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オンラインセミナーが開催されました!令和2年度鹿児島県ビジネスプランコンテスト

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今年度の鹿児島県ビジネスプランコンテストの募集が既に始まっていますが、去る7月31日に、応募を検討中の方々に向けてのセミナーが開かれました。新型コロナウイルス感染拡大防止のためオンラインでの開催となりましたが、幅広い年代の男女13人が参加しました。

講師にお迎えしたのは、政府系金融機関に長年勤務したのち、退職して貿易会社を創業した株式会社シングローバル代表取締役川原新一郎さん。長年培った金融の知識、そして自らの創業と会社経営の経験をもとに、創業にあたっての準備のポイントなどを、わかりやすく教えてくださいました。

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オンラインセミナーが開催されました!令和2年度鹿児島県ビジネスプランコンテスト

その「ビジネスプラン」は、事業として成り立つプランか?

川原さんがまず最初に問いかけたのは、「ビジネスプランではなくて夢プランになっていませんか?」ということでした。

例えば、「地元の農産物を活用して素晴らしい商品を作りたい!」というアイデア。これは、地域の農産物の有効活用という点では、とても良い取り組みですが、それだけではビジネスプランとはいえず、その商品をどんなターゲットに売るのか、小売価格はいくらに設定するのか、仕入れの原価率は?利益ベースの投資回収年数は?そもそも売れるのか?などなど、ビジネスとして成り立つかどうかをあらゆる方向から検討することが大切だと川原さん。

ご自身も四苦八苦しながら準備をすすめ、創業までに3年を要したそうです。そんな経験も踏まえたうえで、「ビジネスとして成り立つ事業プラン」のポイントを3つ挙げてくださいました。

  1. 利益が確保できて、継続できる事業プラン
    利益が出ないことには、いずれは資金が枯渇し、事業を続けることはできません。計画段階から、しっかりと利益の見通しをたて、利益の出る確率が高い事業プランかどうかを慎重に見極めることが重要。
  2. 実現可能性のある事業プラン
    事業プランには、例えば、具体的な販売先との交渉の内容や、同業他社の平均的な指標など、計画達成を可能にする明確な根拠が必要。バラ色の計画ではダメ!逆境を想定したバッド(悪い)シナリオを意識し、その時どうやって乗り切るかなどの対策も盛り込んだプランを練ることが大切。
  3. 魅力のある事業プラン
    魅力のあるビジネス≠自己満足だと川原さん。そのうえで、魅力のある事業プランのポイントを4つ挙げてくださいました。

    ①消費行動が沸く(みんなが欲しがるものか?)
    ②取引先がつながりたいと思う
    ③事業の発展が見込める
    ④経営者がやりがいを持てる。

    経営者がやりがいを持って、従業員とともにバリバリやっている会社には、成長性を感じると川原さん。そうした会社になるためにも、事業プラン作成時に収益性、実現可能性、持続可能性をシビアに検討することが求められます。

創業を前に準備すべきこと

実際に創業するとなった場合、事業の内容をどうするか、お店や事務所はどこに構えるのか、また資金の調達はどうするのかなど、様々な準備が必要です。川原さんは、6つのポイントをあげて説明してくださいました。

  1. 事業の内容を明確にする!
    川原さんは、金融機関に勤務していた頃の経験から、事業内容が明確になっていない事業は、融資を受けづらいと指摘。ポイントは、いつから、どこで、だれと、なにをするのか、組織の形態はどうするのか、その5点を明確にすることだといいます。

    ①いつからスタートさせるのか?

