子どもたちにあたたかい手づくりごはんをたっぷり食べてもらって元気に育ってほしい…
そんな願いから全国各地に子ども食堂が誕生しています。
去年6月、鹿児島市の団地に小さな子ども食堂が産声をあげました。
森の玉里子ども食堂です。どんなところなんでしょうか?
金曜日の夕方5時を過ぎ、鹿児島市の団地の福祉館に親子連れが次々とやって来ます。
6時からこの町の子ども食堂が開店するのです。
ごはんの仕込みはお昼過ぎから始まります。
腕を奮っているのは、この近くに住むボランティアさんたち。
子育てを終えた60代のお母さんたちが戦力です。
「夫とふたり暮らし。私にも何かできる事があればと思っていた頃にこの話を聞いて即、参加しました。」
「子どもたちにいかに野菜をたくさん食べてもらうか…腕の見せどころ!」
「花の60代ですよ!」と、みなさん生き生きしています。
ボランティアの最高齢は、上久木田セツ子さん。80代です!
「夫が亡くなった頃、ちょうどこの食堂が出来て。ここに来るだけで嬉しくて、元気が出ます。きっと夫が繋いでくれたんでしょう。」
食材の多くが、この活動に賛同して下さった企業や個人から提供されたもの。
メンバーの中にいる栄養士さんが、旬の野菜をふんだんに使った献立を立てて、料理自慢のお母さんたちが手慣れた様子で、チャキチャキと70食分のごはんを作ります。
子ども食堂の立ち上げスタッフ園田愛美さん。
5歳、1歳10ヶ月、5ヶ月の小さな3人の女の子のお母さんです。
この地域に住む園田さんは、どうしてもこの地域に子ども食堂のような場所がほしかったそうです。
「私はこの地域で育ってきました。小さい頃は、お隣さんに上がり込んでご飯をご馳走になったり、イタズラをしたら近所のおじさんから怒られたり、そんなことが当たり前のようにありました。でも今、母親になって、よその子にご飯を食べさせたりして良いのかな?こんなことしたら、お節介かな?って思うことが多くなって。大人も子どもも遠慮なく、お互いの息づかいを感じ合えるような場があったらいいなぁと。
私の子どももそんな中で育ってほしいなぁと思いました。」
園田さんの思いを受け止め、子ども食堂の代表を務めて下さったのが、鹿児島大学で生活者の視点に立った家庭科教育を専門としてきた齋藤美保子先生です。
「孤食や偏食など子どもの貧困問題を背景に子ども食堂が全国的にどんどん増えてきています。貧困問題の根本的な解決も必要です。
でもまずは、子どもも親も、人が繋がり合ってホッとできる居場所づくりが大事。それが食べ物を通して出来るってことが、また素晴らしいことです。」
食堂開店前のミーティングが始まりました。
高校生や大学生などの若いボランティアさんも参加しています。
園田さんのお子さんの面倒を別の人が見て下さったり
子どもにお勉強を教える人がいたりと…
大きなお家のような雰囲気です。
別の場所では、絵本の読み聞かせも始まっていました。
さて、この日のメニューは…
野菜たっぷり白菜サラダ、ちょこっとカレー等々…
季節の食材をふんだんに使ったメニューです。
この日、持ち込まれたサツマイモとオクラと卵も、臨機応変に…
その日メニューに追加されました。
この日は、玄米おにぎりの差し入れもありました。
午後6時。
子ども食堂の開店です。続々と親子が集まってきました。
ズラーっと並んだ美味しそうな出来立てのごはんに…
「これなんだろう?」「冬瓜だよ!」
「お芋さんだ。美味しそう!」
みんなでワイワイしながらの夕ごはんが始まりました。
参加者からは、こんな声が聞こえてきました。
「お父さんの仕事が終わるのが遅いので、夕食は、子どもたちと私だけで食べることが多いです。こんな風に、大勢でご飯が食べられて楽しいです。」
「ここに来て知り合いが増えました。いつも子育てでバタバタしているけど、美味しいごはんがゆっくり食べられて、ここでは一息つけます。」
「子どもに発達障害があり、勇気を出してここに足を運びました。
子どもが『また行く』と言ってくれて、嬉しくて。きょうで3回目です。」
そして、こんな人も…
「妻がきょうは残業で、今日は子ども2人と一緒に来ました。助かります。子ども食堂、良いなあと思って立ち上げの頃、ボランティアにも参加しました。子ども食堂は地域に必要です。」
子どもの貧困が社会問題化する中、鹿児島県は子どもの貧困率が全国ワースト3位という数字があります。
経済的な事情で十分に食事が取れなかったり、共働きやひとり親世帯が増えて、ひとりで食事をする子どもも増えています。
そんな切羽詰まった人たちのところに本当にごはんが届いているの?
という声があるのも事実です。
でも、森の玉里子ども食堂では、「まずは子ども、親、ボランティア、地域の方々が知り合い、みんなが子どもと顔なじみになり、地域の誰もが来られる居場所づくりが大切」と考えています。
子ども食堂を立ち上げた、園田さんはこう話します。
「子どもたちの日常は、豊かな人間関係の中でより彩られていくと思うんです。ここで、『自分を大切にしてくれる大人がいっぱいいる』と感じてほしいし、私もそんな中で、子育てをしていきたいとなぁ思っています。」
鹿児島でも次々に子ども食堂が生まれ、あちこちに広がっています。
お年寄りと一緒のごはんを楽しむところ、子どもと一緒に食事づくりをするところ… それぞれの顔があり、スタイルも多種多様です。
「多くの子育て世代が、子ども食堂のような場を必要としていた事を強く感じます。一過性でなく、この活動が息長く続いていくためには、何よりも地域にこの活動を理解してもらい温かく見
守ってもらう事が大切。ボランティア、食材の提供、資金の寄付など、どんな形でもこの活動を支えることができます。共感の輪が広がるよう、みんなの手で育てていきたい。」
栄養と愛情たっぷりの食事を囲んで人の輪が溢れる子ども食堂。
あっという間に、2時間が過ぎていきました。
いつもの小さな食卓が、この日ばかりはワイワイ賑やか大きな地域の食卓に、自然と笑顔がこぼれます。
「一緒にごはん食べるってたのしいね。こんな居場所。あったらいいな。」
心からそう思わせてくれる温かい場所でした。
森の玉里子ども食堂からのお知らせとお願い
★月2回開催しています
金曜日の夜に月1回 18時~20時
土曜日の昼に月1回 12時~14時
※ホームページで今後のお知らせや活動報告を行っています!
開催予定日などをご確認ください。
★ 場所
玉里団地福祉館 鹿児島市玉里団地1丁目79-50
駐車場が不足気味です。乗り合わせてご参加いただけると
有難いです。又、近隣で駐車場をお貸しいただける方を探しています。
★ 参加費
子どもは無料(高校生まで)
大人 300円
★ 食材の提供やボランティアさんの募集もしています!
(特に土曜日午前中のお手伝いが有難いです)
森の玉里子ども食堂についてのお問い合わせは
園田さんまで 090-5381-1868