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「食・レシピ」

気がつけば食欲の秋がきていました。せっかくなので初めて燻製作ってみました。


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週末、車を走らせていたら、庭にテントを張ってキャンプの準備をしている家族を見かけました。庭先のお泊りでも、我慢続きの子どもさんたちにとっては、きっとわくわくするイベントなんだろうなあと、こちらまで楽しい気分になりました。

コロナ下でめぐってきた2度目の秋、日常は戻らず、不安や心配で心塞ぎがちな日々ですが、ささやかでも気分が上向くようなことを見つけられたらと思います。というわけで、我が家では最近、燻製を作ることのできる「スモーク缶」を手に入れ、燻製づくりにチャレンジしました。失敗してもなんとかなるさと自己流でやってみましたが、思いのほかおいしく仕上がって大満足でした。初めての燻製づくり、ご紹介します。

燻製ってどうやって作る?

燻製といえば、鹿児島特産の鰹節をはじめベーコンやスモークサーモンなど、おいしいものがたくさん思い浮かびますが、その作り方をちゃんと理解しているかというと、正直あやしいものです。

辞書をひいてみると「塩漬けした獣肉や魚肉を煙でいぶし、乾燥させた食品。独特の香味を持ち、長期の保存がきく。」とあります。よくこんなことを思いついたなあと、先人たちのあくなき探求心につくづく感心します。

ちょっと手間がかかりそうですが、巣ごもりの休日に燻製を手づくりしてみるのも、なんだか奥深くて楽しいひとときになりそうです。さっそくインターネットであれこれ調べてみました。

まずは道具です。必要なのは、食材を入れて煙を充満させるための容器と、煙(燻煙)を出すためのサクラやブナなどのチップ(木片)です。少量ならフライパンや鍋でも作ることができて、一斗缶やドラム缶、段ボールも容器として使えるようです。ただ、燻製と一口に言っても、いぶす時の温度帯によって、熱燻(80℃以上)、温燻(30℃~60℃程度)、冷燻(15℃~30℃程度)と3つの方法があって、それぞれ適した食材や完成後の保存期間に違いがあるようです。

ということは、あらゆる温度帯に対応した容器を準備したほうが、出番が増えてよさそうです。そこで、お手頃な価格の市販のスモーク缶を購入しました。直径が25センチ、高さが37㎝の蓋つきのブリキのバケツのようなもので、直火にかける必要のある熱燻をする場合にはカセットコンロにも乗せられるサイズ。缶の中の温度を測れる温度計がついています。

スモーク缶スモーク缶

燻煙のためのチップは、ホームセンターや100円ショップにもありますが、チップは小さな木片なので、安定的に燃やし続けるのにはかなりの経験が必要のようです。そこで、木材を粉にしたものを固めて作られたスモークウッドというものを使うことにしました。

このスモークウッドなら、火もつきやすく、安定して煙を出してくれるので、初心者にも扱いやすいとのこと。様々な木の種類がありましたが、今回はサクラを選びました。こちらも、ホームセンターで買うことができます。

サクラのスモークウッド 適量を手で割ることができますサクラのスモークウッド 適量を手で割ることができます

初めての燻製は、1時間程度の燻煙時間で出来上がる「熱燻」で作ってみることにしました。スモーク缶を火にかけ、中の温度を100℃くらいに保って食材を燻します。保存性はありませんが、高温なので失敗しにくく、初心者向けだそうです。もし火の通りがあまかったりしてうまくいかなくても、あらためて焼いて食べれば大丈夫かな、そんな「結果オーライ」のゆるい気分でやってみることにしました。

黒豚、地鶏にちりめんじゃこ、サツマイモも! とにかくやってみよう!

道具がそろったら、次は食材の調達です。せっかく手作りするので、食べてみたい食材を何でも試してみることにしました。まずは、豚肉。ちょっと奮発して黒豚のバラ肉をブロックで準備しました。

黒豚バラ肉 およそ200g黒豚バラ肉 およそ200g

本格的なベーコンなどをつくる場合は、保存性を高めるため、燻す工程の前に、塩や砂糖、スパイスなどを煮溶かした液体に肉を数日間漬け込み、さらにそれを塩抜きして乾かすなど、かなりの手間暇が必要のようです。ただ今回は、その日の晩ごはんにする予定でしたので、塊肉の蒸し煮などをするときの味付けを参考に、豚肉の重さの1%程度の塩と、こしょう適量を肉に直接すり込み、ラップでしっかり巻いて冷蔵庫で一晩寝かせたものをいぶしてみることにしました。

塩をすり込んでラップで密閉、冷蔵庫で一晩寝かせます塩をすり込んでラップで密閉、冷蔵庫で一晩寝かせます

続いて、鶏肉です。ちょうど、「さつま若しゃも」という地鶏のムネ肉がお買い得品になっていました。この「さつま若しゃも」は、国の天然記念物の薩摩鶏のオスと、卵をよく産むホワイトプリマスロックのメスを掛け合わせて昭和46年に誕生したそうですが、ふだんはなかなかお目にかかれないので、ちょっとラッキーです。

