実りの秋を迎えますね。今年は長雨などの天候不良で作物に大きな被害が出たところも多かったですね。スーパーの店頭に並んだ新米を見て、農家さんやお米への感謝の気持ちが湧きました。せっかくだったらふっくらつやつやの新米を美味しくいただきたいと、母が長年つくり続けていたかしわ味噌を久しぶりに作ってみました。
鹿児島の郷土料理、豚みそをヘルシーにアレンジした母の常備菜です。懐かしい思い出もあって、麦みその香りと甘辛い味が胸に沁みました。みなさんも新米の季節に一品いかがですか?
懐かしいふるさとからの定期便
鹿児島のご飯のお供といったら真っ先に豚みそと答える方が多いことでしょう。スーパー、デパート、あちこちの道の駅には、しょうが、にんにく、ごま、カツオ節、ゆず味など工夫を凝らした豚みそが並んでいますし、今も常備菜として各家庭で豚みそを手づくりしている方たちも結構いらっしゃることと思います。
豚のバラ肉やミンチ肉などと味噌を合わせて甘辛く味付けした豚みそは、まさに鹿児島県民のソールフード。私の実家では、母が豚みその豚肉をちょっとヘルシーな脂身の少ない鶏肉のささ身に代えて、ごはんのお供の保存食として長年つくってきました。もう40年近く前の話ですが、私が東京の大学に通っていた頃には、母から送られてくる定期便の中に、いつもこのかしわ味噌が入っていて、とても楽しみに待つものでした。
日持ちがするし、ご飯さえ炊けば、いいおかずなり、調味料としても使えてとても便利、大好きな味でした。その母は92歳になり、3年ほど前に心臓病を患ってからは、台所に長い時間立つことができなくなりました。そこで、母とおしゃべりしながら、私にとってのかあさんの味を一緒につくってみることにしました。
思い出のかしわ味噌レシピ
以前、母から聞いて記録に残しておいたレシピがあったので、今回はその分量でつくりました。まとめてつくっておくと、保存がきいて、色々なお料理に活用できて、おすそ分けにも喜ばれていたそうです。
このレシピには思い出があります。それは10年ほど前のこと。大学時代の同級生で関東在住の友人から久しぶりに便りが…。手紙の中には、中学受験を控えている息子さんが、豚みそ入りのおにぎりが大好きで、塾通いの息子さんに持たせたいので、母がつくっていた豚みそのつくり方を教えてほしいとありました。「あれは豚みそじゃなくてかしわ味噌だったんだよ。かしわ味噌で良かったらつくり方を母に聞いてみるね。」と伝えました。
それまで食べる専門だった私も、この思いがけない便りが嬉しくて、母に教わりながら張り切ってかしわ味噌をつくって、レシピを添えて送ったことを思い出します。懐かしい思い出です。
豚みそもかしわ味噌のそれぞれのご家庭に、思い出やつくり方があると思いますが、今回はその母のレシピでの材料と分量をご紹介しますね。
かしわ味噌の材料
- 油 大さじ3~4杯
- 鶏のささ身 500グラム(筋をとり、包丁でたたいてみじん切り)
- しょうが 80グラム(皮を剥き、みじん切り)
- にんにく 80グラム(これもみじん切り)
- 麦みそ 700グラム
- みりん 100cc
- 水 100㏄
- 砂糖(ザラメ)300グラム
(お好みで加減して。甘くしたいときは白砂糖で加減してください) - ごま油 少々
- すりごま 大さじ3杯くらい(お好みで)
作り方
- 下準備として、まず鶏のささ身は筋をとって、包丁でたたいてみじん切りにします。ゴロゴロしたお肉がお好みの方は大きめに。小さく刻むと、お味噌に肉の旨みがジワッとしみ込みます。大きさはお好みで。しょうが、にんにくはみじん切りにします。薬味はたっぷり目です。
- 大きめのフライパンにオリーブ油(またはサラダ油)大さじ3~4杯を入れ、弱火でみじん切りしたしょうが、にんにくを炒めます。
