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身寄り問題に挑む② 必見!専門家に解決の糸口を聞く 

執筆:

「自分で自分のことが出来なくなった時、あなたは誰に援助してもらいますか?」配偶者?子ども?病院や福祉施設?あまり考えたくないけれど、いずれは誰もが直面する問題。

「身寄り問題」の解決に挑む「NPO法人・つながる鹿児島」の代表理事で司法書士の芝田淳さんに、「身寄り問題」から見えてくる医療や介護のおはなしについて聞きました。

家族が身近にいる方もいない方も「自分のこれから」について、少し考えてみませんか?

「NPO法人・つながる鹿児島」代表理事 芝田淳さん(司法書士)
「NPO法人・つながる鹿児島」
代表理事 芝田淳さん
(司法書士)

芝田さんは、意外にもこんな話から始めました。

「かつてサラ金業者による借金の取り立てが大きな社会問題になりましたよね。でも最近、サラ金業者の看板、あまり見かけないと思いませんか?法改正などで、サラ金業者は激減、大手のみが生き残りました。そして、今やこの業界でも、連帯保証人をほとんどとらなくなっているのが常識です。なのに、日本では人が生きていく上で、その根幹にかかわるような問題にのみ連帯保証人や身元引受人を求める不思議な慣習が残っているんです。

住まい、医療、介護、そして亡くなったとき… 人が生きていく上で必ずと言っていいほど通らなければならない重要な場面で、家族や親族による連帯保証人、身元引受人が求められるんです。」

今、このことで、自分の将来に不安を持つ人がとても増えてきていると言います。司法書士をしている芝田さんのところも、かつては相続などの財産管理に関する相談が圧倒的に多かったそうですが、このところ「身寄り」に関する相談が急増しています。

どうして、『身寄り』に関する相談が増えて来たんでしょう?

「日本は、昔から『もしも』の時は、家族が面倒を看て、助けるものという考え方が根底にあり、赤ちゃんのとき、けがをしたとき、病気になったとき、体が不自由になった時、亡くなったとき、生老病死すべての場面で家族による支援が当たり前とされてきました。

でも今の日本社会は、かつてのような大家族はほとんど見られなくなり、核家族化が進んでいます。たとえ家族がいたとしても、子どもや頼れる親族が近くにいなかったり、シングルの人や子どもさんのいないご家庭も増えています。

そうすると、家族による支えを前提としているこの社会で、自分は果たしてこれから安心して老い、死ぬことが出来るだろうかと不安を持つ人が増えてくるのは当然ですよね。」

鹿児島市で身寄り相談に応じる「鹿児島つながる相談会」を開催(毎月1回)
鹿児島市で身寄り相談に応じる
「鹿児島つながる相談会」
を開催(毎月1回)

そこで、芝田さんたちは、この問題の解決に挑むNPO法人「つながる鹿児島」を立ち上げたんですね。この問題を抱える人たちの解決しなければいけない問題について整理して教えて下さい。

大きく言えば、4つの問題点があります。

  1. 住まいの問題
  2. 医療の問題
  3. 認知症になったとき
    (判断能力が無くなった時)の問題
  4. 死後の問題

住まいの問題

「住まいの確保。これは生きていく上でとても重要な問題です。住まいを借りる時、ほとんどの場合、連帯保証人、もしくは家賃の債務を保証してくれる会社との契約が求められます。貸し手側が、家賃の滞納や夜逃げなどのリスクを回避するためです。

このため、連帯保証人などを見つけられない人にとっては、住まいを見つけるのがとても難しい。特に高齢者や障がい者、低所得やひとり親世帯などは、その事がネックになって賃貸住宅への入居を拒まれるケースが多いんです。

私たちは10年前に居住支援のために「NPO法人・やどかりサポート鹿児島」を立ち上げて、こうした人たちに連帯保証人を提供し、住まいの確保を支援する活動を続けています。

小さなNPOで、どんな相談にも応じられるわけではないんですが、住まいの問題で悩んでいらっしゃる方は、まずはご相談下さい。」
※ 詳しくはやどかりサポート鹿児島ホームページをご覧下さい。

この問題は国でも深刻に受け止めていて、去年、国土交通省による「新たな住宅セーフティネット制度」をスタートさせています。

民家の空き家や空室を活用した入居を拒まない賃貸住宅の登録制度をスタートさせるなど、本格的な居住支援が始まろうとしています。
※ 詳しくは、国土交通省:住宅セーフティネット制度をご覧下さい。

