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「しょうたのみせ」は、東市来町長里の、田んぼが広がるのどかなところにあります。
花に囲まれた小さなお店です。
地元の野菜やお米、お茶などが売られています。
店のあるじは、東峯昭太さん、34歳。
毎日4時半に起きて、自転車で28件の新聞配達をすませ、そのままお店へ。朝7時ごろには開店します。
日によってまちまちですが、春から秋は夕方6時半くらい、冬は夕方5時半くらいに閉店。定休日は毎週月曜日です。
実は、昭太さんには知的障害があります。息子が安心して働ける場所を作りたいと、お母さんの秀子さんが一念発起。民家の解体現場から出る廃材などを譲り受け、一から手作りしました。
「この子のおじさんと私と昭太で全部作ったんだよ。最初は別の場所でやってたんだけど、車がスピードを出して通るところで、お店に気づいても、通り過ぎちゃうことが多くてね。4年くらい前に、ここに移ることにして、前の場所で作った建物の材料をそのまま持ってきて作り直したんだよ。」
花の大好きな秀子さんが、種から育てた季節の花がお店を彩ります。
最初は、お兄さんと同じ職場で働いていた昭太さんでしたが、お兄さんが、病気のお父さんに代わって家を支えるため退職するのを機に、昭太さんも退職することに。
その後1年近く職を探しましたが、なかなか見つからなかったそうです。そこで秀子さんは、自分が畑で育てた野菜を売るお店を作って、昭太さんに任せることにしたのです。
「最初はほとんどしゃべらなかったの。お金の計算もうまくできなかったりね。でも任せるとね、出来るようになるのよね。」
昭太さんは、接客もお勘定も、ひとりでこなしています。
地元でおなじみの店となった「しょうたのみせ」
今では、地元の5人の方々が、野菜などの商品を持ち寄っています。そのうちの一人、久保牧江さんが、ちょうど野菜を持ってこられました。
「今は野菜が少ない時期だからね、あんまりないんだけどね。少しの量でも毎日持って来るようにしてるの。品物がないとお客さんも来なくて、昭太くんが寂しそうだもんね。近所の友達にも声をかけて、なすび一本でもいいからって分けてもらってもってくるの。昭太くんは正直でまじめ。少しでも足しになればと思ってね。」
お店には、常連のお客さんがやってきます。
「昭太くんは、まじめで正直一辺倒。おまけに安いし。だから来るのよ。」とお客さん。
昭太さんの人柄が、お店一番の魅力のようです。
お客さんがいないとき、昭太さんは、近くの川で魚を見るのが楽しみです。
「誰も採らないから、大きいのがたくさんいるよ。」
そんな昭太さんのために、お母さんが作ってくれたのがこれ!
瓦をすりこぎでたたくと、こーんこーんと甲高い音が出る、特製の呼び鈴ならぬ呼び瓦!これなら、お店を離れていても安心です。
昭太さんにとって、お店で過ごす時間は、どんなものなのでしょう。
「楽しい!みんな、がんばってねって言ってくれるのが楽しい!」
勢いよく返ってきた答えに、なんだかうれしくなってしまいました。
昭太さんの人柄で、お客さんの絶えない「しょうたのみせ」。お店に野菜を持ってこられた方もお客さんも、口々に「昭太くんはがんばってるから、よろしくね。」と、わがことのようにおっしゃるのが印象的でした。
息子の力を信じるお母さんの愛情と、地域の人たちの自然体の応援を受けて、昭太さんは今日も、お店でお客さんを待っています。