「福祉」

食材提供で支援します!~鹿児島・森の玉里子ども食堂から~

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新型コロナウイルスの感染拡大を受けての臨時休校で、子どもさんのいらっしゃるご家庭では対応に追われたことでしょう。そんな中、家で頑張っている子どもたちやそのご家族を少しでも応援しようと食材の提供を始めた鹿児島市の森の玉里子ども食堂を取材してきました。

臨時休校の波紋

ひとり親世帯や共働き世帯の増加などで、子どもの「食の貧困」が社会問題となる中、子ども食堂は、孤食の解決や子どもと地域が繋がり合う場として、ここ数年で急速に広がってきました。

その子ども食堂の多くが、新型コロナウイルスの影響を受けています。限られた空間での集団感染がクローズアップされる中、感染予防の観点から当面休止せざるをえないというところが相次いでいるのです。

急遽学校が休みとなり、子どもたちへの食の支援がむしろ必要とされている中で、「休止やむなし」と苦渋の選択をしたところも多かったようです。以前取材した鹿児島市の「森の玉里子ども食堂」はどのような対応をしているのか、気になっていました。

森の玉里子ども食堂は2016年6月に鹿児島で初めて誕生した子ども食堂です。子どもたちに手づくりの温かい食事を提供しようと地域の福祉館で月2回開催され、地域の人たちと子どもたちが食事を通して出会い、触れ合うコミュニティの場として定着してきていました。

森の玉里子ども食堂(2017年10月)森の玉里子ども食堂(2017年10月)

私たちの出来ること

森の玉里子ども食堂でも、これからどうしていくべきか話し合いが持たれたそうです。その結果、感染のリスクを考える時、しばらくの間、休止せざるをえないという結論に達しました。休止を決めたものの、運営スタッフは悶々とする思いを抱えていたそうです。

すると運営委員のひとり、永田嘉人さんからこんな提案がありました。「ここに集まる食材をご家庭に届けるというのはどうでしょう?」この提案でみんなの気持ちがひとつになり、一気に動き出すことになりました。

食材の提供を提案した運営委員の永田嘉人さん食材の提供を提案した運営委員の永田嘉人さん

「実家の母が、学校が休校になるというニュースを聞いて『学校が休みになったらお母さんたちは大変だろうねぇ。毎日3食ご飯を作るのは、本当に大変だよ。』と言っていたのが心に引っかかっていました。

それで、思い切って提案したんです。子ども食堂には、毎回、個人や企業、団体のみなさんたちからたくさんの食材が届きます。これは、子どもたちの食事に役に立ててほしいという善意の贈り物です。その食材を、私たちを通して各家庭にお届けすることで、学校が休みになって食事づくりに苦労されているご家庭みなさんの少しでもお役に立てるんじゃないかなぁと思ったんです。

提案したら、メンバーのみなさんがすぐに賛同してくれたことが嬉しかったです。話がとんとん拍子に決まって、それからはイケイケドンドンでした。(笑)」

いつもの食材をみんなの元に…

3月7日の土曜日、子ども食堂が開かれる予定だった日が食材を提供する日になりました。いつものようにたくさんの食材が届いています。

3月7日 朝3月7日 朝

 

「子どもたちのために」と届けられた食材が続々…「子どもたちのために」と届けられた食材が続々…

会場となっている福祉館は、この日からしばらく使えなくなり、急遽、近くの
玉里団地西3区集会所をお借りして、ボランティアスタッフで仕分け作業をすることになりました。

マスクと手袋をつけて仕分けマスクと手袋をつけて仕分け

 

新鮮な野菜や旬の果物がたくさん新鮮な野菜や旬の果物がたくさん

新鮮な野菜や旬の果物がたくさん
季節の無農薬野菜やお米、パン、バナナなど、いつも届けてくださる方々から本当にたくさんの食材が集まっています。

お米も小分けして配りますお米も小分けして配ります

 

食パンや菓子パン食パンや菓子パン

 

バナナなどすぐ食べられるものも入れて…バナナなどすぐ食べられるものも入れて…

いつも手づくりデザートを作って持って来て下さる元小学校の校長先生は、家庭にひとつずつ行き渡るように焼き立てのバナナケーキを持って来て下さいました。

手づくりのバナナケーキを18本焼いてきて下さいました手づくりのバナナケーキを18本焼いてきて下さいました

また大学生のボランティアさんは、大人用と子ども用の手づくりマスクを作って来てくれました。

洗って繰り返し使える手づくりのマスク洗って繰り返し使える手づくりのマスク

マスクはメッセージつきです。
「最近は、マスク不足になっているため手づくりマスクを作ってみました。多少のズレはあるかもしれませんが、一生懸命作ったので、使っていただけたら嬉しいです。」
どれも心のこもった贈り物です。

