福岡県朝倉市宮野にある比良松中学校。
筑後川の支川、桂川の護岸がえぐられ、体育館や校舎が今もこのような状況になっています。
今も残るこの光景を見て、改めて濁流のすさまじさを感じました。
比良松中学校のほど近く、桂川沿いに建つ老舗の菓子店「ハトマメ屋」。
こちらも豪雨の被害を受けていました。
ハトマメ屋で働き始めて12年の従業員 星野左知子さんに話を伺いました。
「目の前を流れる桂川の堤防が決壊し、周辺は大変な浸水被害を受けたんですね。私たちの建物は、一階の店舗には浸水しなかったんですが、地下にある駐車場や事務所が浸水し、大きな被害が出たんです。」
店の横に地下室に入る入り口があります。
星野さんに案内してもらいました。
「壁にまだ浸水の跡が残っていますよ。だいだい1m70cm位の高さまで水や泥が流れ込んできたんです。事務所が地下にあったんですが、そこに置いてあったパソコンが水没し、これまで蓄積してきたデータがだめになってしまいました。車5台、エアコンの室外機、配電設備なども水没。相当な被害が出ました。」
「こういう状況の中、いち早く、日頃お世話になっている取引業者の方たちが、片付けに駆けつけて下さったんです。そして、軍手やタオル、片付けに必要な道具類を提供してくださったり、何日か停電していましたので、水や食料を持ってきて下さったり、本当にありがたかったですね。」
ハトマメ屋は明治18年創業。地元で昔から親しまれてきた菓子店です。
ハトマメ屋には、お客さんたちからも「大丈夫ですか?」「応援しています!」といった支援が多く届きました。
この多くの支援が後押しとなり、とにかく店を早く開けよう!出せる商品から販売しよう!という気持ちで、復旧を急ぎました。
また、銀行から融資を受けるために罹災証明も取得しました。
そして、豪雨からわずか11日目の平成29年7月16日から店を再開させました。
「配電設備が水没したため、冷凍庫、冷蔵庫が使えなくなり、保管していた材料等が使えなくなり、一から材料を揃えないといけなかったんですね。
そこで、当初はすべての商品ではなく、「シュークリーム」や「おこめ大福」やなど材料が手に入った商品から販売していきました。」
「今まで取引のなかった大手の企業が大口の注文を入れて下さるなど、本当に温かい御支援をいただいています。おかげさまで店にも連日たくさんのお客様に来ていただいています」
災害後、ハトマメ屋では、浸水に備えて改修工事を行いました。
まず、地下にあった事務室を二階にあげました。
そして、地下の床に設置してあったエアコンの室外機や電力ケーブルを高いところに設置しました。
「実は、私の実家は朝倉市杷木町にあるんですが、今回の水害で実家が流されてしまいました。本当にショックでしたよ。
両親はすでに他界していて、実家には弟が住んでいたんですが、弟は避難していて無事でした。」
「水害の後は、実家も流され、働いているハトマメ屋も被害を受け、気持ちが沈んでいましたが、とにかく命があったことが何よりだったと思います。
たくさんのご支援に感謝しながら、これからも前を向いて頑張って行こうと思っています。」
朝倉に足を運んで、直接、被害に遭われた方たちのお話を伺い、その経験された事実を、深く心に受け止めました。
老舗の菓子店「ハトマメ屋」。
水害を乗り越えて、これまでと同じく、これからも、末永く地域の方に愛されていただきたいと思いました。
ここで、「ハトマメ屋」のお菓子をご紹介しましょう。
「ハトマメ」
子供に空腹な思いをさせないようにと、明治の創業当初から作られてきました。
当時は「人造豆」「筑前美人豆」と呼んでいましたが、二代目の方が、ご自身の戦争体験から、いつまでも平和であってほしいという願いを込めて「ハトマメ」という名前にされました。
小麦粉を砂糖水で練って丸め、焼き上げた、素朴でやさしいお菓子です。
ハトマメを金太郎の子袋に詰め、おみくじを入れた「金トキ豆」が看板商品です。
この他にも、和菓子屋、洋菓子、豆菓子など多くの種類のお菓子を販売しています。
「ハトマメ屋」
所在地:福岡県朝倉市宮野1910-3
連絡先:0946-52-0036
アクセス:
大分自動車道 朝倉ICおりて3分