『身寄り』問題① 一人で悩まないで!「つながる鹿児島」から解決の糸口を!


執筆:

ある友人が呟きました。
「このまま私、家で孤独死してたら、誰が見つけてくれるんだろう?」
50代独身。社会の中で活躍しているキャリアウーマンです。
こんな気持ちを抱かせる私たちの社会は、とても心細い社会に思えてきます。
鹿児島で始まった『身寄り』問題への取り組みを取材しました。

去年3月、身寄りのない人、少ない方を支援するNPO法人「つながる鹿児島」が発足しました。

この会、立ち上げの中心となったのが鹿児島市の司法書士の芝田淳さんです。
仕事柄、人の権利や財産に関する相談を受けることが多いそうですが、このところ『身寄り』に関する相談が圧倒的に増えてきたそうです。

NPO法人 「つながる鹿児島」を立ち上げた 芝田 淳さん (司法書士)
NPO法人
「つながる鹿児島」を立ち上げた
芝田 淳さん
(司法書士)

芝田さんは、10年前に障がいや貧困などが原因で、住まいが確保できない人たちのために連帯保証人を提供するNPO法人を作って活動を続けてきました。

活動の中で、日本が身寄りのない人、身寄りの少ない人にとって、とても不自由な社会であると感じてきました。
そしてこの問題は、特別な人の問題ではなく社会全体の問題になってきていると痛感しています。芝田さんはこう話します。

「病気になったとき、介護が必要になったとき、亡くなったときなど、日本は、家族がいることを前提として成り立っています。ずっと家族による支援が当然とされてきたんです。

しかも、「連帯保証人」「身元引受人」といった慣習が残っていて、住まいに入居するとき、病院での医療同意、施設に入所するときなど、いのちとくらしに関わる多くの場面で「連帯保証人」や「身元引受人」が求められます。

ある意味、身寄りのない人が、住居・医療・介護から排除され、差別されているとさえ思います。
これでは、身寄りが無かったり、少なかったりする人はとても不安ですよね。
核家族化や高齢化に伴って、こうした人たちはさらに増えていくことが予想されます。

こんな社会では、とても安心して暮らすことはできません。
解決には、専門職による支援、当事者たちのつながり合い、関わりのある事業者(居住、医療、介護等のサービス提供者)の理解が必要です。

関係している人たちが、手をつなぎ、この問題に取り組んでいくことが必要だと思いました。」
芝田さんたちは、まず定期的に相談窓口を開設することにしました。

身寄り問題を受け止める「鹿児島つながる相談会」を開設!

「鹿児島つながる相談会」は鹿児島市で毎月、第3土曜日に開かれています。

一人で悩まないで…専門職が「身寄り問題」の悩みを受け止めます!
一人で悩まないで…
専門職が「身寄り問題」の悩みを受け止めます!

ここには、弁護士、司法書士、社会福祉士、精神保健福祉士、医療ソーシャルワーカーなど、法律や福祉、医療など様々な分野の専門家が待っていて、無料で相談に応じています。

専門職が協働して、相談に応じます
専門職が協働して、
相談に応じます

今、切実な問題を抱えている人ばかりでなく、将来への漠然とした不安を抱えた方など…
どなたでも気軽に足を運んでほしいと呼びかけています。

毎回12~13名が訪れる
毎回12~13名が訪れる
雇用、相続、住まい、生活不安など相談内容も幅広い
雇用、相続、住まい、生活不安など相談内容も幅広い

相談会には、自分が亡くなった後のことが心配(迷惑をかけたくない)身内や親しい人が今はいるが、その人たちが亡くなったあと、自分はどうなるんだろうという不安など、様々な相談が寄せられています。

専門職が法律や制度や仕組みなど具体的なアドバイスをしながら、一緒に考え、解決の糸口を探していく場となっています。

相談員の須藤奈津子さん(社会福祉士)
相談員の須藤奈津子さん
(社会福祉士)

「ここで一足飛びに解決するという訳ではないけれど、道は見えてくる。ここに来ることで、次の一歩が見えてくるはずです。」

継続して相談に来ているという方にお話を伺えました。
継続して相談に来ているという方にお話を伺えました。
相談に来ていた西田鉄也さん
相談に来ていた西田鉄也さん

「ここがあるのと無いのじゃ大違い。安心感が全然違う。近く転居の予定があるので、連帯保証人の問題など、相談したい。今、みんなで『つながるファイル』というのを書いているんですよ。」

晴れ晴れとした表情です。西田さんがお話してくれた「つながるファイル」とは…

自分らしく生きるための「つながるファイル」

自分のこれからを考える「つながるファイル」
自分のこれからを考える
「つながるファイル」

「つながるファイル」とは「もしも」のときに備えて様々な準備をしておくもので、いわゆるエンディングノートにとても似ていますが、それとはちょっと違います。

身寄りのない人、少ない人が、自分らしく生きていくために自ら作るもので、「ファイル」に書かれた意志や思いを仲間やNPOと共有し、「もしも」のときに、家族に代わって、その人らしい生き方を支援していこうというものです。

1シート1項目、全部で15シートあり、書き終えたものからA5ファイルに入れていきます。ファイル形式のため、いつでも書き直すことができます。
また、「ある時」まで見られたくない内容のものは封筒に入れておくことができるというものです。

