地域での見守りネットワークづくりや支え合いを支援する活動を続けている「みま~も・かごしま」(かごしま地域見守りネットワーク)が、空き家を活用した新しい地域づくりに取り組みます。
全国的に社会問題となっている空き家を地域の資源として活用し、ここから地域再生のモデルを創っていこうというプロジェクト。クラウドファンディングで活動への支援を呼び掛けています。
「みま~も・かごしま」とは…
プロジェクトに取り組むのは、「みま~も・かごしま」介護や医療の専門職が中心となって2年前に立ち上げました。鹿児島市の郡元地区を拠点に、誰もが安心して暮らせる地域づくりを目指して様々な取り組みを行っています。
去年4月と9月には、道に迷った認知症の人への対応を学ぶ見守り訓練を実施。地域の人たちと一緒に認知症の方への声かけ模擬訓練(地域丸ごと見守り訓練)を行いました。

また、いざという時の緊急連絡先などを事前に登録しておく安心のお守り「地域みま~もキーホルダー」の普及を呼びかけたり、毎月、地域課題について学ぶ地域づくりセミナーを開催するなど、地域での安心と繋がり合いを築く活動を続けています。
勝代さんの思いを受け継ぎ「この家」から始めたい…
「みま~も・かごしま」の活動の中心となってきた水口義夫さん(社会福祉士)は、活動を続ける中で、自分たちの活動をもっと身近で役立つものにしたいと思ってきました。
「活動をする中で、地域のみなさんが、普段着で集える場所の必要性を感じていました。ちょっと寄り道する感覚で、ここに来れば元気になる、悩みごとを相談できる、楽しい時間が過ごせる、そんなことが出来る場所を探していました。」
そんな時、ある方との出会いがありました。この地域に暮らす有村勝代さんです。勝代さんは、5年前に認知症と診断されましたが、在宅サービスを利用しながら、この地域での暮らしを続けてきました。
勝代さんは『デイケアに行くのは嫌だけど、人がこの家に来てくれるのは嬉しい。』とよく言っていたそうです。息子の宣彦さんと水口さんは協力して、一緒にこの家で認知症カフェを開いたり、地域の人たちと一緒にふくれ菓子づくりを楽しんたり、勝代さんと地域の人たちとのふれあいの場を作ってきました。
しかし、勝代さんは認知症の悪化で、昨年施設に入所されることになりました。
息子の宣彦さんの介護の日々については「てのん」でも2回にわたってご紹介してきました。


「母を最期まで在宅で看るつもりで、この家の近くに引っ越してきて、地域の方々や色々な方々の力を借りながら、母はこの町での生活を続けることが出来ました。空き家となった家で片づけをしながら、寂しさと共に、今後、この家をどうしたらいいのか悩んでいました。
このまま空き家にしてしまって良いのだろうか。空き家が大きな社会問題になっていることも気になっていました。
そんな時、「みま~も・かごしま」が地域のみなさんの集い場を求めているということがあり、この家をお世話になった地域の方々に恩返しするかたちで、お役に立てることが出来ないかと思うようになりました。」
勝代さんは、この町が大好きで、元気な頃は、町内会活動にも積極的に参加していました。そして、認知症になってからも、この家で地域の人たちとの触れ合いの時間を過ごし、そこが温かい交流の場となってきました。
再びこの場所を地域の人たちが繋がり合い、笑顔になるような場所として活用することができたら…互いの思いが一致し、地域の集い場づくりのプロジェクトが動き出しました。
この家に再び人の声を!
地域づくりの拠点に!
