「福祉」

介護現場から今伝えたいこと… 大型連休「STAY HOME」を今一度呼びかけたい

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新型コロナウイルスの感染拡大による医療崩壊や福祉崩壊の危機が叫ばれています。

以前「てのん」にご登場いただいた社会福祉法人恵仁会の統括部長・林田貴久さんは「ゴールデンウィークが大きな一つの山場。この休みの過ごし方が極めて大事になる」として、法人内で働く職員に繰り返し「STAY HOME」と呼びかけています。

新型コロナウイルスの感染危機に晒されながら、頑張っている方々へ伝えたいメッセージとは…

ゴールデンウィークの「STAY HOME」を呼びかける 社会福祉法人恵仁会 特別養護老人ホーム 鹿屋長寿園 施設長  林田貴久さんゴールデンウィークの「STAY HOME」を呼びかける
社会福祉法人恵仁会 特別養護老人ホーム 鹿屋長寿園
施設長 林田貴久さん

プロフィール

鹿児島県鹿屋市を拠点に特別養護老人ホームをはじめとする27の福祉事業を展開する社会福祉法人の統括部長。総勢450名の職員を束ねる。

「私のところも正直言って、今、コロナ一色です。医療もそうでしょうが、福祉の現場でもひとたびクラスター(集団感染)が起きたらとんでもないことになるという緊張感の中で、みんなが毎日必死で水際対策を行いながら、仕事を続けています。だからこそ、みんなが今、同じ気持ちになって「STAY HOME」を実践することが必要だと感じています。」

数か月前には、ここまでの状況は想像していなかったと言います。それでも、1月の中旬、国内初の感染者が発生すると「これは早くに手を打っておかなければ大変なことになるかもしれない」という危機感から、2月のかなり早い段階から感染予防対策に取り組んできたと言います。

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ほとんどの高齢者が重症化のハイリスク

「というのも、うちの特別養護老人ホーム(鹿屋長寿園)に入所している111人のお年寄りは、そのほとんどが感染したら重症化してしまうハイリスクの人たちばかりです。寝たきりになって免疫力が低下している人、胃瘻や経管栄養などの医療的なサポートが欠かせない超ハイリスクな人たちも少なくありません。海外では、高齢者施設での集団感染によって多くの犠牲者が出ています。感染の持ち込みは水際で絶対に阻止しなければなりません。」

まずは、「職員自らが感染しない、人にうつさない」ことを基本として、職員間でそのことを改めて確認し、自らが感染源とならないための行動変容を呼びかけました。施設内では、マスクの着用、手洗いなどによる手指消毒など、感染予防の対策を徹底的に行っています。

不安と緊張を抱えながら、手指衛生の励行、マスク着用などを徹底しての 介護が続いている…(鹿屋長寿園)不安と緊張を抱えながら、手指衛生の励行、
マスク着用などを徹底しての介護が続いている…
(鹿屋長寿園)

入所者と職員の命と安全を守るために…

いつ感染がおこるか分からない中で、重症化リスクの高い高齢者のケアを続けている介護職員の不安と緊張感は相当なものがあると話す林田さん。ひとたび職員や入所者の間でクラスター(集団感染)が起きてしまうと、施設内の業務はたちまち混乱し、滞ることが目に見えていました。

そこで準備したのが「命と安全」を守るために、最低限必要なものを準備しておくことでした。

「不測の事態が起きた時に、備えがあるのと無いのとでは、現場で働く人たちの不安感は違ってきます。マスクや消毒液など感染予防に欠かせない衛生用品や、緊急時のレトルト食品、使いすてのプラスチックの食器の確保など、安全な生活を維持していくために必要と思われるストック品を、当面2ヶ月分ほど準備しました。こんなことは初めてのことでした。」

施設内のホールに山積みされたストック品施設内のホールに山積みされたストック品

こうした準備があることで、高齢者の命を守り、働く人たちの不安感を少しでも減らすことが出来るのではないかと考えてのことでした。

「困った時は、助け合う」こんな時だからこそ、手を結び、連携しよう!