- 香りが立ってきたら、ささ身、麦みそをほぐしながら加えて、中火で焦げつかないように丁寧に炒めます。味噌は、麦みそとの相性が1番良いそうですよ。ささ身や麦みそが固まらないように注意してくださいね。
- 次にみりん100㏄、水100㏄を入れます。ゆるめになったら、グツグツ煮ながら、木べらで混ぜ、ザラメ300グラムを入れます。
ザラメは溶けにくいそうですが、白砂糖よりもコクが出るということで、母はいつもザラメを使っています。
- ここからは、弱めの中火で焦げつかないように、あめ色になるまで丁寧に練り上げていきます。15分くらい経ったでしょうか。
- どのくらいまで練ったらいいのか、母に尋ねると「まだゆるい、ゆるい。艶が出るくらいまでしっかり練って。」と…ここからは母の出番です。
- 「このくらい、このくらい。」と昔の感覚を思い出しながら嬉しそう。
この日は体調も良く、久しぶりの台所仕事に表情も生き生きしていました。
- 母は最後の隠し味にごま油を入れています。艶が出てきて、もう出来あがりという頃に、鍋肌からごま油大さじ1杯程度を回しかけます。こうすると香りが良くなるそう。最後に、すりごま大さじ3杯くらいをたっぷりふりかけて、さらに1~2分練ったら、かしわ味噌の出来あがりです。
ささ身500グラムで結構な量のかしわ味噌ができました。
できたても、とても美味しいですが、これが2~3日くらい経つと、味噌と鶏肉の味が馴染んできて、しっとりとコクが出てきます。母はつくる季節によって柚子やカツオ節を入れたり、冬はしょうがの量をたっぷりにしたり、疲れた時は、にんにくを多めに入れたりと自由自在に自分流につくっていたそうなので「レシピの分量にとらわれず、自分流にお作り下さい」とのことでした。
この3分の1くらいの分量だと手軽につくれるそうですよ。できあがったかしわ味噌は、しっかり冷めてから冷蔵庫で保存して下さい。小分けにして冷凍保存しておけば2か月くらいは日持ちするそうですよ。
手づくりのかしわ味噌、つくっておいたら大活躍
出来あがったかしわ味噌をさっそく頂くことにしました!まずはあつあつのご飯と一緒にいただくのが1番。これがあれば、食欲がない時もご飯が進みます。これをおかずに、ご飯何杯でもいけちゃいそうで危険なくらいです。(笑)
お酒のつまみにしてもよし、シンプルに野菜スティックにつけてもよし、おにぎりの具やお弁当に添えてもよし、お料理の調味料としても活用できますので、まさに食卓で活躍する万能選手といった感じです。
焼きおにぎりにもしてみました。かしわ味噌をどっさり乗っけて、ちょっと見た目は不格好ですが、これまた、とても美味しかったです。
この他、野菜炒めやチャーハンの味つけや豆板醤を加えてマーボー豆腐にしてもおいしいみたいですよ。様々なアレンジが楽しめるのも良いですよね。今回、結構な量をつくったので、つくりすぎたかなぁと思ったのですが、母と義母にもおすそ分けしたら、あっという間に無くなりそうです。
最近は食欲がおちていた母ですが、このかしわ味噌をご飯に添えると、ご飯を完食してくれます。かしわ味噌も豚みそも、あの甘辛い肉みその味は、子どもから高齢者までみんなに愛されるホッとする味ですよね。毎日の生活が慌ただしくて、なかなか保存食にまで手が回らない日々でしたが、つくってみると、とても重宝します。しかも私にとっては、母が長年つくり続けてきた台所レシピを教わる良い機会にもなりました。
長引くコロナ禍で、思い切って外に出られない不自由な日々が続いていますが、昔懐かしいかしわ味噌づくりで、思いがけず母とのおうち時間を過ごすことができました。
つくり方はシンプルでとても簡単!これからご飯がおいしい季節です。つくっておくととても便利なかしわ味噌、みなさんの食卓にもおひとついかがですか?