医療の問題

「病気などで入院することになった時、問題になるのが『医療同意』です。自分で自分の意志を伝えることが出来なくなったとき、医療行為をどこまで施すかなど、誰かに判断してもらわなければなりません。今、その多くは家族に委ねられています。

それは、家族がその人の気持ちや意志を、一番良く知っているだろうから…という考えからです。このため、そういう家族がいない人の受け入れを医療機関が敬遠する傾向にあり、いのちに関わる現場でこうした人たちが疎外されるということが起きています。

「つながる鹿児島」では、この問題の解決に向けて、新たなチャレンジをしています。それが、「つながるファイル」づくりです。」

身寄り問題を抱える当事者グループの月1回のあつまり
身寄り問題を抱える当事者グループの月1回のあつまり
一緒に「つながるファイル」づくりに取り組む
一緒に「つながるファイル」づくりに取り組む

「つながるファイル」は「もしも」のときに備えて、自分の意志を書き残して、準備をしておくものです。重病の際に病名や余命を告知してほしいか、してほしくないか、延命治療についても、胃瘻や気管挿管、人工呼吸器といった具体的な治療方法を挙げて、自分はどうしてほしいのかを書き込んでいくようになっています。

 

「つながるファイル」は「もしも」のときに備えて、自分の意志を書き残して、準備をしておくもの
「つながるファイル」は「もしも」のときに備えて、自分の意志を書き残して、準備をしておくもの
医療だけでなく、項目は介護、障がい、死亡時・死後の希望、財産にまでわたる
医療だけでなく、項目は介護、障がい、死亡時・死後の希望、財産にまでわたる

「NPOの支援のもとに作られた『つながるファイル』の存在が社会的に認知されることで『家族の代わり』の役割を果たせるのではないかと考えています。

ハードルはいくつもありますが,取り組まなくてはいけない問題であることは間違いありません。医療機関や医療関係者も、大きな問題だと気付いています。

私たちが取り組んでいる『つながるファイル』を認めるよう、一方的にお願いするのではなく,医師や看護師、医師会、看護協会などと一緒になって、当事者にとっても,受け入れる医療機関や福祉施設にとっても,安心できるシステムを作り上げていくことが大切だと考えています。」

芝田さんたちは、「つながるファイル」づくりを通して、自分が主体となって生きることを考える仲間づくりをしませんか?と呼びかけています。

「つながるファイル」の内容は、医療・福祉・法律などの専門家によって入念に練り上げられたもので、「もしも」のときに備えて「自分で決めておいた方が良い」と思われることが具体的にファイル化されていて、とても良く出来ています。「自分がどうしたいのか、どうしてほしいか」ということを、人任せにせず、自分で考え、その意志を書き残しておくことは、残された人に、重い選択を背負わせない優しい心遣いとなるのではと感じました。

認知症になったとき
(判断能力が無くなった時)

7年後には、65歳以上の5人に1人が認知症という時代がやってきます。親、配偶者、また自分自身も含めて、身近な誰かが認知症になる可能性が高い社会で、自分で自分のことを判断することが出来なくなった時、だれが、その権利や財産を守ってくれるのか?切実な問題です。最近では、ひとり暮らしや認知症のお年寄りがリフォーム詐欺や悪質な訪問販売などの被害者になる事件も起きています。

「認知症になると、書類の整理や手続き、日常の金銭管理や通帳の管理などが、とても難しくなってきます。自分の権利を自分で守ることが出来なくなって、とても無防備な状態で暮らしている方たちがたくさんおられます。

特に、お金の管理などは他人が踏み込めない領域です。ヘルパーさん、民生委員さん、介護の専門職もそこに介入することは出来ません。独り暮らしの人、高齢者だけの世帯、親と離れて暮らす子どもさん達にとっては、とても心配ですよね。施設でも身内がいない人の金銭管理をやむなくしているケースも多く見かけます。

「人の権利を守る」のために用意された制度をもっと知り、活用してほしいと切実に感じます。」

日常生活自立支援事業の活用

芝田さんが、まず挙げたのが、社会福祉協議会が行っている「日常生活自立支援事業」という事業です。これは、高齢や障がいなどで、預金の出し入れなどの日常的な金銭管理や福祉サービスの利用の手続きなどが難しい人たちに対して、困っていることを手伝うサービスで全国の社会福祉協議会で実施されています。

