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「歴史」

戦中戦後の食糧難に食べられていた『さつまいものつる』を美味しくいただく


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戦中戦後の食糧増産のために植えられていた『さつまいも』。実を収穫して食べることはもちろんですが、その『芋づる』は飼料や食料にも使われていたそうです。母の戦争体験を聞いて一度食べてみたいと思っていましたが、野菜の直売所で新鮮な『芋づる』を見つけたので、はじめて料理してみることにしました。

野菜の直売所で新鮮な『芋づる』

これが売られていた『芋づる』です。
今までいろんな店で野菜を買ってきましたが、芋づるが売られているのを見るのは初めてだったので、「えっ、芋づるも売っているんだ!」と嬉しくなり、早速購入しました。

母から聞いた戦争体験の中で、食糧難のためさつまいもは実だけでなくつるも食べていたという話を聞きました。どんなふうにして食べていたのかまでは聞いていませんでしたが、当時は米粒が十粒ほどしか入っていない、野菜くずを混ぜた雑炊が主食だったと話していたので、芋づるも刻んで雑炊などに入れていたのかなと思っていました。

「戦争を知る」勤労奉仕の日々と戦中戦後の食糧難・・さつまいもとかぼちゃにまつわる話母の戦争体験をじっくり聞いてまとめた『私が子供だった頃~戦争の記憶~』の中から、これまでも戦時中の暮らしや教育についてお伝えしてきました...

その母の話から「芋づる」のことは気になっていたのですが、近所にさつまいも農家の方もおらず、流通もしていないので、そのままになっていました。
そして9月初旬、直売所で「芋づる」を見つけ、ようやく食べることに挑戦できました。

直売所で「芋づる」を見つけ、ようやく食べることに挑戦できました。

インターネットで食べ方を調べてみると、芋づるのレシピは思いのほかたくさん出ていて驚きました。
また、「旬の食材百科」というホームページの芋づるの説明によると、一般的にはさつまいもの副産物として家畜の飼料や畑の肥料とされていたそうですが、食べられないものではなく、栄養もあるので、戦中戦後は一般の家庭でも食卓に上がることが多かったそうです。しかし、今では農家や地元での消費に使われる程度で、市場にまとまって入荷されることはほとんどないそうです。
https://foodslink.jp/syokuzaihyakka/syun/vegitable/imozuru.htm

いろいろなレシピを参考にしながら、料理を作ってみることにしました。

まずは、芋づるの下ごしらえから・・

芋づるは、繊維質が強いので、薄皮(筋)を取ります。
端を少し折って引くと薄皮が剥げてきれいに取れます。
芋づるは、繊維質が強いので、薄皮(筋)を取ります。

5センチほどの長さに切りそろえた後、あくを取るために、塩少々を入れた熱湯で1~2分湯がきます。

5センチほどの長さに切りそろえた後、あくを取るために、塩少々を入れた熱湯で1~2分湯がきます。

次に冷たい水にさっと浸して熱を取り、ざるにあげます。
この下ごしらえをした「芋づる」を使って3品作ってみました。

芋づるのきんぴら

まず、フライパンにごま油を入れて熱し、次に芋づるをいれてさっと炒めます。
次に、しょうゆ、砂糖、みりん、酒を適量入れて、汁けがなくなるまで炒めます。

しょうゆ、砂糖、みりん、酒を適量入れて、汁けがなくなるまで炒めます。

芋づるにしっかり調味料がしみ込んだら火を止めて、仕上げにゴマをふりかけます。
これで、きんぴらの出来上がりです。

芋づるにしっかり調味料がしみ込んだら火を止めて、仕上げにゴマをふりかけます。 これで、きんぴらの出来上がりです。

はじめて食べる芋づるのきんぴらですが、一言で言ってとても美味しい!
調理によってはシャキシャキの食感があると書かれていましたが、きんぴらにしたらその食感はあまり感じられませんでした。例えていうならば「蕗(ふき)」や、鹿児島では春によく食べられている「つわぶき」の佃煮の食感に似ている感じがしました。
そして、ほのかにさつまいもの風味が感じられ、ちょっと大学芋を食べた時の風味に似ていました。
思いがけない美味しさで、家族にもとても好評でした。

芋づるの含め煮

作り方は超簡単です。
下ごしらえした芋づると油揚げを用意します。

下ごしらえした芋づると油揚げを用意します。

そして、鍋に入れて白だしをさっと回しふりかけます。
4~5分ほど煮て、味をしみ込ませたら出来上がりです。

4~5分ほど煮て、味をしみ込ませたら出来上がりです。

これがまた美味しい。こちらはしゃきしゃきとした食感が残っていて、油揚げとの相性もよく、しみじみとした味わいがありました。

芋づるとさつまいものかき揚げ

同じさつまいもなので、きっと実との相性もいいだろうと思って、さつまいもの実と芋づるのかき揚げを作ってみました。

短冊にきったさつまいもと、下ごしらえをした芋づるを用意します。

短冊にきったさつまいもと、下ごしらえをした芋づるを用意します。

そして天ぷら粉を入れて混ぜます。
少々塩も入れました。

そして天ぷら粉を入れて混ぜます。 少々塩も入れました。

次に油で揚げて出来上がりです。

次に油で揚げて出来上がりです。

これも、普通に美味しかったです。普通にというのは、さつまいもに人参やインゲンなど他の野菜をまぜてかき揚げにしてもおいしいので、それと同じように美味しかったという感じです。

芋づるを使っていろいろな料理ができることがわかりました。
しかも食材としてもとても美味しいので、なかなか市場に出回らないのが少し残念な気がしました。

これまでの私のイメージとしては、芋づるは、戦中戦後の食糧難で食べるものがなく、やむを得ず食べられていたものという感じでしたが、食材として、栄養価もあり、美味しいものであるという事がわかりました。
ただ、今は、いろんな調味料もあり、他の食材との組み合わせや、料理の仕方も自由にできるので、戦中戦後に食べられていた意味合いとは違うと思います。

戦中戦後の食糧難のことを伝えていくためにも、機会があったら芋づるの料理を食卓に出し、それをきっかけに当時の話をしていくことも大事なのかなと思います。

芋づるの旬は10月~11月頃までだそうです。
また、直売所で芋づるを見かけたら購入しようと思っています。

芋づるの旬は10月~11月頃までだそうです。 また、直売所で芋づるを見かけたら購入しようと思っています。

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