鹿児島から生まれる新しいビジネスを後押しする鹿児島県ビジネスプランコンテスト。今年度の参加者を募集中です。(9月30日(水)17時必着)
チャレンジを考えていらっしゃる方々の力になればと、シリーズで4人の審査員の方々のインタビューをお届けしています。
3回目は、地元企業のグローバル化を支援する起業家「合同会社Go! Kagoshima」代表の門田晶子さんです。
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21年間の在米生活を経て2016年に故郷鹿児島で起業
門田さんは鹿児島で生まれ育ち、高校1年の時にアメリカに渡りました。そして、アメリカの大学を卒業した後、カリフォルニア州の民放テレビ局でアートディレクターとして働き、管理職も経験しました。
そして、21年間の在米生活を経て、家業の印刷会社を継ぐために2006年に鹿児島に帰郷。2010年末から6年間は渕上印刷株式会社の社長も務めました。その後、鹿児島と世界を繋ぐ架け橋になりたいと、ビジネス英語で地元企業のグローバル化を支援するために、2016年に合同会社「Go! Kagoshima」を立ち上げました。
まずは、アメリカでのご経験や、門田さんが大事にされている精神、起業しようと思った経緯などについてお話を伺いました。
これまでの経緯は?
「小さい頃からアメリカに住みたい!英語を勉強したい!と思っていて、高校1年からアメリカに留学したんですが、留学先では本当に苦労しました。高校での授業が全部英語だったので、初めはお手上げ状態だったんですが、もう、とことん勉強してどうにか高校を卒業しました。」
「高校卒業後、ちょっとファッションの勉強をしたんですが、少し違うなあと思って、もう一度アメリカの大学に行きなおしました。そして、在学中にインターンシップで行っていたテレビ局に入社して10年間勤めた後、日本に戻ってきたんです。
実家は、祖父から引き継いだ印刷会社をしていて、その当時、社長をしていた父と一緒に会社をやらないかという話が浮上したんです。日本で社会人を経験した事がなかったので、いろいろ悩みましたが、ただ、会社を経営するって誰にでもできる経験ではないだろうと思って、鹿児島に戻ろうと決断しました。本当にもう1回人生をやり直すという感じで鹿児島に戻ってきて、今年で14年目になります。」
テレビ局での管理職の経験が帰郷への後押しに・・
「テレビ局では、アートディレクターという仕事をしていました。アニメーションや天気予報の画面など、コンピューターを使って図形や文字、画像などを作る、いわゆるコンピューターグラフィックス(CG)を製作する部署で働き、最後の3年間は管理職も経験しました。」
「アメリカでは、より良い職場や給料を求めてみんなどんどん転職していくので、気が付いたらその部署で私が一番の古株になっていました。それで、部署の人たちが、せっかく培ったチームワークを壊したくないから、是非、管理職を引き受けてくれと言ってくれたので、ちょっと頑張ってみようかなと、渋々管理職を引き受けたら、けっこうおもしろかったんです。
部下として、やるべきことをきちんとして、よくやったと褒められる側だけでなく、管理職として褒める側に立つ喜びみたいなものも経験し、経営する側の喜びというのは、こういうことを大きくしたものなんじゃないかなと。こうして会社全体の人を育てていくのかなあと思って、私でも会社の経営が出来るかもと思い込んで、日本に戻ってきました。」
そして、鹿児島に戻ってきたのは、祖父への思いもありました。
門田さんは、幼い頃に亡くなった祖父の事が大好きで、自分は祖父に似ていると感じ、周りからもそう言われていたそうです。その祖父が、戦争で空襲を受け、焼け野原になった鹿児島の街で立ち上げた印刷会社を、自分が受け継いでいく、新しく変えていくという事にも魅力を感じ、アメリカの生活にピリオドを打ちました。
モットーは「ぼっけもん」と「てげてげ」
「鹿児島の方言で、「ぼっけもん」という言葉がありますよね。勇敢とか怖いもの知らずという意味なんですが、私は、「ぼっけもんだね」っていろんな人から言われて育ちました。
