「歴史」

鹿児島大空襲の記憶 あの日子どもだったおじいちゃんのことづて

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6月17日は、今から75年前の太平洋戦争末期、鹿児島市に大規模な空襲があった日です。アメリカ軍が上陸した沖縄は当時、多くの市民が巻きこまれる戦場となっていました。

鹿児島は次の上陸地点として標的にされ、特攻基地がいくつもあったことからも、地方都市ながら幾度も攻撃されることとなりました。鹿児島市は、1945年の3月18日から8月6日まで、合わせて8回の空襲を受け、なかでも最も大きな被害を出したのが、6月17日の空襲でした。

今回は、あの日の記憶をてのんに語ってくださった方々のおはなしを、あらためてご紹介します。

野﨑恭弘さんの記憶

野﨑恭弘さんは絵を描くのが好きで、太平洋戦争中の忘れがたい出来事や暮らしの様子など、ご自身の経験をこつこつ描きためてきました。「自分は生かされたんだから、戦争のことを伝えんといかんと思ってるんです。」と、当時のことを熱心に話してくださいました。

野﨑恭弘さん野﨑恭弘さん

鹿児島大空襲のあった1945年6月17日は9歳、国民学校の3年生でした。当時野﨑さんが暮らしていたのは、鹿児島市から30㎞ほど離れた場所(現在の日置市東市来町湯田)でしたが、空襲警報のサイレンが鳴ったのを覚えています。

逃げようと母親や妹と走って国道に出ると、鹿児島方面の空が真っ赤に染まっているのがみえて、「鹿児島がやられとる!」とお母さんが叫んだそうです。

山向こうの鹿児島大空襲の様子

この画のほかにも、戦時中の体験を描いた作品は60枚を超えます。それぞれの場面について臨場感たっぷりに説明して下さる野﨑さんの語り口と、優しくて親しみやすい画にひきこまれ、まるでその場にいるかのような気持ちになったのを覚えています。

毎月日を決めて、戦争で亡くなった多くの人に祈りをささげていると話してくださった野﨑さん。その思いのこもった画は、ずっと後世まで引き継がれていってほしいと思います。

戦争体験vol.2空襲、日常の暮らし、子どもがみた戦争を画に残しておきたい 野﨑さんは、60歳の頃から、戦時中の印象深い出来事や暮らしの様子を、こつこつと描き続けてきました。その数は、60枚を越えます。そ...

村山徳男さんの記憶

当時15歳だった村山徳男さんは、鹿児島市の中心部の天文館に近い樋之口町に暮らしていました。夜中に異様な物音で目覚めると、すでにあたりは火の海。村山さんとお兄さんは、生きるか死ぬかの極限状態のなか、寝たきりのお祖父さんを残して逃げるという、子どもには荷の重すぎる選択をせざるをえませんでした。

お祖父さんを亡くし、家も失い、戦争の理不尽を身をもって体験した村山さんは、その記憶を子や孫に残そうと文章にしてまとめ、私たちてのんにも伝えてくださいました。つらい体験を語ってくださった村山さんの思いを大切に伝えていきたいと思います。

戦争体験記vol.9 鹿児島大空襲 火の海から逃げたあの日のこと6月17日は鹿児島市にとって忘れられない日です。74年前の鹿児島大空襲で市内のほとんどが焦土と化しました。 本土南端の鹿児島は知覧...

前迫範三さんの記憶

当時13歳だった前迫範三さんは、鹿児島市の武に住んでいました。梅雨のただなかの蒸し暑い夜に、何の前ぶれもなくはじまったという空襲。火の手に追われて必死で逃げた体験をできるだけわかりやすく伝えたいと、防空壕や焼夷弾の残骸など、言葉だけではどんなものかをわかりづらいものは、絵にかいて教えてくれました。

大きさや形がわかると、こんなものが空から大量に降り注いだなんて、とつくづく恐ろしくなりました。不思議と心に残っていると話してくれたエピソードからは、九死に一生を得た人たちの安堵感が伝わってきて、ほっとした気持ちになりました。

「人と人とが殺しあう戦争はやったらいかんよ。」紙一重のところで命を拾った前迫さんの思いを、しっかりと胸に刻みました。

戦争体験談vol.6鹿児島大空襲の記憶太平洋戦争末期の1945年(昭和20年)6月17日。この日鹿児島は、アメリカ軍による大規模な空襲に見舞われました。 夜の11時5分から...

さいごに

てのんでは、これまで11人の方々の戦争体験談をうかがってきました。みなさんつらい体験をお持ちでしたが、それでも、よりよい未来のためにと話してくださって、感謝でいっぱいです。

そのなかから今回は、鹿児島大空襲の体験を話してくださった方々を特集しました。みなさん想像を絶する状況を少しでもわかりやすく伝えようと、身振り手振りで熱心に話してくださり、その思いの強さに、大事なことづてを預かる責任を感じました。

戦後75年が経とうとする今、お話して下さる方を探すことも、そのお話をうかがうことも、とても時間のかかる仕事で、最近では忙しさにかまけてなかなか注力できずにいることに、正直焦りを感じています。

戦争体験をお持ちの方々は高齢ですので、コロナ禍の今、対面での聞き取りが難しい現実もあります。それでも、今後も状況が許すかぎり、体験を語りたいという方々の思いを記録して、伝えていきたいと思っています。

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