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行きたいを叶える!人気のオンラインお寺参りを見てきた!


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コロナ禍で、やりたいことが出来ない、行きたいところに行けない閉鎖的な暮らしが長く続きました。特に高齢者の施設で暮らすお年寄りにとっては、家族との面会やお出かけ行事が中止になるなど、閉ざされた生活が続いています。でも、この逆境が外の世界と繋がる新しいツールを誕生させ、ZOOMで家族と面会したり、観光地めぐりをオンラインで追体験したり、新しい変化が起きています。コロナ禍で生まれたオンラインお寺参りを見てきました。

オンラインで、お年寄りの願いを叶えたい!

「岡留さん、お時間があったらオンラインお寺参り見にきてみませんか?参加したお年寄りがどんなに‟祖先を敬う気持ち”を大切にされ、‟だれかを偲ぶ時間”を必要とされているかが分かるイベントなんですよ。」トラベルヘルパーとして精力的に活動し、ユニバーサルツーリズムの提案を続けている堤玲子さんからお声かけいただいたのは、昨年の11月終わりのこと。コロナ禍で自身がプロデュースした旅の中止が相次ぐ中、堤さん自身がガイドになってオンラインで鹿児島の観光地を紹介する「オンライン観光」を企画するなど新分野への挑戦を続けています。

オンラインで鹿児島の観光地を紹介する堤玲子さんオンラインで鹿児島の観光地を紹介する堤玲子さん

 

鹿児島の魅力をオンラインで配信鹿児島の魅力をオンラインで配信

堤さん、実はこれまで超アナログだったんだそうですが、旅に出かけられない人にどうしても旅の楽しさを味わってもらいたいと、オンライン配信に果敢にチャレンジ、試行錯誤しながら自身を進化させてきました。オンライン観光での体当たりナビゲーター、堤さん…こんな感じです。


そんな堤さんをオンラインお寺参りに導いたのは、あるお年寄りの切ないつぶやきでした。

外出だけでなく、病院のベッドサイドで旅のお話を聞くことも…外出だけでなく、病院のベッドサイドで旅のお話を聞くことも…

オンラインお寺参り開催のきっかけは…

「高齢者施設にいらっしゃるという100歳になろうかという方の『今年は、お盆もお彼岸も家には帰れなかった。もうお寺に行くこともできない、コロナになってから、子どもたちもずっと家に帰ってこられなくて、仏壇はほったらかし。いつもご先祖様に手を合わせてきたのに、このままでは、あの世に安寧な気持ちでいけない。』この声を聞いた時、これまで取り組んできたオンライン観光の手法を使って、お年寄りの祈りたいという思いに応えることはできないだろうかと考えたんです。」

時を同じくして、以前から親交があった鹿児島市の妙行寺(浄土真宗本願寺派)の井上從昭住職も同じ気持ちでいることを知りました。井上さんもまた、これまで年の瀬にお寺に行きたくても行けないお年寄りのために施設に出かけて、除夜の鐘を突く『お出かけ除夜の鐘』を毎年、ボランティアで続けていました。この2つの声が原動力になりました。

堤さん(左)と井上從昭住職(中央)ズームテクニカルスタッフの足立さとみさん(右)堤さん(左)と井上從昭住職(中央)ズームテクニカルスタッフの足立さとみさん(右)

井上住職は…

「お出かけ除夜の鐘の時に法話をさせていただくのですが、法話を聞くことなんて諦めていたけれどうれしかったというお声をたくさんいただいております。9月にオンラインで開催してみて、『画面越しでも、気持ちは伝わっている。直接お会いすることが難しくても、オンラインを使えば、もっとたくさんの人に届けられるのではないか。』と思ったんですね。」

施設で暮らすお年寄りは体力の低下や体調不良などで、お寺参りから遠ざかっている方が多く、これにコロナ禍が追い打ちをかけ、年に一度の初詣行事も中止となる施設が相次いていました。井上住職と堤さんの思いがひとつになって、年末年始、お寺にいけない人たちのために、オンラインで、お経や法話を聞いてもらいながら、心穏やかな時間を過ごしてもらいたいと実現することになったのです。

さぁ、ご一緒にお参りしましょう

この日のお参りは、鹿児島市谷山にある井上さんがご住職を務める浄土真宗本願寺派妙行寺です。12月1日、ちょうど前庭のイチョウの大木が黄金色に輝いていました。

浄土真宗本願寺派妙行寺(鹿児島市谷山)浄土真宗本願寺派妙行寺(鹿児島市谷山)