「ストックがある私のところは、まだ気持ちに余裕が持てていますが、近くの小さな福祉事業所ではマスクなどの衛生用品の不足が深刻なところもあります。そこには、ストック品を分けたりしています。

また、自分のところで感染者が出たら、入居者のケアはどうなるのだろうと不安を抱えている事業所もありました。そのグループホームとは、感染者が出た時には、互いに介護支援をしていくという契約を結びました。

今回の問題をきっかけに、感染症の問題だけでなく、緊急事態が起きた時に、同じ業種の人たちが手を結んで、孤立しないで互いが助け合うためのシステムを作っていく必要性を感じています。」

家族との繋がりを断たないための試行錯誤

ぎりぎりまで模索したのが、「家族と関係を分断しない」ということでした。ウイルスを施設内に持ち込まないためには、施設外からの人の出入りを完全にシャットアウトすることが最も有効であることは分かっていました。

しかし、家族との繋がりが断たれることで、入所者の生きる意欲が低下したり、認知症が進行したりと大きな生活の質の低下を招く心配がありました。

家族との面会時間の制限を設けるなどの対応をとってきましたが、鹿児島県内で初の感染者が発生した3月26日以降、家族の面会を原則禁止とし、入所者と接触できるのは直接介護にあたる職員のみとなりました。

「今は我慢の時。家族との接点が断たれないように、施設のスマホを使って、家族にライン電話を通して声かけをしてもらったり、新しい取り組みを始めています。」

施設のスマホを活用して、家族と繋がる取り組みも…施設のスマホを活用して、家族と繋がる取り組みも…

「施設を訪れた家族の方には、窓の外から様子を見てもらったり、こちらからも定期的にメールで状況をお知らせして、今まで以上に密に情報をやり取りすることで、家族の不安が少しでも軽減されるように努めています。

今、入所者はこれまで行われていたレクリエーションやリハビリ、触れ合い活動など、ほぼすべてが中止となり、衣食住の生きていくための基本的なことしかできない、とてもストレスフルな状態です。こうしたことが長く続けば、心身の機能の低下を招きかねません。まだ何か出来るんじゃないか、他に方法があるんじゃないかと試行錯誤の中にあります。」

「遠慮なく休める」職場環境であること

「ウイルスを持ち込まないために、職員には自分と自分の家族に、そのリスクを伴うような行動をとらないこと、発熱など少しでも体調不良があった場合は、無理をして絶対に出勤しないようにと言っています。

私たち管理者は、職員が遠慮なく休みをとることが出来るようにすることが大事です。その上で、最悪の事態も想定しておくこと。もし感染が疑われる職員が発生した場合、その職員が待機できる場所の確保も考えておかなければなりません。

国から自宅療養は望ましくないという方針が示されたものの、待機場所の確保は遅れています。うちでは、もし職員で感染が疑われるケースが発生した場合、自宅ではなく、緊急的な待機場所としてショートステイ用の10床を使用する準備をしていますが、十分とはいえません。

医療や福祉の現場から感染拡大が起きるとその影響は甚大です。自治体には、医療、介護関係者の感染が疑われた時に、安心して隔離・待機できる場所の確保を早急に求めたいです。」

「STAY HOME」は、通知・通達ではなく職員への手紙として届けたい

林田さんは、今、感染リスクを背負いながら最前線で踏ん張っている職員全員に、何度も「STAY HOME」を呼びかける手紙を届けています。文書通達としてではなく、手紙として送っているのは、この状況の中で、職員に安心して働いてもらうためには、みんなが同じ気持ちになることが何よりも大切だと思っているからです。

職員に「STAY HOME」を呼びかける林田さんの手紙より
(4月24日)

毎日お疲れ様です。
新型コロナウイルス感染は、国内において4月23日時点で、11,919人で死者は287人です。回復者は2,408名となっています。依然として増加傾向にありますが、いよいよゴールデンウイークも間近となってきました。

ここが大きな一つの山場であることは間違いありません。今週末からゴールデンウイークの間、大変でしょうが自宅を中心に過ごしてください。外出制限はその後もしばらく続くと思いますが、未来永劫続くわけではありません。繰り返します。間違いなくここからが一つの山場です。

私たちは大人です。全国で我慢を強いられている子供たちの見本となるよう、自宅で楽しく、想い出に残るゴールデンウイークにしましょう。いつか振り返ったときに、あんなゴールデンウイークもあったねと身近な人と語り合えるように。そしてこの状況を共に乗り切っていきましょう。

あなたとあなたの大切な人の命のために、
とどまるという選択を!

そして林田さんから頂いたメールの最後に「決意と覚悟」を感じる一文がありました。

長い戦いになると思っています。徹底した水際対策と最悪を想定した準備で、気を抜かず過ごしていきたいと思います。

この声は、あらゆる業界や地域の人たちにも通じる言葉だと思い、今一度肝に銘じたいと思いました。

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