本人に利用の意志があり、契約内容をある程度理解することが出来る人が対象で、生活支援員が支援計画に沿って援助するというものです。

お手伝いするサービスの内容は

  • 日常的な金銭管理
  • 重要書類の預かり
  • 行政手続きや福祉サービス利用の援助
  • 定期的訪問による生活変化の察知 等…
    サービスの利用の費用は実施主体ごとで異なっていますが、概ね、預金の出納が1回あたり1,000円程度、書類の預かりが一ヶ月あたり2,000円程度となっています。
    ※詳しくは、厚生労働省ホームページ
    都道府県の社会福祉協議会の日常生活自立支援事業をご覧ください

成年後見制度の活用

また、判断能力が不十分となった人に対して、それを法的に支援する制度として「成年後見制度」があります。法的に権限を与えられた「成年後見人」などが、その人の代理人となって、その人の財産管理や身上監護を行うというもので、「権利擁護」を目的とした制度です。
※ 詳しくは、政府広報オンラインの「成年後見制度」をご覧ください。

 

「NPO法人・つながる鹿児島」代表理事 芝田淳さん(司法書士)
「NPO法人・つながる鹿児島」
代表理事 芝田淳さん
(司法書士)

死後の問題

「今、社会的な問題になっているのが、身寄りのない人たちの死後の問題です。この問題は自治体も関与しての取り組みが必要だと考えています。

一人暮らしの高齢者はこれからも確実に増えてくる。孤独死も社会問題になっています。病院や福祉施設などで、身元引受人のいない人が敬遠されているのも、この問題の解決策が示されていないからです。

言い換えれば、その問題が解消されると、入院や施設入所などの際に、身寄りがないことを理由に敬遠されることも少なくなるはずです。すでに、この問題に正面から取り組んでいる自治体も出てきています。

横須賀市では、身寄りがなく生活にゆとりのない高齢者の「終活サポート事業」に乗り出していて、元気なうちに、終活相談に応じ、エンディングプランを作成し、それに沿ったサポートを行っています。

『身寄り問題』を個人的な問題とせず、社会全体の問題として捉え、解決策を具体的に示していく必要があると思います。」

横須賀市のエンディングプラン・サポート事業とは…

希望する高齢者から死後の葬儀、納骨などの意向を事前にヒアリング、「就活計画」を作成する。地元の葬儀業者と連携し、その人の意向に沿った生前契約(死後事務委託契約)を結び、死後の葬儀などを(葬儀、納骨代などは契約時に支払う)任せるというもの。

希望すれば「リビングウィル」も「終活計画」に盛り込める。
※ 詳しくは、横須賀市の「エンディング・サポート事業」をご覧ください。

「ひとり暮らし世帯」急増の社会は目前…
「ひとり暮らし世帯」
急増の社会は目前…

終わりに

厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所の推計では、22年後(2040年)には単身世帯が全世帯の4割近くに達し、中でも未婚の高齢者が急増すると言われています。身近に頼る人がいない高齢者が今後、確実に増えていくことが予想されています。

「つながる鹿児島」は、こうした「身寄り問題」に悩む人たちが、「いのちやくらし」の場から「置き去りにされない」社会の実現を目指しています。当事者にとっては「拠りどころ」として、対応に悩む医療や福祉の現場にとっては解決策を一緒に考える場として、今後は行政も巻き込みならが、共にこの問題に取り組んでいきたいとしています。

間近に迫った10人に4人がひとり暮らしになるという時代を前に、私たちはどんな社会を用意することができるのでしょうか…

独り身でも、誰もが最期まで尊厳をもって生きることができる社会の実現は、私たちに投げかけられている大きな宿題だと感じました。

NPO法人「つながる鹿児島」では、身寄りに関する相談会を定期的に開催しています。

身寄り問題で悩んでいる当事者の方、身寄り問題を抱える方への対応でお悩みの方、
住まい、医療、福祉など関わりのある事業者からのご相談にも応じています。

この問題に悩むすべての方々の「よろず相談所」としてご利用ください。

鹿児島つながる相談会のご案内

1人で悩まないで!どなたでもお気軽にご相談ください!
1人で悩まないで!
どなたでもお気軽にご相談ください!

毎月第3土曜日  13時~16時
※ 相談無料 ※予約不要

相談会会場

鹿児島市山下町16-3 有満ビル2階
グリーンコープ生活再生室

問い合わせ先

TEL: 099-296-1253
(しばた司法書士事務所)
※ 駐車場はありませんので、コインパーキングをご利用下さい。


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投稿者: てのん記者