食材提供に、18組のご家庭から申し込みがありました。土曜日の正午。食材をお届けする「森の玉里子ども食堂」の開店です。

「森の玉里子ども食堂」の開店です。「森の玉里子ども食堂」の開店です。

受け渡し場所は屋外で。スタッフのひとりが自宅のガレージを開放してくれました。

「ありがとうございま~す」の声…「ありがとうございま~す」の声…

以前、提供があった次亜塩素酸水も、家庭での殺菌・消毒に役立ててもらおうと一緒にお渡ししました。

「次亜塩素推です。家での除菌対策に役立てて下さいね。」「次亜塩素推です。家での除菌対策に役立てて下さいね。」

食材を受け取りに来たみなさんたちから笑顔が溢れます。
「今日は妻が仕事なので、子どもたちと取りに来ました。共働きなんで、ほんと有難いです。」
「今日は妻が仕事なので、子どもたちと取りに来ました。共働きなんで、ほんと有難いです。」

「仕事をしていて、日中の子どものお預かりをおばあちゃんに頼んでいるんです。毎日子どもにお弁当を持たせているので、食材をたくさんいただけて、とても助かります。」

「仕事をしていて、日中の子どものお預かりをおばあちゃんに頼んでいるんです。毎日子どもにお弁当を持たせているので、食材をたくさんいただけて、とても助かります。」
お母さんたちの切実な現状も垣間見ることが出来ました。
「子どもが5人いるんです。学校も休みになったし、生後2か月の赤ちゃんもいるんで、買い物に出るのもひと苦労なんです。きょうは、みんなで来ました。こんなにたくさんの食材を頂けて、ほんとに助かります。」
「子どもが5人いるんです。学校も休みになったし、生後2か月の赤ちゃんもいるんで、買い物に出るのもひと苦労なんです。きょうは、みんなで来ました。こんなにたくさんの食材を頂けて、ほんとに助かります。」
「私は4歳から高校生まで子どもが7人。食事が本当に大変です。それはもう助かりますよ。ほんとうに有難うございます。」
「私は4歳から高校生まで子どもが7人。食事が本当に大変です。それはもう助かりますよ。ほんとうに有難うございます。」
「私は4歳から高校生まで子どもが7人。食事が本当に大変です。それはもう助かりますよ。ほんとうに有難うございます。」

苦難も幸せも分かち合う『子ども食堂』でありたい

森の玉里子ども食堂 代表 齋藤美保子さん森の玉里子ども食堂
代表 齋藤美保子さん

「もともと子ども食堂は、市民の中から生まれてきたもの。根っこには、困った時に互いに助け合うという相互扶助の精神がありますよね。みんなで集まることはできないけれど、せめて食材だけでも届けたいという私たちの思いが、ささやかではあるけれど形になりました。

いただいた食材を無駄にしないで使っていただけると食品ロスの解消にもなりますものね。(笑)できる人が、できることから始めることで、家庭の中に閉じ込もりがちで、沈んでいる気持ちがちょっとほぐれて、みんなが笑顔になってもらえると嬉しいです。」
笑顔で帰っていくみなさんの姿を見ながら、ボランティアスタッフのひとりが、こうつぶやきました。
笑顔で帰っていくみなさんの姿を見ながら、ボランティアスタッフのひとりが、こうつぶやきました。

「コロナウイルスの騒動でみんなどこか内向きになっていますよね。ティッシュペーパーやトイレットペーパーがデマで品切れになって騒動になったり、何か世の中、殺伐としてきたなぁって寂しい気持ちになったりしていました。

でも、きょうの様子を見ていると、みなさん、こんなにあたたかくて、優しいんだって、お互いに感じ合えてね。世の中、捨てたもんじゃないなぁって思えてきますよね。」
きょうの様子を見ていると、みなさん、こんなにあたたかくて、優しいんだって、お互いに感じ合えてね。世の中、捨てたもんじゃないなぁって思えてきますよね。

次回は、食材+お弁当を届けたい

この日、いただいた食材は全部、希望するご家庭にお渡しすることが出来ました。そして、食材を取りに来た親御さんや子どもたちの姿を見ていて、ボランティアスタッフから自然発生的にこんな声があがってきました。
「毎日の食事づくりが大変だろうなぁって感じました。」
「簡単なものでいいから、ちょっとしたお弁当でもお渡し出来たらいいなぁって思いますよね。」
「毎日の食事づくりが大変だろうなぁって感じました。」
「簡単なものでいいから、ちょっとしたお弁当でもお渡し出来たらいいなぁって思いますよね。」
「福祉館の調理室はいつから使えるか、まだ分からないので、公民館を借りて、おにぎりと卵焼き、唐揚げ一つでも入れて、次回は簡単なおにぎり弁当を作りましょうか。」

ということで、3月20日(金)の開催予定の子ども食堂は、食材の提供と簡単なお弁当を準備しようということで意見がまとまりました。

先の見えないこれからのことは流動的ですが、新型コロナウイルスの情報を見極めながら、自分たちの「今できること」をみんなで考え、子どもさんのいるご家庭への支援を続けていこうということになりました。

食材と共に「頑張って!」のエールを届けたい…食材と共に「頑張って!」のエールを届けたい…

 

3月20日(金)にはお弁当と食材をお届けする予定です!3月20日(金)にはお弁当と食材をお届けする予定です!

