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「暮らし」

秋 ひそやかに咲く野の花たち

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朝夕はめっきり涼しくなり、季節は暑さのやわらぐ初秋を迎えました。草むらでは虫の声も聞こえ始めました。この時期、ちょっと気にしながら道ばたや草むらに目をやると、かわいい秋の花たちに出会えます。

道ばたにうっそうと茂るこちらの植物。車を走らせていたら気にも留めずに通り過ぎてしまう光景ですが、今の季節、よく見てみると紫色の可憐な花が咲いています。
これは葛(くず)です。

秋の七草「葛(くず)」

葛は濃い紫の気品のある花を咲かせます。

葛(クズ)葛(クズ)
葛(クズ)

葛は「秋の七草」

セリ、ナズナ、ゴギョウなどの春の七草は、七草がゆに入れるので、なんとなく覚えていますが、「秋の七草」は、なかなか覚えられません。

「秋の七草」は、ハギ、キキョウ、クズ、フジバカマ、オミナエシ、オバナ、ナデシコ。
万葉集の中に収められている、山上憶良(やまのうえのおくら)の2首の歌が「秋の七草」の由来とされているそうです。

「秋の野に 咲きたる花を 指折り(およびおり) かき数ふれば 七種(ななくさ)の花」
「萩の花 尾花 葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝貌(あさがお)の花」
(朝貌は、朝顔ではなく桔梗(ききょう)が定説となっている。)

「春の七草」は食べる植物なのに対し、「秋の七草」はその美しさを観賞して楽しむ植物なのだそうです。

およそ千三百年前の奈良時代の人が、その姿に惹かれた秋の草花が「秋の七草」として今日まで受け継がれてきているんですね。

およそ千三百年前の奈良時代の人が、その姿に惹かれた秋の草花が「秋の七草」

この葛、古来より、大きく育った根に含まれるデンプンをとって「葛粉」にしたり、根を乾燥させて生薬「葛根(かっこん)」にしたり、食用や薬用としても人々の生活に欠かせないものでした。

風邪のひき始めの時などに服用する馴染みの漢方薬「葛根湯」の原料なんですね。

田舎で育った86歳の母に聞くと、母が小さい頃は、葛の根から母親や祖母たちが葛粉を作っていたそうです。

白い葛粉ができるまでは、根を叩いて潰し、水に入れてザルで濾し、その後も何回も水をかえてくず粉を沈殿させ、その粉を乾燥させ・・と、とても手間がかかる作業だそうです。身近な自然の産物から、手間を惜しまず工夫しながら食材を作り出していたんですね。

しかし今では、手作りの葛粉を作る家庭もめったになくなり、また、本葛粉(まじりけのない100%の葛粉)を作る生産者も減少し、葛粉の生産量は少なくなってきているそうです。

葛粉の生産量は少なくなってきているそうです

郊外に行くと、こんな光景を目にすることがあります。
葛が電線や電柱にからみついているのです。

葛は繁茂力が高いので、すぐに伸びていきます。昔は、田畑に侵入する葛は、作物の成長を妨げるとしてこまめに刈り取られていました。また、食用などにも使われていましたので、ここまではびこることはなかったと、母が話していました。

葛は繁茂力が高いので、すぐに伸びていきます

人々の生活の変化から、このような葛の光景が増えてきたのかもしれませんね。
今では、ちょっと厄介者の面もある葛ですが、せめてこの季節、美しく咲く葛の花を愛でてあげたいと思います。

他にも、秋の七草を見つけましたのでご紹介しましょう。

秋の七草「女郎花(オミナエシ)」

女郎花(オミナエシ)女郎花(オミナエシ)

この花は、秋の七草のひとつ女郎花(オミナエシ)です。
山地や日当たりのよい草地に生え、小さな黄色い花が、お皿にのせたように茎の上に密集して咲きます。

古くから人々に親しまれてきた花で、万葉集にもオミナエシを詠んだ歌が多く登場します。

古くから人々に親しまれてきた花で、万葉集にもオミナエシを詠んだ歌が多く登場します。

しかし、このオミナエシ、最近ではなかなかお目にかかれません。
オミナエシが育つ日当たりのよい草地が減少し、自生地がとても少なくなってきているそうです。

秋の七草「萩(ハギ)」

萩(ハギ)萩(ハギ)

こちらは、秋の七草の萩(ハギ)です。

日当たりのよい山地に生息し、この季節、蝶のような形をした小さな赤紫の花が、房のように集まって咲きます。しだれる枝にちりばめたように咲くハギの花の姿も、風情を感じます。

しだれる枝にちりばめたように咲くハギの花の姿も、風情を感じます。

万葉集では140以上の歌で萩の花が詠まれており、昔から日本人に愛されてきた花なんですね。

秋の七草「尾花(オバナ)」

尾花(オバナ)尾花(オバナ)

こちらは、秋の七草の尾花(オバナ)です。ススキと言った方が馴染みがありますよね。
黄金色のススキが風になびく姿も秋を感じる風景です。

黄金色のススキが風になびく姿も秋を感じる風景です。

その姿を愛でるための「秋の七草」。

今のように、色とりどりの観賞用に栽培された花がない時代、古代人たちは、自生する野の花の美しさを今よりも強く感じ取っていたのかなと思います。

「女郎花が咲き始めましたね。」「こちらでは萩の花が咲き始めましたよ。」など風雅な会話をしていたのでしょうか。

野花の開花に敏感に気づき、そして季節の移ろいを感じていたのでしょうね。

今回、秋の七草のうち、キキョウ、フジバカマ、ナデシコは見かけませんでした。
オミナエシと同じで、環境の変化から、自生の数がとても減少しているそうです。
昔から愛されてきた秋の七草が、身近に見られなくなってきていることは、とても寂しい事だと思います。

秋の七草以外にも、今の季節に咲く花を見つけました。

秋の野花 ヘクソカズラ

ヘクソカズラ

こちらはヘクソカズラです。かわいくて、とても可憐な花ですよね。しかし、とてもかわいそうな名前なんです。

ヘクソカズラを漢字にしてみると、屁糞葛。
葉や茎がイヤな匂いを放つのでつけられたそうですが、もうちょっとオブラートに包んだような名前をつけてあげられなかったのでしょうか?

ヘクソカズラを漢字にしてみると、屁糞葛。

せめて見かけたら「かわいく咲いたね」とささやいてあげたいです。

秋の野花 カラスウリ

カラスウリカラスウリ

こちらは、カラスウリの花。
秋に鮮やかなオレンジ色の実をつけた姿は、たまに見かけることはありましたが、花は気に留めて探さないとなかなか見かけません。

なぜなら、花は夕方から夜にかけてしか咲かず、翌朝にはしおれてしまうからです。

花は夕方から夜にかけてしか咲かず、翌朝にはしおれてしまうからです。
花は夕方から夜にかけてしか咲かず、翌朝にはしおれてしまうからです。

花弁の縁が細い糸状に長く伸びる、特徴的な花ですよね。まるでレースの飾りのようです。
雌雄異株(しゆういしゅ)で、雌花だけをつける雌株と雄花だけをつける雄株があり、このうち雌株には、楕円形をしたオレンジ色の果実をつけます。

10月~11月頃には、このカラスウリの実がなっている光景がみられると思います。

普段、周りの草花に気に留めないで暮らしていると、こんな可愛らしくて美しい野花達がひっそりと咲いていることになかなか気づきません。

この自然の美しさが少しずつ失われている中、ちょっと立ち止まって野花達を見て、愛でてあげたいなあと思います。

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