それから鹿児島の教えで「泣こかい、飛ぼかい、泣こよっかひっ飛べ!」というのがありますよね。(怖いな、どうしようかなとぐずぐず考えないで、思い切って飛んでしまえ!さっさと実行しろ!という意味の言葉)そういう「ぼっけもん」の精神が大事じゃないかと。
それから、私は楽観的なところがあって、とりあえずやってみて、上手くいかなかったら、また別のことをやればいいじゃないかという思いがあるんです。
私の中で「ぼっけもん」と「てげてげ(鹿児島弁で適当とかいいかげんという意味)」がミックスされている。あまり重く考えないでとりあえずやっちゃえ!というのが私のモットーだと思います。
それから、最近自分にとっては自由が大事なんだなって感じています。自分で選ぶ自由とか、言いたいことが言える自由だとか、やりたい事ができる自由とか、当然その裏には責任があるんですけど、自由がないと、人生、面白くないですよね。
人間らしく、楽しく、後悔しない人生!それが私の大切にしている事かなと思います。」
6年間の社長業を経て起業
鹿児島に帰った門田さんは、実家の印刷会社に入り、最初の4年間はいろんな部署を回って、会社の仕組みを覚えたり、社内の人たちとの関係を深めながら経営者になるための基礎を築いていきました。そして、その後、社長に就任。「会社の顔」として多くの地元経営者の方たちと繋がることを心がけ、信頼関係を築いていく事に力を注がれたそうです。
その社長業を譲られて、今度は、また一から自分で会社を興すという決断をされたわけですが・・
「私は、起業したくて起業したのではなく、社内で、海外事業を立ち上げたかったんですが、社内よりは別会社としてやった方がいいという経営判断を会社がしたので、結局、別会社を立ち上げて、そのまま独立しました。
鹿児島に戻ってきた理由が、会社を継いで次の人に渡せるまで安定させる事だったので、起業するというのは少し想定外だったんですが。まあ逆に独立したことで、会社の制度だったり、仕事の在り方とか、働き方とかというのを、本当に自分でやりたいように、働きやすいように仕組むことができたので、今はとても楽しく働けています。」
独立してからは・・
「Go! Kagoshima」でやりたいことは?
「鹿児島には、翻訳や通訳の専門の会社はあったんですが、ビジネスに特化した海外とのコミュニケーションのプロというのはいないと思うんですね。
海外とのビジネスの交渉事の中で、両者がいいコミュニケーションをして、いい商談に向けようとしているのに、やっぱり文化が違うと、言ったらまずいようなことを言ってしまう事もあるんです。
そのまま通訳しない方がいいんですけど、通訳者は、言った通りを通訳するのが仕事なのでそのまま通訳しちゃう。そうなると両者の感情に溝ができて、交渉が上手くいかない場面が出てくるんですね。
私は、管理職や社長の経験があり、交渉事とかビジネスの場での人との話というのがある程度出来るかなという思いがあったので、両者にとっていい形になるような、多言語コミュニケーションのプロみたいのがいてもいいのかなと思って、Go! Kagoshimaを立ち上げました。」
Go! Kagoshimaで手掛ける業務は、海外での商談や交渉事の英語アシスト、海外からの企業視察の対応やアテンド、学会での英語プレゼンテーションのコーチングなど多岐に渡ります。
世界と繋がりたいと思っても、言葉やコミュニケーションがネックとなっている地元企業の力になり、鹿児島で生まれた製品やサービスが世界に広がることを門田さんは願っています。
ビジネスはコミュニケーション
「ビジネスにはコミュニケーションがとても大事だと思います。
交渉の中で、私はこういう事ができます。あなたはこういう事を必要としているんですね。というやり取りを上手くやっていって、最終的に、一緒にこういう事をやっていきましょうというところにたどり着くまでのコミュニケーションがとても大事なんです。
そのためには、まず信頼関係を築く事。この人とだったらやっていけるという信頼がないと前に進めない。ビジネスの場で気持ちのいいコミュニケーションがとれるようにお手伝いが出来たら私はすごく嬉しいんです。」
「誰かが背中を押してくれれば、きっと羽ばたける。あなたの手となり足となります。」
起業されてからの実績は?
通訳としての新しい挑戦、貴重な体験!