こちらは自家製鶏ハムに仕立ててからいぶすことにしました。参考までに、我が家の鶏ハムの作り方は、こんな感じです。

  1. 鶏肉に、塩と砂糖をすり込んでビニール袋に入れ、少量の水をいれて空気を抜くようにして密閉し、半日ほど冷蔵庫で漬け込みます。胸肉1枚に、砂糖大さじ1、塩小さじ1、水大さじ2の分量です。
    鶏肉を漬け込んだ状態鶏肉を漬け込んだ状態
  2. 漬け込みが終わったら、鶏肉を取り出して水洗いし、ラップを使って巻きずしの要領で 鶏肉をまき、両端をたこ糸でしばります。

    昔のキャンデーのような感じになります昔のキャンデーのような感じになります
  3. 大きめの鍋にお湯を沸かし、2の鶏肉をいれ、小さくぐらぐらする火加減で7分くらいゆでます。火を止めたらふたをして、そのまま冷めるまで待ったら出来上がりです。
    たっぷりのお湯でゆで、このまま冷ましますたっぷりのお湯でゆで、このまま冷まします


    肉類については、下準備に1日はかかるので、そのつもりで逆算して準備しました。食材はこのほか、新物が出はじめたサツマイモと、今が旬の江口浜産のちりめんじゃこも用意しました。サツマイモは紅はるかと新品種のふくむらさきをあらかじめ焼き芋にして、ちりめんじゃこはそのままを耐熱容器に入れて、スモーク缶に入れることにしました。

    サツマイモ 左が紅はるか、右がふくむらさきサツマイモ 左が紅はるか、右がふくむらさき
    ちりめんじゃこちりめんじゃこ

ようやく役者がそろいました。庭に出て、いよいよ燻製づくりのはじまりです。

煙と熱でおいしくなーれ

冷蔵庫で寝かしておいた黒豚バラ肉は、燻製を始める2時間ほど前に冷蔵庫から出して常温に戻しておきます。その間、出てきた水分はこまめに拭き取ります。鶏ハムは、冷めるまで置いておいた鍋から取り出して、ラップを外しておきます。

豚バラ肉は赤い色が濃くなっています豚バラ肉は赤い色が濃くなっています
鶏ハムはこのままでも食べられます鶏ハムはこのままでも食べられます

スモーク缶は縦長なので、重層的に食材を入れることにしました。まず一番底にサクラのスモークウッドを入れます。

スモーク缶付属の専用のお皿にのせてセットしますスモーク缶付属の専用のお皿にのせてセットします

その上に金網をセットして黒豚バラ肉を、その上にまた金網をセットして鶏ハムとちりめんじゃこを、その上の金網にサツマイモをのせました。

重層的に食材を入れました重層的に食材を入れました

スモーク缶に蓋をして、カセットコンロにのせて着火!いよいよスタートです。10分くらいすると、蓋の隙間から煙が漏れ出してきました。缶の中の温度が100℃になったところで弱火にして、温度を保ちます。

温度計は100℃くらい温度計は100℃くらい

 

30分もすると、かなりの煙が出てきます30分もすると、かなりの煙が出てきます

おだやかな秋晴れの日の昼下がり。見上げれば高い空、風はやさしく、ときおりシオカラトンボやクロアゲハがやってきます。漂う香りに、おばあちゃんの家の薪風呂のにおいを思い出しました。煙のにおいをかぐと、なんだか心が夕方になって、しみじみします。そうこうしていたら、そろそろ1時間がたちました。蓋を開けてみると…

煙が充満しています煙が充満しています

みんないい飴色になっています。鶏ハムとサツマイモは調理済みのものを入れましたので、ちりめんじゃことともに、ここで取り出すことにしました。黒豚は、加熱具合を見るために、半分に切って様子を見てみましたが、あともうひといきという感じでしたので、追加であと30分ほど燻煙を続けると、いい感じに仕上がりました。

黒豚バラ肉は半分に切って仕上げました黒豚バラ肉は半分に切って仕上げました
鶏ハムはよりハムらしく鶏ハムはよりハムらしく
ちりめんじゃこはこんがり揚げたような感じにちりめんじゃこはこんがり揚げたような感じに
サツマイモは2色、どんな味なのか食べるのが楽しみですサツマイモは2色、どんな味なのか食べるのが楽しみです

出来上がった燻製は、晩ごはんまでしばらくやすませます。お腹もすいたところで、さあ、いよいよいただくことにいたしましょう!

うまみたっぷり、じんわりおいしい

鶏ハムと豚バラ肉、サツマイモはスライスして、ちりめんじゃこは大根葉としめじの炒め物にトッピングしてみました。

うまみたっぷり、じんわりおいしい

豚バラ肉は、塩気のやさしい生ハムのような味で、肉のうまみが凝縮された感じです。脂身のところはバターのようにクリーミーで、とりわけおいしかったです。鶏ハムは、ムネ肉のあっさりとした味わいに燻香が加わることで深みがでて、これまた美味!ちりめんじゃこは、水分が抜けてかりかりで香ばしく、サツマイモは、焼き芋が干し芋に生まれ変わったような感じに。どの食材も、もともとのうまみが濃くなって、さらにおいしくなりました。

中年夫婦二人暮らしには作りすぎちゃったかなと思いながらも、すっかり平らげてしまいました。初めてのことにわくわくして、ちょっとした日帰り旅に出たような気分転換になりました。これからまだしばらくは、コロナとの気づまりな日々が続きそうですが、ちいさな楽しみを見つけて暮らしてゆきたいです。

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