森の玉里子ども食堂のお弁当や食材提供に関する詳しい情報はFacebookで常時公開されますので、ご確認ください。

食材提供やお弁当は事前予約となっております。

お申し込み・お問い合わせ先

森の玉里子ども食堂・副代表 園田愛美さん(090-5381-1868)まで

「子ども食堂」それぞれの取り組み

鹿児島には森の玉里子ども食堂以外にも48ヶ所(かごしまこども食堂・地域食堂ネットワーク調べ)の子ども食堂があります。きっとそれぞれに地域の事情に合わせて対応していらっしゃることでしょう。いくつかの子ども食堂に尋ねてみたところ、それぞれが今できる支援を模索している様子が伝わってきました。ほんの一部ですが、ご紹介します。
【2020年・3月11日現在】

感染予防対策を施した上で、継続開催しているところ

  • こども食堂お助けマン隼人(霧島市)
    「学校が休校になったことで、困っている人がいる。こんな時だからこそ、休まないで受け入れようと思いました。ウイルス対策に効果がある医療用強酸性水(PH2.7)の導入など、最大限の感染予防対策を施して、毎週土曜日に開催しています。」

食材やお弁当の提供などで支援をしているところ

  • 志布志子ども食堂(志布志市)
    「3月3日から毎日(月曜日は休み)50食、0円弁当(高校生以下)を作って提供しています。この話を聞いて、賛同して下さる地元の方々から毎日のようにたくさんの野菜やお肉屋などが届くので本当に有難いです。今日もぶりの照り焼きを持ってきて下さった方がいたんですよ。嬉しいですね。学校の再開がどうなるかを見極めながら、今後を検討していきたいです。」
  • ほしがみね☆みんなの食堂(鹿児島市)
    「子ども食堂で、週2回の食材提供をしています。その他、スタッフでランチの店をやっている人がいるので、週2回、そこで20食分のお弁当を作って250円で提供しています。」
  • 喜入子ども食堂(鹿児島市)
    「地域の方々から提供される食材をいつでもとりに来ていただけるように対応しています。いつもの利用して下さる方々100名程とラインネットで繋がっているので情報をお伝えしています。うちはお寺なので、切実に困っている方々への個別支援にも力を入れています。5月には再開できればと思っています。」
  • なかす子ども食堂(鹿児島市)
    「休校になった子どもたちへの食の支援として、1日50食、毎日お弁当を作って200円で提供しています。今後については、学校再開の状況を見ながら対応していきたいです。」
  • 祥徳寺子ども食堂(鹿児島市)
    「3月28日(土)は中止を予定していましたが、パンを提供したいという方からのお申し出がありました。集まっての子ども食堂は開催出来ませんが、パンをお渡しするかたちに代えて、対応したいと思っています。」

不定期で子ども食堂を開いているところ

  • ナポリ通りの子ども食堂(鹿児島市)
    「通常の第2、第4土曜日の子ども食堂は休止しています。いつも利用して頂いていた子どもたちに対して、休校中の食の支援として、週1~2回、少人数での子ども食堂を実施しています。スタッフの確保などが大変ですが、対応が可能な日に限っての開催となっています。」

バイキング会食からお弁当方式に切り替えての開催を検討しているところ

  • とそ子ども食堂(鹿児島市)
    「今のところ3月21日(土)開催予定で準備を進めています。状況次第ですが、いつものバイキング会食をお弁当形式に切り替えて、40食ほどを準備して開催することができればと思っています。」

ご紹介したのは、3月11日時点の情報で、いずれの子ども食堂も、今後の感染状況や学校再開の情報などに対応して、臨機応変に対応していきたいとしています。

食材提供やお弁当についてはあらかじめ予約が必要なところも多くあります。子ども食堂の開催状況やお申し込みにつきましては、直接お問い合わせの上ご確認ください。

おわりに

3月11日、WHOは新型コロナウイルスに関してパンデミック(世界的大流行)と表明しました。先の見えないウイルス感染の恐怖に、世の中全体が戦々恐々としています。

保育園など子どもの施設での集団感染(クラスター)が報告されるなど、子ども食堂を運営する方々にとっては、難しい判断を迫られることも多いことでしょう。

「子ども食堂」にとって、いわば試練ともいえる中、それぞれがこれまで築いてきた繋がりのネットワークを生かしながら、子どもたちやそのご家族を応援するために今、自分たちに何ができるかを模索している姿を感じることができました。

一律でない臨機応変な対応は、住民主体の支援を原点とする子ども食堂ならでは。「感染予防」を第1に、心身の負担を抱え込んでいる人たちに寄り添う「子ども食堂」ならではの、多様な支援が生まれてくることを願います。

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