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南九州市頴娃町馬渡地区にある「だんだん」は、男性の居場所として生まれた集いの場。
ここにやってくる男性たちは、ながい人生で培った様々な技を持っています。そのうちの2人の名人に、お話をうかがいました。
そば打ち名人 浜田福蔵さん(65歳)

そばを打ち始めたのは50歳くらいから。おふくろが打ちおったそばがおいしかったなあと思ってね、つくってみようと。5年くらいで10割のそばが打てるようになったよ。
そば打ちはね、こねと水加減が勝負。水はね、1ccちょっとの狂いなら何とかなるけど、3ccをこえるとだめだね。水の質によっても違うしね。ここで打つのとよそで打つのとではちがってくるもんね。水の温度でも変わるよ。山川で打ったときはね、あそこの水は冷たいからね、また違ったよね。そば粉もね、年によって質が違うからね。産地によってもね。粉の持ってる水分量が違うから。
毎回、最初に打つ時はドキドキするよね。でも楽しいよ。
今日のそばはどうだったね、おいしかったでしょう?



収穫祭でふるまわれたそばは、もちろん浜田さんが打ったもの。いつもは地元で採れた新そばを打つのですが、今年は収穫が間に合わず去年のそば粉で打つことに。水分含有量が少なくて少し苦労したそうですが、前日に3時間かけて、6㎏のそば粉を打ちました。
手打ちそばならではの歯ごたえと、見事にそろった麺の幅。さば節の出汁がきいたおつゆと相性抜群で、とてもおいしかったです。
そば打ちの奥深さを、少し恥ずかしそうに、でも熱く語って下さった浜田さん。そばへの情熱が伝わってきました。
炭焼き名人 村口国憲さん(76歳)

炭を焼いて、もう20年近く。前は自宅で焼いていたけど、煙が出て近所迷惑になるから、ここに窯をつくって。
クヌギや樫を入れて、粘土で密閉して30時間くらい焼いて、3日くらいおいて取り出す。
難しい、火加減が。固くできればいいけど、手で割れるようなのができたり…。難しい。
ここで炭焼きができてよかった。


「だんだん」の小屋の裏手にある炭焼き窯で、焼きあがった炭を見せながら話して下さった村口さん。気兼ねなく炭焼きができる場で、静かに炭と向き合う時間を大切にしているのがよくわかりました。
今の炭焼き窯は、去年、地元の小学生と一緒に作ったものだと、うれしそうに話してくれたのも、心に残りました。
お二人のほかにも、まだまだたくさんの名人がいる「だんだん」。拠点となる建物を、ほぼ自分たちだけで建てたのが、何よりの証です。
「だんだん」世話人の上村修さん(54)はこう話します。
「だんだんの敷地が、いつもきれいに保たれているのも、管理人の上村敏秋さんのこまめな手入れがあってこそなんですよ。みなさんの持ってるものは、ほんとにすごいですよ。
これからは、もっと地域の若い人たちを巻き込んでいこうと思ってます。子供たちと炭焼き窯を作ったのもその一つ。子供たち、そしてその親世代へと、交流が広がっていけばいいですよね。」
住民およそ180世帯、高齢者が約50パーセントという馬渡地区。収穫祭に参加している方々も、ほとんどがお年寄りでしたが、自分たちが担い手で主役という祭りを、心底楽しんでいる様子が印象的でした。上村さんのいう「出番と役割」があることの大切さを見た気がしました。
「だんだん」のこれからを、また取材したいと思いました。