「昨年、日本で開催されたラグビー2019年ワールドカップの南アフリカの代表チームが、鹿児島市で事前キャンプを行ったんですが、私たちが通訳兼コーディネートをさせてもらいました。
チームが滞在したホテルに私も一緒に泊まり込んで朝から晩まで、監督や選手たちの通訳を任されたんですが、記者会見の通訳をしたり、オフの時には海に連れて行ったり、本当に貴重な経験をしました。すごく楽しかったです。南アフリカのチームが優勝できた事に、少し貢献できたんじゃないかなあと思っています。
その中で、鹿児島には英語でコミュニケーションをスムーズにできる人材が少ないということを感じました。世界では、英語くらいは当たり前という時代だと思うんですね。日本も、中学、高校と6年間英語を習っているはずなのに、なかなか使えないというのはもったいないなあと思います。
また、使えるものを持ってるはずなのに、使える機会がないと思っていますので、もっと、どんどん、間違う事を恐れずに英語は使うものとしてやっていけば、もっと英語を使える人口が増えるんじゃないかなと思います。」
審査員として、どんな点を重要視したいか、また、期待していることは?
「募集要項に、募集テーマは・新規性や成長性があり、実現可能性が高いビジネスプラン、・「鹿児島ならでは」の強みを活かしたビジネスプランとありますが。当然そういう要素はあるべきだと思うんですが、それ以外で、私が審査でみたい点は5つあります。
- 今まであるようでなかったユニークな商品やサービスであるか?
- 今まで見たことも聞いたこともない、なんだこりゃ?というようなすごい驚きのある、サプライズのあるユニークな商品やサービスであるか?
- お客様に対しどれだけの愛情や情熱をもって商品やサービスを提供したいと思っているか?起業家の方たちの熱量は?
- プレゼンテーションにワクワクさせられるか?・・見ていてワクワクするものだったら多分いろんなファンがつくと思うんで、そういうのがいいなあと思います。
- そのビジネスプランはアジャイルか?・・最近よく出てくる私が好きな言葉があるんですが、「臨機応変に」という意味のアジャイルという言葉です。特に今の時代、それがすごく必要だと思うんですね。新型コロナが来るなんて誰も思っていないじゃないですか。予測不可能な事って絶対ある訳で、そういう想定外の事があったとしても、これまでやってきた事にこだわらずに、状況に合わせて臨機応変に柔軟に対応していく事がこれからは大事になってくると思うんです。けっこう私も、起業したての頃にビジネスプランをいろいろ考えたんですが、結局、経営計画って達成できないことの方がほとんどで、計画通りに行く事なんてなかなかありません。私見なんですけど、逆にあんまり、がちがちにビジネスプランを作らなくていいと思います。完璧なビジネスプランって、私にとってはあまり魅力を感じません。それよりも、起業をされたい方が、どれだけワクワクして商品やサービスを世に出したいのか、その熱量を強く感じるプランに期待したいと思います。」
新型コロナの影響などもありますが、鹿児島で起業されたい方へのエールをお願いします。
「新型コロナや自然災害など、予測できない事ばかりな今、新しいビジネスにとって大チャンスだと思います。誰も正しい答えがわからない今だからこそ、あなたの新しい発想や、新しいやり方、見せてください。
前例のないものほどチャンスだと思っています。そんなの無理と言われたらニンマリ笑って、前に進んでください。自信を持って打って出てみてください。石橋は渡ってから叩けばいい。LET’S GO!」
さいごに・・
高校時代に単身で渡米し、当初は言葉や文化の違いに戸惑われながらもその生活に溶け込み、充実したアメリカでの生活を送られ、その後、日本での社会人の経験のない中でいきなり会社の経営者となり、そして、現在は起業して生き生きと自分のやりたかったビジネスを展開されています。
グローバルでとても変化に富んだ人生を歩まれているなあと思います。その間には、さまざまな困難があられたと思いますが、「ぼっけもん」の精神で乗り越えてきたと門田さんは話されます。言葉を変えると、どんな局面でもその状況に合わせて柔軟に対応できる、前に進んで行ける適応力をお持ちなんだと思います。
こんなことをやってみたい!今だからこそこんな事業を立ち上げてみたい!など、様々なアイデアを持っていても、なかなか一歩を踏み出せない方の背中を押してくださるメッセージをいただきました。
鹿児島への愛情とフロンティア精神に溢れる門田さんのような起業家が、これから次々と鹿児島に誕生することを期待したいです。
申し込みの締め切りは間もなくです。是非たくさんのご応募をお待ちしています。