の駅川辺やすらぎの郷 南九州市川辺町清水6910番地
タツノオトシゴハウス  南九州市頴娃町別府5202-2
発酵食Lab       いちき串木野市旭町76-1

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