    開業時期を見極めることはとても重要。仕事をしながら創業を考えている場合は、現在の仕事との兼ね合いを考えて慎重に準備をすすめることが大切と川原さん。ご自身も、貿易会社を始めるにあたっては、金融機関での仕事の傍ら、海外を含めて多くのバイヤーさんと意見交換を重ね、具体的な取引先や売り上げの見込みを明確にしてから、ようやく退職して創業したそうです。このほか、パン屋さんや居酒屋さんなどは、繁忙期=売り上げのピークを意識した創業が大切。他にも、手持ちの資金に余裕があるか、各種補助金の募集時期はいつか、店舗や事務所にする予定の不動産の契約はいつからかなど、すべてを勘案して最良の時期を見極める必要があります。②どこで?事業地の選定
    特に店舗型の場合、立地はとても大切。お客さんが見込めない場所に店を構えてしまうと、どんなにいい商品、取り組みでもうまくいきません。逆に、立地にこだわる必要のない事業なのに、家賃の高い好立地に店を構えてしまうと、家賃がロスとなってしまいます。もちろん、家賃と相場がマッチしているかどうかは見極めて。賃貸借契約の内容はしっかり確認しましょう。賃借期間の途中で退去する際に違約金は発生しないか、原状復帰することが求められていないかなどを確認しましょう。近隣住民とのトラブルの可能性はないか(騒音、匂いなど)も考慮しましょう。③だれとやっていくのか?
    事業を継続していく間には、必ず、乗り越えなくてはならないトラブルがあるものです。創業したときには仲良しでも、そうしたトラブルの際に信頼できる相手か、一緒に乗り超えていける相手かをじっくり考えること。④何をするか。
    川原さんがセミナーの冒頭でお話されたことを、いま一度確認。
    継続できる事業か、利益は出るか、リスクはないか、やりがいは持てるか。以上の視点で、創業しようと考えている事業の内容について、しっかり検証すること。

    ⑤組織の形態はどうするのか?
    個人事業でやるのか、法人でやるのか、一概にどちらがいいとは言えず、業種によって変わってきます。取引先からの信頼を得るうえでは、法人のほうがいい場合もありますし、ひとりでやっていくのには個人事業でもいいかもしれません。後々利益が上がってきたら、税金対策等で法人化するという選択も。

  2. 事業立ち上がりに必要な資金を算出!
    リスクを回避するためには、まずは必要最低限の投資でスタートさせることが望ましいと川原さん。「これは本当に今必要な投資か?」を考えること。事業の推移に応じて、段階的に投資していくことで、よりリスクを抑えることができます。気をつけるポイントを、設備と運転資金について解説してくださいました。

    <設備>
    事業に必要な設備を洗い出し、1年目から5年目くらいまでの設備導入計画を描くこと。大型投資(内装費、看板・ホームページ制作費など)については、必ず複数の相手から見積もりを取って、過大投資を避けることが大切。相場以上の料金をふっかけてくる悪徳業者がいないとも限りません。たくさんの見積もりのなかから値段と仕事内容を精査し、自分の納得のいく相手を選びましょう。<運転資金> 
    最低でも、事業開始から半年程度の見通しをたてておくこと。実際に事業を始めると家賃(敷金等含む)、仕入れ資金(3~6か月分)、動力光熱費、人件費、消耗品費等に加えて、自分の当面の生活費も必要です。創業したはいいが、設備にお金を使いすぎて運転資金がない、という相談を受けたこともあると川原さん。仮に、売り上げがほとんどない、いわゆるバッドシナリオの場合でも、お金のやりくりができる、余裕を持たせた資金計画を立てておくことが重要。
  3. 自己資金を準備する
    創業資金を金融機関から借入する際の審査基準は、最低でも創業費の1割の自己資金を準備できていることが求められます。(例えば、総事業費500万円の場合、最低でも50万円の自己資金を確保できているか)ただ、川原さんがおすすめするのは、総事業費の3割以上の自己資金を確保すること。これは、前項の「運転資金」の説明にもあったように、利益が出なかった場合でも、当面6か月は、事業の存続と生活の維持を可能とするためです。
  4. 創業時に資金調達をするには
    創業資金の調達には、金融機関などからの借入が必要になってきます。その際、自己資金を準備しておくことが重要なのは前項のとおりですが、借り入れがしやすくなるポイントは以下の通りです。

