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起業物語

私流・生き方「意味のない雑談をしよう!」原崎大作さんインタビュー


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「てのん」では、これまで色々な方々に人生のお話を伺い、その生き方に触れてきました。今回は42歳の若手経営者。管理薬剤師として複数の薬局を経営しながら、地域にちょっと面白いコワーキングスペースをつくったり…発想の自由を求め、創造の羽を広げてアクティブに行動する原崎大作さんにお話を聞きました。

みなみの株式会社 代表取締役 原崎大作さんみなみの株式会社
代表取締役 原崎大作さん

オシャレなカフェみたいな薬局

待ち合わせ場所は、原崎さんが経営する調剤薬局のひとつ「みなみの薬局」でした。

みなみの薬局(鹿児島市山下町)みなみの薬局
(鹿児島市山下町)

みなみの薬局(鹿児島市山下町)何だか、私のイメージする薬局と雰囲気が随分違います。中に入っても、ゆったり寛げる居心地のいい空間が広がっていました。

みなみの株式会社 代表取締役 原崎大作さんみなみの株式会社
代表取締役 原崎大作さん

どうしてこんな薬局を作ったんですか?

薬局って命に関わるものすごく大切な仕事を担っていて、患者さんの命を守るお薬の情報を正しく伝える大事な場のはずなんだけど、大方の人にとって「病院から処方された薬をただ取りに行くところ」になってますよね。

出来れば、サッサと終わらせたい場所になってる。命にとって大事な話をする場所が、セカセカしたりイライラしたりする雰囲気であったらまずいんです。まず、その環境から変えたいって思っていました。

そういう気持ちになったきっかけは?

私は10歳の時、交通事故で右足を大腿部から失って義足なんですよ。その事故の時、6リットルもの輸血を受けたんです。そのお陰で、命が助かりました。でも一方で、同じ輸血による薬害も起きています。

輸血によるHIV感染が起きた時、一歩間違えば、私もそうなっていたかもしれないと思いました。医療や薬は正しく使われてこそ、人を助けるんだということを身に染みて感じました。

だからこそ、この薬局にある1200種類もの薬を正しく出し、正しく使っていただけるような良いコミュニケーションができる場にしていきたいんです。

居心地の良い空間が良いコミュニケーションを生むと 話す原崎さん居心地の良い空間が良いコミュニケーションを生むと話す原崎さん

「薬局に心地よさ」を求める視点、これまであまり聞きませんよね。

そうですよね。合理性、機能性優先で薬局に遊びの空間なんて必要ないって思うかもしれません。

でも私は、ここに来ると何だか落ち着く、寛げる、そういう空気が流れていることが大事だと思っています。

気がつかないと思うんですが、薬局というところは、狭い空間の中に、人がストレスを感じるような微量なノイズがたくさんあるんです。ですから、光、音、香り、椅子の色・配置など、あらゆることを考慮して、この空間を作りました。コミュニケーションにとって、身をおく環境がとても大事だと思います。

天井には、トップライトと難聴者支援機器のスピーカーを設置天井には、トップライトと難聴者支援機器のスピーカーを設置
難聴者にはこのマイクで小さな声でも届くように配慮

薬局がコミュニティになれば面白い

経営者の立場で、薬局はどのような場になる必要があると…

よくビジネスの世界に必要なものが、「人」「もの」「金」っていうけど、私はこれに「場」という要素を加えたいですね。薬局もそうです。今の調剤薬局は薬をたくさん出さないと儲からない仕組みです。でも、薬を出さないけど儲けていく方法を考えないと、歪んでいく。バブルの時代から、

儲けないと不安な人がたくさん出てきて、これを解消していかないと命の産業がダメになる。薬局が、地域に根ざしたコミュニティとして色んな発信ができる『場』なったら面白いだろうなぁと思います。

薬局コミュニティですか?