お参りは、施設のレクリエーションの時間に合わせました。お年寄りの体に負担が無いように、午後2時から約30分間。参加費は1施設8800円で、SNSなどで呼びかけたところ、鹿児島から北海道までの6つの施設からの申し込みがありました。

本堂ではオンライン配信機器をスタンバイ本堂ではオンライン配信機器をスタンバイ

時間前になると、各施設では、参加したいというみなさんが画面の向こうにすでに集まっていらっしゃいました。
時間前になると、各施設では、参加したいというみなさんが画面の向こうにすでに集まっていらっしゃいました。
堤さんをサポートしているのが、テクニカルサポーターの足立さとみさんです。足立さんは、堤さんがオンライン観光を企画した時から、技術面で支えてくれている心強いパートナーです。

Z00Mテクニカルサポートを担当する足立さとみさんZ00Mテクニカルサポートを担当する足立さとみさん

準備OK!お寺と施設がZOOMで結ばれ、いよいよオンラインでのお寺参りのはじまりです。堤さんは、お寺の門前の洗心橋(せんしんばし)を渡り、色づいたイチョウの葉っぱを手にしながら、みなさんにごあいさつ。

オンラインお寺参り始まりました…オンラインお寺参り始まりました…

「きょうは、鹿児島の方から、遠くは北海道の皆様まで…まこて、あいがとさげもす。ゆくさ、おさいじゃいもした。」
鹿児島弁で「きょうは(ご参加)ありがとうございます。ようこそ、おいでくださいました。」と語りかけます。

みなさん、ご一緒に参りましょう…みなさん、ご一緒に参りましょう…

ゆっくりと本堂に進みます。

足立さんがパソコンカメラで追いかけ、ライブ配信足立さんがパソコンカメラで追いかけ、ライブ配信

「参加してくださっているみなさんと一緒に歩きながら、お寺にお参りする気持ちでご案内しているんですよ。」と堤さん。外の景色や季節感を伝えることも大切にしています。

旅姿の親鸞聖人もご紹介旅姿の親鸞聖人もご紹介

旅姿の親鸞聖人もご紹介
そばで見ていると、テレビの30分番組の生中継リポートという感じです。

井上ご住職のご案内で本堂の内陣へ…井上ご住職のご案内で本堂の内陣へ…

本堂では、井上ご住職が笑顔でお迎えして下さいました。

浄土真宗本願寺派妙行寺 井上従昭住職浄土真宗本願寺派妙行寺 井上従昭住職

「ようこそおいでくださいました。きょうは、日本全国からのご参加とお聞きしています。みなさん、ごゆっくり参拝なさって下さい。」と話され、ご本尊の阿弥陀仏さまがおられる内陣の前に立って「まず正面で手を合わせて、こんな風にお念仏しましょう。」とお参りのお作法を教えて下さいました。

このように手を合わせてこのように手を合わせて

 

阿弥陀仏さまにごあいさつしましょう阿弥陀仏さまにごあいさつしましょう

この後、阿弥陀仏さまの前で、参加して下さった施設名を一つひとつ読み上げ、「仏説無量寿経(ぶっせつむりょうじゅきょう)」というお経をあげて下さいました。これは、仏さまはいつもあなた方のそばにいて、大きなお心で見守って下さっているという浄土真宗の大切な経典です。
参加して下さった施設名を一つひとつ読み上げ、「仏説無量寿経(ぶっせつむりょうじゅきょう)」というお経をあげて下さいました。
仏さまはいつもあなた方のそばにいて、大きなお心で見守って下さっているという浄土真宗の大切な経典です。
参加している方々は、内陣の阿弥陀仏さまを眺めながら、井上住職の読経に耳を傾けていました。ありがたいと、画面越しに手を合わせていらっしゃる方もおられ、本堂に響くお経を聴きながら、離れている人たちと今、この時を共有しているという不思議な感覚を覚えました。
お勤めが終わると、ここからは堤さんと井上住職の和やかなお話タイム。「阿弥陀仏さまの指で輪を作っているあのポーズって何か意味があるんですか?」と堤さん。
「阿弥陀仏さまの指で輪を作っているあのポーズって何か意味があるんですか?」