    ・実現可能性の高い事業計画書を作成する
    ・返済負担の大きい借入額ではない
    ・過去の金融取引(返済)に問題がない

    創業時に検討可能な資金としては
    ・日本政策金融公庫(国民生活事業)の創業資金
    ・鹿児島県・市創業支援資金(県信用保証協会付き)⇒民間金融機関が申込み窓口

    などがあります。

  5. 事業ごとに必要な許可を確認する
    業種によっては許可や届け出が必要です。(例えば、飲食店であれば保健所からの許可)賃貸契約を結んだあとに、その物件では許可が下りないことがわかったというケースも。自分が創業する予定の業種には、どんな許可や届け出が必要か、実際許可が下りるのかを事前にしっかりと把握しておくこと。
  6. 許可以外の各種届出
    ・開業届出書…税務署へ申請(事業の開始等の事実があった日から1か月以内)
    ・青色申告承認申請書…原則、申告をしようとする年の3月15日まで
    ・健康保険・年金…健康保険(協会けんぽ)、及び厚生年金保険に加入している被保険者が適用事業所を退職して自営業者(従業員5名以下で厚生年金に加入しない場合)等になった場合には、医療保険は国民健康保険等へ、年金保険は国民年金へ切り替える必要あり。
    ・事業用通帳の作成
    ※法人は、別途、法人登記手続き等

参考までに、個人事業主と法人の比較は次の通りです。

比較

成功例と失敗例に学ぶ

川原さんは、貿易会社を経営するとともに、国の創業支援施設「鹿児島県よろず支援拠点」で、コーディネーターとして、創業や経営に関する相談に対応しています。その経験から、創業時に気をつけるポイントを、実際の成功例と失敗例をもとに指南してくださいました

成功例:夫婦でパン屋をオープン

★成功のポイント

  • 自宅兼店舗で、店舗の賃借料(家賃)なし。
  • 地方の住宅街の幹線道路沿いで、競合店がなく、好立地。
  • 準備段階で、仕入れ先、製造販売メニュー、収支計画をきっちりとたてて、スムーズな営業開始。
  • 補助金を活用して、初期投資を抑えたこと。
  • 無料の広告宣伝(テレビ、雑誌の取材)
  • パンの需要が高まる秋のスタート
  • 地域に愛されるような、明るい夫婦!奥さんの地元。早めに常連客をつかめた。オープン当初から行列ができる人気に。手堅い収支計画をたて、1年目にして、計画対比300%~400%の売り上げを出しました。

失敗例:美容室

★失敗のポイント

  • 初期投資が10百万円以上と高い。 ⇒ 返済負担が重い。
  • 立地が不適地(大通り沿いで、車通りは多いが駐車場がなく、不便)
  • 美容台が2台に対して、家賃が月25万円と非常に高い。
  • 当初1名雇用し2名で始めたが、人件費の負担ができず、1名体制に。
  • 1年目で資金不足となる。  ⇒ 宣伝活動できず。あらためて創業前の準備のポイントをしっかり押さえて、実現可能性の高い事業計画と収支計画を綿密にたてることが大切のようです。

事業計画と収支計画を立てよう!

事業計画を作成する際のポイントは、これまでのおさらいにもなりますが、以下の通りです。

★事業計画のポイント

  • 事業の目的がはっきりしており、実現可能性があること
  • 無理のない資金調達金額であること
  • 経営開始にあたり、仕入れ先、販売先など、運営体制が明確であること
  • 開業したら、すぐに事業が動き出せる計画であること収支計画に書き込む、具体的な数値の算出方法の一例です。

★売り上げの算出根拠

  • 飲食店:客単価×席数×回転数×営業日数
  • 販売業:商品単価×販売個数(平均又は商品別販売数)×営業日数

★売上原価

  • 業種ごとの原価率目安値等を参考。
  • 原価以外の経費では、人件費、家賃がポイント。

向こう1年間の、月別の売り上げや経費の推移などを、根拠を示しながら、収支計画をたてましょう。今回のビジネスプランコンテストの場合は、向こう5年程度の売り上げの推移や設備投資のタイミングなどを盛り込んで、どのような経営発展を遂げていくかという長期的なプランをたててもよいでしょう。