健康や薬の話だけじゃなくていい。例えば、私は、100メートル走で国体に出たこともあるアスリートで、障がい者スポーツの支援も行っているんですが、障がい者のアスリートたちの写真展を賛同する薬局で巡回するような企画も面白いかなぁと思っています。薬局が人と人を繋ぐ場所になっていくことで、何か新しい「場」が生まれてきそうじゃないですか。

原崎さんは障がい者スポーツのアスリートとしても活躍原崎さんは障がい者スポーツのアスリートとしても活躍

原崎さんは障がい者スポーツのアスリートとしても活躍
次から次にアイディアが出てくるんですね。

医療という枠にはまらず、「人の幸せを追求する」仕事をしていきたいですね。最近では、ソニーコンピュータサイエンス研究所開発と共同でオールインワンジェルの化粧品の商品開発にも携わらせていただいています。

女性の美、アンチエイジングも人に幸せをもたらす永遠のテーマですもんね。これやったらいいんじゃないかなぁっていうアイディアはいくらでも湧いてくるんです。(笑)

その「発想の泉」はどこから湧いてくるんですか?

公開秘密基地「いづろベース」も主宰する原崎大作さん公開秘密基地「いづろベース」も主宰する原崎大作さん

違う世界の人と交わって、意味のない雑談をいっぱいすることじゃないでしょうか。よく会社なんかで、テーマを決めて「さあ企画を出しましょう。」と言ったって面白いアイディアはあまり出てきませんよね。私の主宰する「いづろベース」なんて、何の目的もなく集まる場所です。

一緒にゲームしたり、ごろっとしたり、プラモデルづくりをしたり…(笑)コワーキングスペースのようなある目的を持って集まるというところともちょっと違う。目的なく集まれるというところが良いんです。

仲間にはITの仕事しながら畑作っている人、飲食業、エクステリア事業をしてる人、コンサルタント業など、もう色々いて、ごちゃまぜです。

こんなことしたら面白そうだねとか、こんなことしてみようとか言って、『遊び』が本気になって、トレンディドラマを自分たちで作っちゃったりもしました。

ほとんど才能の無駄遣いですよね。(笑)でも意味のないことに夢中になれることがまた楽しくて、それこそ人間らしいなぁって。

今、どこも地域のコミュニティづくりに一生懸命じゃないですか。制度や仕組みが先じゃなくて、こんな感じで意味や目的なく、ゆる~く集まれる居心地の良いコミュニティが自然発生的に出来ていけばみんなもっと幸せになるんじゃないかなぁ。

地域の中に様々な得意技を持ったいろんなスペシャリストがいて、ふつうの暮らしの中に、よけいなおせっかいをするスペシャリストがもっと増えていけば、世の中もっと生きやすくなるんじゃないかなぁって思います。

自分を生きる

なんかフィールドの幅広さに、原崎さんって何物?
普段どんな生活してるの?って謎になってきました。

小学生の子どもが二人いるんで、休みの日は子どもと遊んだり、夜は宿題を見てあげたりもしますよ。忙しいです。(笑)

仕事であれ、プライベートであれ、全部自分の人生時間じゃないですか。人間らしく生きたいなぁって思います。

だからここからは仕事、ここからはプライベートって、線を引いて分けて切り替える人も多いけど、ちょっともったいなぁって思います。

私はそのどちらも大事だし、そのどちらも楽しくなるように工夫します。他の誰でもない「原崎大作」を生きてます。(笑)

原崎大作さん原崎大作さん

インタビューを終えて

原崎さんは、10歳の時に交通事故で右足を失いました。みんなと同じように動けないことで上手くコミュニケーションがとれず、焦りや孤独感を募らせる時期もあったそうです。

障がいをもちながら、どうやったら自分らしく生きていけるかを真剣に考えてきたそうです。私がお会いした原崎さんは、びっくりするほどアクティブで自由で少年のような好奇心に溢れていました。

想像を絶するような試練を乗り越えながら、しあわせに生きるための心のありようを、より深く追求してこられたのだろうと思います。

原崎さんを突き動かしている原動力は、何ものにもボーダーをつくらない心の内に流れるユニバーサル精神のような気がしました。

原崎大作さんのプロフィール

原崎大作さんのプロフィール
全国薬剤師在宅療養支援連絡会 理事
鹿児島県薬剤師会 薬事情報委員会 委員
鹿児島市薬剤師会 IT委員会 委員
株式会社はらさきや 代表取締役社長
みなみの株式会社 代表取締役社長
サイエンティスタ(株) 代表取締役社長
合同会社JA.NIGHT 取締役
公開秘密基地いづろベース 主宰
TED×kagoshima オーガナイザー


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