小さな畑で毎年ちまちまと家庭菜園を続けていますが、今年の夏から秋にかけてはこれまでになくお天気に翻弄されました。梅雨末期の大雨にも耐えて鈴なりの豊作だったミニトマトは、まだこれからの青い実をたくさんつけたまま、夏の終わりの長雨でみんな枯れてしまいました。
秋蒔きのブロッコリーは、いつまでも暑い日が続くのでなかなか大きくならなくて、畑に植え付ける時期がいつもよりかなり遅くなってしましました。このところの異常気象は人間の影響が大きいことを思うとなんだか申し訳なく、自分の暮らしぶりをじっと考えてみたりします。あらためて、畑の野菜はおいしく食べきるぞ!そう思った矢先、あの個性派野菜が豊作になりました。パクチーです。
パクチーがわんさか育ってしまった!
パクチーは、香菜、シャンツァイ、コリアンダーともよばれるセリ科の野菜です。独特なのは、なんといってもその香り!どこかにカメムシいる?と思うほどくせの強い香りなので、苦手な方もいらっしゃるかもしれません。でも、タイ料理やベトナム料理で食べると、その香りがさわやかに感じられるのですから不思議です。
ナンプラーやヌクマムといった調味料との相性がいいのでしょうか。ともあれパクチーがちょこっとあれば、いつもの食卓がエキゾチックな雰囲気になって楽しそう。というわけで、100円ショップで見つけた種を畑に直播きしたのが9月のことでした。
パクチーの種は一見すると一粒に見えますが、実は二つの種でできているのです。割ってみるとわかります。ちなみに種を割ると、ベルガモットに似た柑橘系のいい香りがします。
二つの種がくっついているので、芽を出しても二株がぎゅっとくっついて大きくなっていきます。うまく育てるには、どちらかを間引きしたほうが良いのでしょうが、せっかくなのでそのまま育てることに。するとすくすく大きくなって、10月の終わりごろには青々と茂りました。
実際に育ててみて驚いたのが、パクチーの香りが思ったより複雑なことです。畑でじっくり匂いをかいでみると、あのカメムシ風の香りの奥から、柑橘系の香りがそっと漂ってくるのです。種といい葉といい、なんて奥深いパクチー!しかも、天候不順をものともせずに元気に育ってくれたおかげで、葉物野菜が品薄で高騰していた時期の我が家の食卓はだいぶ助けられました。とはいえ、はじめのうちはおっかなびっくりパクチーを試してみました。まずは、休日のお昼のインスタントラーメンに。これは相性抜群で、いつもの味がなんだかよそ行きに変身してとても美味しかったです。

次はれんこんの炒め物に。にんにくや唐辛子とともにれんこんを炒め、ナンプラーとはちみつで味付けして仕上げにパクチーをのせて出来上がりです。このレシピはだいぶ前に料理の本で知り、れんこんの季節にはよく作っていたのですが、パクチーが手に入らなくて小ねぎで代用していました。それがはじめてパクチーで作ってみてびっくり。今まで作ったものとは全く違う味わいで、パクチーの香りの魔法を実感しました。

もちろんパクチーの豊作はありがたかったのですが、思った以上に旺盛に育ちすぎてしまって、霜が降りるまでに食べきろうと思ったら、香り付けや彩りとして使っていたのではとても間に合いません。パクチーを主役にした鍋料理や煮込み料理も作ってみました。根っこもだしになるというのでぐつぐつ煮こんでみたら、スープにいい味を出してくれました。とにかくいろいろ作ってみましたが、一番お手軽でパクチーもたっぷりたべられたのは、鳥刺しとパクチーのサラダです。

鹿児島名物の鳥刺しとパクチーのざく切りを、ナンプラー、にんにく醤油、はちみつ、リンゴ酢を適当に混ぜ合わせたたれであえて出来上がりです。鳥刺しははね身(ムネ肉)がよく合いました。これはおつまみにも最高です。食べ方には少し工夫のいるパクチーですが、葉っぱから根っこまで大活躍!畑に少し残ったパクチーも、葉と茎と根っこに分けて冷凍保存したので、まだしばらくは楽しめそうです。ありがとう、パクチー!
ロングラン収穫のししとうともそろそろお別れ?
パクチーとともに食卓を助けてくれたのがししとうです。きびしい暑さにも長雨にも急な寒さにも動じず、淡々と花を咲かせては実をつけ、夕食やお弁当の緑を支えてくれました。
最盛期に比べると、実が小さくなって種の量が増え、朝晩の冷え込みで黒く変色した実も出てきましたが、今年はいつまでも暖かかったせいか、まだ花を咲かせています。これから強い寒気がやってきたら、どろんと溶けたようになって枯れてしまうので、せめて今なっている実はすべて収穫して常備菜にしようと思います。
畑には、季節外れのミニトマトが一株、黄色い花と青い実をつけています。夏の終わりの長雨で枯れてしまったミニトマトでしたが、土に落ちた実が自力で芽を出してここまで大きくなったのです。これからやってくる寒さにはさすがに耐えられないと思うので切ないですが、負けても負けてないミニトマトはすごいです。

今年の冬の畑
師走がもうそこまで来ています。パクチーが植わっていたところには、来年の春に実をつけるスナップエンドウを植えつけました。早速つるを巻き付けて、元気いっぱいです。
ブロッコリーも畑におさまり、ぐんぐん大きくなっています。10月に種まきした春菊と水菜もいい調子です。ただ、11月の下旬になっても夏野菜のミニトマトやししとうがいっしょにいるのは今までにないことなので、これって温暖化の影響なのかなと感じてしまいます。
畑の野菜たちにはいつもたっぷりの栄養とおいしい時間をもらって、おなかも心もお世話になっているので、気候がこれ以上おかしなことにならないように、まずは自分にできることをやっていこうと思います。今年の冬はどんな冬がやってくるのでしょう、どうかいい具合に寒くておだやかな冬になりますように。