大河ドラマ「西郷どん」の中で、西郷どんのお母さんが、嫁いできた須賀さんに、なた豆のみそ漬けのことを話すシーンがありました。
でも、肝心なみそ漬けは出てきませんでした。鹿児島では昔から食べられてきた「なた豆のみそ漬け」をご紹介します。
これが、なた豆?刀豆?
これが、なた豆です。江戸時代に日本に渡来し、特に鹿児島では広く栽培されるようになったといわれています。さやが刀に似ていることから漢字では刀豆と書きます。
実る前のなた豆の花です。白くて可憐な花です。
大河ドラマ「西郷どん」の中でも、西郷家の庭にはなた豆が植えられていました。
そして、母親の満佐さんが、嫁いできた最初のお嫁さんの須賀さんにこう語りかけていました。
「須賀さぁ、西郷家では今ん時期、こんなた豆でみそ漬けを作りもす。」
「こんみそ漬けを、吉之助さぁ(隆盛のこと)はお茶漬けにして食ぶっとが好きじゃっで覚えちょってくいやんせ。」
そして、須賀さんが少し乱暴になた豆のさやをちぎるシーンはありましたが、なた豆のみそ漬けは登場しませんでした。
今では鹿児島でも食べたことがある人は少なくなってきているのではないでしょうか。
私の実家では、毎年庭になた豆を植えて、みそ漬けにしています。

赤いリボンを付けているなた豆、最初に実ったものです。
最初にできたなた豆が一番元気が良いという事で、リボンをつけて目印にし、収穫はせずに来年植える種用に取っておくそうです。
なた豆は春先に種をまき、夏からちょうど今頃が収穫のシーズン。
さやの長さが20センチほどになったら収穫します。
さやは、しっかりかたくて、例えるならば少し厚みのあるシリコンのゴムベラのような感触です。
なた豆のみそ漬け
このなた豆をさやごと味噌に漬けます。

そして、1週間から10日ほどして、なた豆がしんなりなったら食べられます。
10日ほど漬けたなた豆です。
これを、斜めに細切りにしていただきます。

西郷さんが好んだ「なた豆のみそ漬け」です。
みその風味がしみ込んで、ご飯が進む味。かりこりと歯ごたえがいいのも魅力です。
また実家では、収穫の時期にたくさん漬けて一年中食べられるようにしています。
こちらは去年からみそに漬けているなた豆。
なた豆は、さやがかたいので、一年漬けても形が崩れないんですね。
きっと西郷家でも年中食べられる保存食としてたくさん漬けていたのではないでしょうか?
なた豆のお茶漬け、西郷さんも食べた?
長く漬けると、みそがさらに染みてちょっと塩辛くなりますが、西郷さんはこんなしっかり漬かったなた豆をお茶漬けにして食べていたのかもしれませんね。

鹿児島ではなた豆のことを「タッバケ」?
ところで、鹿児島ではなた豆のことを「タッバケ」と呼んでいます。
このタッバケにまつわる話は、一年前にもお伝えしましたが(「戦争を知る」出征兵士の帰還を願い「なた豆」を植えた話をご覧ください)
なた豆のツルは、上へ上へと伸びていき、そして必ず、今度は向きを変えて根元の方に向かって伸びるそうです。
そこで、戦争中、夫や息子が出征した家では、なた豆のつるのように無事に戻ってきてほしいという願いを込めて、なた豆を植えたそうです。

また、鹿児島の地域によっては、さやが刀に似ていることもあり、なた豆の種をお守りとして出征兵士に持たせたところもあるようです。
この話は、太平洋戦争の時のエピソードとしてお伝えしましたが、さらに少し調べたら、西南戦争の時にも、薩摩の兵士たちに、母親や妻がなた豆をお守りとして持たせていたという話もあるそうです。
すでに西南戦争の時にも、なた豆は無事の帰還を願うお守りになっていたんですね。
なた豆のみそ漬けが大好きだった西郷さん、奥さんの糸さんも出征する西郷さんの懐になた豆を忍ばせたのでしょうか?
