書類審査による1次審査を通過した方を対象に、ビジネスプランのブラッシュアップを図るための専門セミナーが開かれました。創業支援の最前線に立つ今川信宏氏による講演会や参加者同士のグループワークが行われ、参加者たちは12月に開催される公開プレゼンテーションに向けての意識を新たにしていました。

専門セミナーは、鹿児島市のクリエイティブ産業創出拠点施設「mark MEIZAN(マークメイザン)」で開かれました。
今年度の鹿児島県ビジネスプランコンテストでは、一般部門9件、高校生部門5件の合わせて14件が1次審査を通過。その方たちを対象に開かれたものです。

今回、講師としてお招きしたのは、地方創生を目的とした投資ファンド運営会社NES(株)の代表取締役今川信宏氏で、ご多忙の中、東京よりお越しいただきました。
講演のテーマは「投資家は何を見ているか?」
今川氏は、起業家達の事業計画などを総合的に判断し、投資する魅力があるのか?成長性はあるのか?などを見極め、必要資金を調達したり、起業家と伴走しながら支援を行っています。
そういう創業支援の第一線に立つ今川氏が、起業しようとしている参加者や高校生たちに、事業を進めていくうえで何が大切なのか?何がポイントなのか?わかりやすく話してくださいました。
我々ベンチャーキャピタル投資家がやっていること
一言でいえば、スタートアップ(起業)の急成長を支える必要資金を投資すること。
起業家は、多くの場合準備資金が豊富にないので、当初は、赤字が続く場合も多い。しかし、どこかの時点で黒字に変えていかなければならず、そのために、高い成長性が見込まれる起業家達に対しては、これからの高い収益を期待して、成長のための資金を提供していくというのが、私たちの仕事。

投資家が見ている点
事業面だけでなく、起業家とチームも投資判断基準の一つ
事業面
- 事業・・誰の、何の課題を解決しようとしているか?を一言で明確に言えることが大事。事業のターゲットを曖昧にせず、「誰がハッピーになるのか?誰の悩みが解決するのか?」をわかりやすく伝えられるかが大きなポイント。
- 競争優位性・・似たようなことをする起業家がたくさんいる中で、他の起業家と違う強みは何なのか?差別化をはっきりさせる。
- 市場性・・時代の流れに沿ったものか?何の代替をしようとしているのか?大きな成長が見込めるのか?を説明できる。
以上のような事業面だけでなく、起業家の人柄や情熱、経営チームも大事。
起業家
「これをやりたいんだ!」「誰が何と言おうとやるんだ!」という熱意が伝わる事が大事。
また、こつこつと努力し、目的達成のためにあきらめずにやれる執念を持っているか?誠実な人柄で人間的に魅力のある人か?なども投資判断基準の一つとなる。
経営チーム
事業を発展させるためには、一人ではやっていけない。一生付き合えるチームの存在が大事。
経営チームがそれぞれの役割を担いながら、勝ち残っていくためにきちんと機能していけるか?を投資家は判断する。
投資家向けの資料の作り方
世界最大の民泊プラットフォームで創業から僅か約10年で時価総額8兆円の企業に成長したAirbnb(エアービーアンドビー)が、最初に資金調達のために作った事業計画書を例に挙げながら、投資家の心を動かす資料の作り方を教えて下さいました。
資料の作り方のポイント
- シンプルに!
- わかりやすく!
- 流れるように!
Airbnbは、14ページの事業計画書で6,000万円の資金調達に成功している。
その計画書が優れているのは、図やグラフを使いながら、無駄なく、わかりやすくシンプルに伝えられているという事。
「Airbnbの計画書では、現在の世の中で誰がどんな悩みを抱えているのか問題点(仮説)を提示し、次に、その問題点をどう解決し、どんな価値を創造していくか、その方法をわかりやすく説明しています。
次に、競合優位性や市場ニーズ、最初の顧客をどう捕まえて成長していくのかという初期顧客獲得戦略などを述べ、さらに仮説に対し、その仮説が正しいという事をグラフを使って定量的に示しています。
小さくてもいいから投資家にニーズがあるという実績を示すことが大事です。
また、競争に勝つための経験や知力を有するチーム体制であることや、これまでとりあげられた各種記事(ニュース情報)、記事(プロ)だけでなく実際に使った人からの高評価(ユーザーからの声)などを載せており、多角的で説得力のある計画書となっています。投資家が前のめりになる、模範的な計画書と言えると思います。」
一方気をつけて欲しいことは・・
- 事実と異なっていることを書いたり述べたりすること。
- 説明がごちゃごちゃしていて、
分かりづらかったり読みづらいこと。 - 話に一貫性がなく、例えば数字がページによって違っている(数値目標が前のページと後のページで違っているなど・・)
上記のようなことをすると、投資家への信頼がなくなり、投資家の心が折れてしまうので、細部にまでこだわって、確認しながら進めてほしい。
今川氏の講演の後、グループワークが行われました。
次に、参加者同士のグループワークが行われ、お互いにビジネスに関する悩みを出し合ったり、今川氏に聞いてみたいビジネスポイントなどについて話し合いました。
参加者から今川氏への質問
Q,一番最初の顧客をつかむためにはどうしたらよいか?
A,誰の何のための課題を解決するのか?という仮説設定をするとターゲットが明確になる。女性なのか?子供なのか?若者なのか?シニア層なのか?そのターゲットがぼやけると顧客もつかみにくい。例えばターゲットは女性!と明確にした方が顧客をつかみやすい。
Q,開発した製品をオンラインで販売したいが・・
A,オンライン販売は競争が激しいので、「類似品が多数ある中で、なぜその製品を買わないといけないのか?」という点を明確化するなど、戦い方をさらに深めて考えた方が良い。
Q,高校生が考えるビジネスは、どういう視点から導入したらよいか?
A,社会人にはない柔軟な発想を持っている可能性は十分にある。例えば日本全国の高校生が共通して持つ悩みがあるはずなので、その視点を大事にして、悩みを解決するための製品を生み出すなどの方法を考える事も一案。
Q,鹿児島国体に向けての情報アプリの製作を考えているが・・
A,国体というワンタイムではなく、次につなげていく、続けていける方法を考えていく事が大事。
最後に最終審査会に向けての今川氏からのアドバイス
「投資家に向けての資料作りと一緒で、シンプルにわかりやすく、流れるようにプレゼンテーションすることが大事。審査員の感情曲線が下降して終わるのではなく、どんどん上向きになって終われるよう話を上手に組み立ててほしいと思います。
皆さんが考えている事業内容はどれも素晴らしいです。いい種が出来ていますので、その種が大きく成長していけるよう頑張ってください。」

最終審査会 12月15日(日)

ファイナルステージ当日はご自由に観覧・交流会にご参加いただけます!
ぜひ皆様お誘い合わせの上、ぜひご来場ください。心よりお待ちしております。