「つながるファイル」のフォーマットに沿って
「つながるファイル」の
フォーマットに沿って
自分の意志を書き込んでいく…
自分の意志を書き込んでいく…

緊急時の連絡先、病歴などの医療情報、延命治療や治療方法など医療についての意思表示、もしもの時の希望(葬儀や通夜、墓等)財産の所有状況等、とても詳細な項目が設けられています。

自分がどうしたいのか、どう生きたいのかという意思を明確にすることで、将来に対する漠然とした不安を減らし、「もしも」のときに、その内容に基づいて支援を行っていこうというものです。

これからのことについて共に考えることを大切にします
これからのことについて共に考えることを大切にします

そして、この「つながるファイル」を、同じ悩みを抱える仲間同士で一緒に作りあげ、共有していこうという活動が始まっています。

みんなで悩みを分かち合い、助け合う「ゆくさの会」

「つながるファイル」づくりを行っているのが、「つながる鹿児島」の中にある「ゆくさの会」という当事者グループです。
身寄り問題に悩んでいる当事者同士が互いに交流を深めながら、支え合っていこうというものです。

月に一回集まり、メンバー同士親睦を深め、近況報告をしながら自分たちが不安に思っていることや、これからお互いのために何が出来るかを語り合い、新しい繋がり合いを築いていこうとしています。

この日の定例会は、中高年の男性たちの集まり!
この日の定例会は、
中高年の男性たちの集まり!

顔馴染みになった人たちがざっくばらんに語り合う!
「就職はどうなった?」「今度面接に行きます。」
「暑くなったので、みんな熱中症にならないように体に気をつけてね。」

支援者が、伴走者となり語り合います。この日は、会に顔を出さなくなったメンバーのことについてみんなで話しました。体調が悪く、身の回りのことをする気力を失っているようでした。

こんなやりとりが交わされていました!
こんなやりとりが交わされていました!

支援者 :「連絡しても電話に出ない。心配して行ってみたら、ようやく出て来てくれたのだけれど、なんか様子が随分変わってしまっていて…」

メンバー:「あの人は考え込んで遠慮するタイプの人だから、誰にも迷惑かけたくないって思っているんじゃないかなぁ。足が悪いのに5階に住んでるでしょ。不自由なところで我慢して暮らしているから引きこもってしまう。環境が変われば、良くなると思う。」

男性のことを知っているメンバーがそう話しました。

そして、気を許せるメンバーがちょくちょく様子を見に行ってみたらどうだろうか、滞っている部屋の掃除や片づけをメンバーで手伝ったらどうだろうか、環境が変われば気持ちも前向きになるのではないか、といった声があがりました。

「ゆくさの会」活動の支援を担当する世話人 河原晶子さん (志學館大学名誉教授・社会学博士) 
「ゆくさの会」活動の支援を担当する世話人
河原晶子さん
(志學館大学名誉教授・社会学博士)

「誰だって体調が悪くなることがある。この先、入院もあるかもしれない。そんな時、入院の準備や病院の付き添いくらいならお互いに出来るよねとか、用事が無くても普段からお互いに連絡を取り合ってみようかとか…」

そんな自然な支え合い、助け合いの形が、この「ゆくさの会」から、生まれていけばと良いなぁと思います。

楽しいことも一緒にしようと、今年1月には「お雑煮を食べる会」も開きました。夏には、お弁当を食べながら、一緒に花火を見ようという計画も進んでいます。

NPO法人「つながる鹿児島」代表理事 芝田淳さん
NPO法人「つながる鹿児島」
代表理事 芝田淳さん

「今は、男性グループの「ゆくさの会」が動き出していますが、例えば、おひとり様たちのグループ、子どもさんが遠く離れていたり、いない方たちの集まりなど、同じ思いで繋がる小さな「ゆくさグループ」が幾つも出来ていけば良いと思っています。

それぞれが、思いを共有しながら、「つながる」ファイルづくりを行ったり、困っていることを出しあう中で、支え合いの仕組みが出来ていけば心強い。

これは、既存の制度や専門職による援助だけでは、補いきれない部分です。私たちはその繋がり合いを支援する。

『つながる鹿児島』は、身寄り問題をきっかけにして、誰もが等しく安心して暮らせる社会を、みなさんと一緒に考え、作っていきたいと思っています。」
つながる鹿児島

鹿児島つながる相談会のご案内

1人で悩まないで!どなたでもお気軽にご相談ください!
1人で悩まないで!
どなたでもお気軽にご相談ください!

毎月第3土曜日:13時~16時
※相談無料 ※予約不要

相談会会場

鹿児島市山下町16-3 有満ビル2階
グリーンコープ生活再生室

問い合わせ先

TEL: 099-296-1253(しばた司法書士事務所)
※駐車場はありませんので、コインパーキングをご利用下さい。
しばた司法書士事務所

終わりに

自分で自分のことが出来なくなった時、誰が援助するのか?

これは「身寄り問題」を抱える人だけの問題では無く、誰もがいずれ向き合い、考えなければいけない共通のテーマです。

芝田さんに「自分で自分のことが出来なくなったとき」に備えて、知っておきたい、考えておきたい医療や介護のお話を伺いました。
次回はそのお話をお伝えしますね。

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投稿者: てのん記者