認知症カフェ、最近よく耳にしませんか?
ここ数年、急増しています。認知症の方やその家族、地域の人、医療や福祉の専門職が気軽に集う語らいと交流の場所です。折しも9月21日は「世界アルツハイマーデー」でした。鹿児島市内で開かれていた認知症カフェに行ってきました。
ここは鹿児島市内の病院の一角のホール
この場所が、3ヶ月に一回、認知症カフェ「あいカフェ」となります。この病院に勤務する医療、福祉の専門職がスタッフとなり、お客さんを待ちます。
認知症の方やそのご家族だけでなく、認知症のことが気になっている方、地域のみなさん、どなたでも参加して下さいと呼びかけています。
土曜日午後の2時間がカフェタイムとして開放され、予約なしで誰でも参加できます。
おかわり自由の飲み物と手づくりのお菓子が用意され、みなさんを待ちます。
参加者の利用料は100円。とても明るく和やかな雰囲気です。
この日は、町内会から参加のシニア層の方々や高校で福祉コースの教員をしているという方々、認知症のお母さんと親子で参加という方もいらっしゃいました。
「これだけ毎日のように認知症のことが、新聞やテレビで取り上げられているでしょ。
私たちにとっては、もう目の前の問題なんで、ちょっとお勉強したくって。」
「学校の授業で、認知症カフェのことが出てくるんですが、実際行ったこと無くて。
実際、どんなとこなんだろう?見てみたくて…」
もともとこの認知症カフェは、認知症の方やそのご家族が、悩みや情報を共有し、ホッと一息つける場所として20年程前、オランダで生まれ、ヨーロッパで広まりました。
日本でも6年ほど前から普及し始め、平成28年度の厚生労働省の実態調査では、全国47都道府県1029市町村で、4267カフェが運営されていることが分かりました。
国の認知症の総合戦略「新オレンジプラン」の重要施策の一つとして位置づけられたことで、急速にその数が増えてきました。
運営主体は、病院、高齢者施設、NPOなど様々。場所も、福祉施設の一角や、コミュニティセンター、商店街の空き店舗が利用されるなど多様です。地域の実情に合わせて、色々なかたちの認知症カフェが誕生しているのです。
ある若年性認知症の方の声がカフェ開設の後押しに…
「あいカフェ」が出来たのは2年前。何がきっかけだったんでしょうか?
「うちは、鹿児島県の認知症疾患医療センターなんです。
認知症に関して、医療面だけでなく、何かお役に立てることをしたいと思っていました。
でも隣りには、うちの老健施設があって、そこではすでに認知症の方やそのご家族の悩みを受け止める認知症カフェが出来ていました。
当事者を支援するための認知症カフェです。自分たちは何ができるだろうと思っていた時、ある若年性認知症の方のお話を聞く機会があったんです。
すると、その方が『自分たちの行く場所はたくさんあった方が良い。もっと身近な場所に、色んなかたちの認知症カフェが出来たら 嬉しい。行く場所を選べるような世の中になってほしい。』という声を聞いたんです。
そうか~じゃぁ、うちは子どもから大人まで、地域の人も集まれるような、認知症のことをみんなで知ったり、学べたり、認知症の方やそのご家族と交流したりするような認知症カフェをやってみようと思ったんです。」
その目指すかたちの通り、ここは当事者限定ではなく、『認知症で悩んでいる方、認知症のこと知りたい方など』どなたでも参加できるカフェです。
悩んでいるのは自分だけじゃない
この日は、重度(介護4)のレビー小体型認知症のお母さんを通いながら介護している40代の息子さんの体験を聴くミニお話し会がありました。
この日、体験を話した有村宣彦さんは、自分のことを「ダメ息子」と言いながら、早くにお母さんの認知症に気がついてあげられなかったことへの後悔、色々なことが出来なくなる母親を受け入れられず当たってしまった自分への後悔など、自らの介護体験を包み隠しなく話しました。
介護する中で生まれる悩みや葛藤、先の見えないことへの不安など、今も続く息子介護の日々をありのままに話すことで、何かみなさんのお役に立つことが出来たらと、この話を引き受けました。
「母は今、父とふたり暮らしで、私は離れて暮らしているので、近くにいられない分、この先どうなるのかなぁっていう不安がいっぱいありました。
きょうは、悩んでいるのは自分だけじゃないんだ!悩みは、みんな一緒なんだって分かって、少し心が軽くなりました。」
ミニ講演会が終わった後は、専門職のスタッフも輪の中に入って一緒にお喋りして過ごします。なかなか打ち明けられない認知症に関する心配ごとや悩みごとを、専門職がゆっくりと受け止めてくれます。
この場所が、援助を必要としている人のSOSにいち早く気づき、支援へと繋げていく役割も担っているのです。
こんな体験コーナーもありました!