創業時の資金調達と資金の回し方
(売上収支のバランスを意識する)

利益が出たら、どれくらい返済に回すのか、事業主の生活費をどれくらい確保してどれくらい残るのかなど、資金の流れを常にイメージして計画に反映させ、数か月先まで資金繰りの目途をつけておくことが必要です。最低でも3か月先までの見通しをつけておくことが大事です。

財務バランスを常に意識しておく!

今現在、事業による資産がどのくらいあって、そのうち流動性のある資産(預貯金、売掛金、棚卸資産など)や固定資産はどれくらいあって、それに対する負債はどれくらいあるのかという、財務バランスを常に意識しておくこと。

特に、資本金や利益余剰金などの自己資本がどれくらいあるかは、金融機関が融資を決める際の判断基準になるので、財務バランスを意識した経営を心掛けることが重要です。

事業収支のマイナスが続くときは…

とにかく、早め早めの対応が肝心です。以下のことに注意しましょう。

  • 手持ちの現預金で、差引余剰のマイナス分を見込んで、どの程度、引当可能か確認。
  • 資金調達(借入)すべきかどうか(しなければ資金ショートするか)、早期検討。
  • 売上回復及び利益確保の戦略を早めにたてる。
  • 将来的な投資は慎重に。

事前に知っておくべき事項

事業を始めるにあたって、これは知っておいた方がいい!ということについて、川原さんは以下の6点を挙げてくださいました。

  • 経営がうまくいかないことも想定して、運転資金は十分に確保。
  • 万が一、返済困難なときは、最低でも期日の1か月前には銀行へ相談を!⇒返済金(元金)の猶予支援(条件緩和)を受けられる可能性あり
  • 担保や連帯保証人を求められた時には、慎重に検討を。
  • 中途半端な状態で、スタートはしない!
  • 経営は人脈!知人、元同僚、他業者、関係機関など、嫌がられない範囲でネットワークをフル活用する。
  • 無駄な事業(赤字事業、儲からない事業)に手を出さない!

さいごに

経営者は、悩ましいこと、素早い判断を求められることの連続だと、川原さんは実感を込めて話します。大変なことも多いですが、相談できる相手を見つけてどんどん悩みをぶつけて解決策を見つけることが大切。

自己破産しても人生が終わるわけではなく、実際川原さんの知人にも、3回自己破産してはい上がり、成功をつかんだ人もいるとか。人生山あり谷あり、苦しいときにも思いつめず、息抜きをしながら楽しく前向きに頑張ってほしいとエールをおくってくださいました。

そして参加者からの質問にも答えてくださいました。

  • コロナ禍による厳しい経済状況下での創業について
    創業したいという相談が減っているという現状はある。ただ、自己資金や事業計画等が整っている人のなかには、この時期だからこそ創業したいという相談もある。好立地の物件が空いていたり、空き店舗を埋めたいというオーナーさんの要望で、相場より安い賃料で貸し出される物件があるのも、この時期だからこそ。ただ、創業したい業種によって判断が分かれるところ。今がチャンスなのか、やめておいた方がいいのかを慎重に見極めて。
  • コンテストでは、事業計画書のどんなところを審査されるのか?
    魅力があるビジネスかどうかは大きなポイント。実現可能性と継続可能性のあるビジネスかどうかが大切。地域の課題や地域の未来とリンクするような事業だと、更にいいのではないか。

川原さんが伝授して下さった、創業にあたっての大切なポイントの数々は、ご自身の経験に裏打ちされたものだけに、とてもわかりやすくて腑に落ちるものばかりでした。

このセミナーを、ひとりでも多くの創業をお考えの方にご覧いただき、プラン作りに生かしていただいて、ぜひ鹿児島県ビジネスプランコンテストにご応募いただけたらと思います。

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