「みま~も・かごしま」と有村さんの共通の思いは、誰でも気軽に足を運び、お茶を飲みながら、世間話をしながら、ちょっとした悩みごとも相談できる場所にしたいというものでした。
高齢の方、子育て中のお母さん、子どもたち、障がいを抱える方々…立場の違う人同士が、互いに緩やかに交わりながら同じ時間を過ごせるような居心地の良い場所にしたいと、まずはここで小さなカフェを開くことにしました。
勝代さんの思いを大切にしたいとカフェの名前は「みま~もカフェかっちゃん邸郡元」にしました。
何かあったら「かっちゃん邸へ」
何も無くても「かっちゃん邸へ」
今、どこの地域でも核家族化が進み、かつてはどこにでも見られたような、ご近所同士の助け合いや繋がり合いが薄れてきています。もし「かっちゃん邸」のような場所が地域の身近なところにあったら、悩みを抱えた人たちがホッと一息つけたり、悩みの解決策を一緒に考えたりすることが出来るのではないかと思ったのです。
合言葉は「この地域で暮らす人たちを決して孤立させない」です。
プロジェクトリーダーの水口義夫さんは…
「公的な相談窓口はあちこちにありますが、そこまで辿りつけない人たちがたくさんいらっしゃると思います。
幸い私たちのメンバーは、医療や福祉の専門家が多く、ここを入口にして、支援に繋げていくことも出来ます。カフェでありながら、地域の困りごとを受け止めるソーシャルワーク・ステーションでありたいと思っています。
ここに来れば、何とかなるという存在になりたいですし、もちろん、何も無くても遊びに来ていただけるようなホッとステーションを目指しています。ここから地域の人たちの自主的なサロンやサークル活動なども生まれてくれば嬉しいですし、地域のみなさんの元気のもとになるような寄り合い所になっていけば最高です。
とにかく、みんなが繋がり合っていく始まりの場所にしていきたいです。」
かっちゃん邸のオーナー有村宣彦さんは…
「この話を地域のみなさんが喜んで歓迎して下さったことが何より嬉しかったです。母が帰宅した時には、地域の方々と再会できればと思っています。
それに、私もこの地域の住人になって、初めて見えてくることがたくさんありました。商店街が無くなったなぁとか、高齢の方が増えてきたなぁとか、裏筋に入ると人通りが少なくて、子どもには危ない場所がたくさんあるなぁとか。
小学生の子どもをもつ親として、子どもの貧困問題も気になります。この場所が、地域の駆け込み寺となって、地域の課題をみんなで考え、解決していく場所になっていければと思っています。」
ごちゃまぜコミュニティを目指して
6月1日のカフェオープンを前に、今月11日、トライアルを兼ねたカフェの内覧会が開かれ、多くの方が訪れました。提供して頂いた当日の写真を見ていると、みなさんの喜びが熱気となって伝わってきました。
有村さんのお母さんの一時帰宅も叶い、地域の方々との再会も果たしました。お母さんの笑顔が何より嬉しかったそうです。
かっちゃん邸は、誰でも出入り自由。そこには、高齢者、若者、障がい者、お母さん、子どもたちといった垣根はありません。今、注目のごちゃまぜコミュニティです。
いろんな人たちが交わることで生まれる「集い場」での新たな化学反応に期待しています。
色んな人がいてこその地域。その多様なフィールドで暮らす人たちが主役になって創り出す「みま~もカフェかっちゃん邸郡元」の明日に期待したいと思います。
これから、ここからどんなことが生まれていくのか…また、その後のカフェを覗いてみたいと思いました。
「みま~もカフェかっちゃん邸郡元」
6月1日(土)オープンです!
毎週 火曜、木曜、土曜日の午前11時~午後3時に開かれます。
コーヒー、軽食でのひとときが過ごせます。
お問い合わせ先
TEL:090-5939-7007
担当:水口さん
「みま~も・かごしま」では、クラウドファンディングでこのプロジェクトへの支援を呼びかけています。期間は5月30日まで…
水口さんたちは、今大きな社会問題となっている空き家を地域のステーションとして再生させる今回のプロジェクトを、地域再生の一つのモデルにしたいと考えています。
「みま~もカフェ」のような場所が地域の中に一つまた一つと増え、それが網の目のようにネットワークしていくことで、地域がより「安心できる」「繋がり合える」場所に変わっていくのではないかと考えています。
「みま~もカフェかっちゃん邸郡元」は、それを実現する第一歩。自分たちが目指している思いを伝え、共感の輪を広げていきたいと、クラウドファンディングというかたちでの支援を呼びかけています。期間は5月30日まで。