カフェの一角には、認知症ケアで、注目されているアロマテラピーやタクティールケアが体験できるコーナーもありました。
アロマテラピー体験
アロマの精油の香りが嗅覚を刺激し、自律神経をコントロール。認知症ケアの分野でも注目されています。
この日は、鎮静・リラックス・安眠効果があると言われるラベンダー×オレンジ・スウィートの精油でのハンドトリートメント。
タクティールケア体験
相手の気持ちに寄り添い、優しく包み込むようにタッチする事で、不安解消、傷みの軽減に効果があると言われています。
「このカフェの存在を、もっと多くの方に知っていただき、当事者の方やそのご家族にも、もっと気軽に来ていただきたいです。
認知症カフェにいらしていたあるご夫婦のことが、とても印象に残っています。重度の認知症の奥様を介護していらっしゃるご主人が『家内がここに来るとにっこり笑うんですよ。』と、とても嬉しそうに話していらっしゃいました。
その話を聞いた時、こんな場所が、本当に必要なんだと思いました。認知症の方もそうでない方も、みんなが寄り合って、ホッと一息できる場所を目指しています。」
中高年の4割が、「認知症になるのが怖い」と思っている!
ある生命保険会社が去年実施した調査(40代から70代、無作為抽出5000人、有効回答1557人)で、中高年の4割近く(37.6%)が「認知症になるのが怖い」と答える結果が出ました。
これは、「ガンが怖い」(26.1%)と答えた人の割合を大きく上回りました。「認知症は怖い病気」という不安心理の背景には、情報はこれだけ溢れているのに、もしそうなったらどうして良いのか分からない、支えてもらえるのだろうか?
まわりの人に迷惑をかけたらどうしょう…といった予期不安が大きく起因しています。加齢と共に、確実にその出現率が高まる認知症は、長寿社会を生きる私たちが引き受けなければならない宿命の病でもあります。
認知症カフェを身近なところに…
そんな時、お茶を飲みながら認知症のことを気軽に話せる「ほっとスペース」身近なところにあったら、どんなに救われることでしょう。この場所に行き交う人が増えることで、「認知症になるのは、決して怖いことではない」という安心感が生まれてくるように思います。
国も認知症総合戦略「新オレンジプラン」の中で、2年後(平成32年度)までに、認知症カフェのような場所を全市町村に普及させたいとしています。鹿児島県でも、22市町村で67ヶ所の認知症カフェが誕生しています。(平成28年度・実態調査)
認知症カフェは、開催場所や開催頻度もそれぞれで、独自のスタイルで運営されています。
各地の市町村でも開設のための助成金制度をつくるなど、普及を後押ししています。認知症になっても地域の暮らしの場から分断されることなく、これまでと同じように、地域の人との繋がり持ちながらその人らしく生きていくためには、お互いが日常の中で出会い、知り合う場が必要です。
「語らい」と「交流」の中から、みんなで、認知症を知り、一緒に支え合っていこうという「認知症カフェ」。
あなたの町のすぐ近くにも、そんなカフェが出来ているかもしれませんよ。
ふらっと立ち寄ってみてはいかがでしょうか?
※ 県内の認知症カフェの開催情報はこちらから見ることが出来ますよ
>>鹿児島県・認知症カフェ一覧表・全国認知症カフェガイドontheWEB