このポーズには意味があるんですよ。このポーズには意味があるんですよ。

「これは、阿弥陀仏さまが、どんな時も一緒だよと言っておられるんですよ。
仏語で摂取不捨(せっしゅふしゃ)という言葉あるんですが、その印(しるし)をこのお姿であらわしているんです。」と井上住職。最後は、法話の中で、この摂取不捨(せっしゅふしゃ)という言葉の意味を教えて下さいました。

摂取不捨(せっしゅふしゃ)とは…摂取不捨(せっしゅふしゃ)とは…

摂取不捨とは、仏さまは、この世に生きているものを一人も見捨てることなく救ってくださるという教え。井上住職は、改めて「ここに来ることができる人もできない人も、いつも仏さまはみなさんのすぐそばにおられて、その慈悲に包まれその懐に抱かれて生きているんですよ」と語りかけました。

オンラインでご縁をつなぐ

離れていても届けたいと…離れていても届けたいと…

堤さんは、9月に行ったオンラインお寺参りでの反響をこう話して下さいました。「最初は、オンラインで伝わるのかと半信半疑で開催したのですが、テレビの画面に向かって手を合わせる方、号泣する方がたくさんおられて、施設側からも『定期的に行ってください』と言っていただくなど、私たちの想像をはるかにこえるお声をいただいたのです。その時、私は、お年寄りの‟手を合わせたい、誰かを偲びたい気持ち”をもっと大切にしなければ、と思いました。」

参加したある施設の方からのお声

コロナ禍で外出ができない利用者様をどのように地域との繋がりや今の暮らしを楽しんでいただけるのか、いつも考えておりました。その時に施設にいながら、オンラインでお寺参りができる企画を考えて頂き参加しました。お経が始まると表情が変わり、拝んだり、頷かれたり、「こんな感じでお寺さんを見られるとは思わなかったから、本当に良かった。」「早くお寺に行って、お経を聞きたくなった」等お寺を身近に感じられ、穏やかに安心された様子でした。コロナは様々な制約を私たちに敷いていますが、それでも、様々に工夫していけば、大切なご縁をつなぐことができるのではないかと改めて気づかされました。こんな形がいろんなところで進められたらいいのではないかと思います。
(妙行寺 Minori(みのり)より抜粋)

オンラインで生まれる新たな繋がり合い

コロナ禍で一気に進んだオンライン化。職場や学校、ビジネスの世界でもオンラインがあたり前の時代がやってきました。でも正直、ご高齢の方々はこの波に乗ることができるだろうかと思っていました。でも今回の取材で、オンラインが「出かけられない人、出かけることが難しい人たち」の世界を広げてくれることを知りました。堤さんはこうした取り組みが、ハンディキャップを持った人たちの諦めていた願いを叶えるだけでなく、新しい出会いや繋がり合いをもたらしてくれると、その可能性に期待しています。

オンラインお寺参りを企画した 介護旅行ナビ代表 堤玲子さんオンラインお寺参りを企画した
介護旅行ナビ代表 堤玲子さん

「コロナ禍で、施設のお年寄りがどこにも出かけられないでいることを知って、いてもたってもいられなくてオンライン観光の配信を始めたんですが、当初は『お年寄りにオンラインやっても分からないよ。』とか『リアルな旅に敵うわけがない。』と言う方もいました。(笑)それでも諦めずに、最初は10施設ほどに,視聴体験していただいて感想を伺いながら進化させていき、今では50以上の施設様が参加してくださっています。介護職の方が知恵をしぼり、高校のダンス部とつながって、交流が生まれたり…ワクワクするような楽しいことが始まりました。これまでの旅では味わえなかった新しい繋がり合いですよね。オンライン、ほんとうに可能性がたくさんあります。」

オンラインでみなさまとお寺とをお繋ぎします!オンラインでみなさまとお寺とをお繋ぎします!

はじまりは、行きたくても、行けない人たちの声に耳を傾けたことから…「離れていても、つながりを届けたい」その一心が、新しい扉を拓いていくことを教えてもらいました。

1月19日(水)西本願寺鹿児島別院でも開催されます

オンラインで繋がる新しい取り組みが少しずつ広がっています。今度はオンラインお寺参りが、西本願寺鹿児島別院で開催されます。

2022年1月19日(水)PM2:00~(約30分)
個人のお申込みでも、ズームアプリが使える方なら、ご参加可能です。

お申し込みは、介護旅行ナビへ kaigo.tabi@gmail.com

西本願寺鹿児島別院でも開催されます

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