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「食・レシピ」

鹿児島のお盆料理「鼻つまん団子」


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~鼻つまん団子~

お盆ですね。

小さい頃、お盆に祖母の家に帰ると、祖母や母、おばさん達がお盆の料理作りをするのがいつもの光景でした。

献立は、そうめんの汁、煮しめ、がね(さつまいもが入ったかき揚げ)、鼻つまん団子、といもがらの酢の物。

朝から祖母たちは大忙し。大きな鍋で煮しめをぐつぐつ煮て、団子をまるめてゆでて、小豆をコトコト煮てぽってりとしたあんこになるまで気長に混ぜて・・・
「あんこを作る時はずっと混ぜてないとあんこが飛び跳ねてやけどするんだよ」と祖母から教えられました。そしてお皿を出して、盛り付けて・・
祖母たちは休む間もなく働きます。

一方子供たちは、時々手伝いをしたり、つまみ食いをしたり、縁側でスイカを食べたりしながら、お盆の料理が出来上がるのを待ちました。
そんな光景でした。

一般的にお盆にお供えするお団子には、迎え団子、お供え団子、送り団子があるそうです。迎え団子はお盆の初日に、現世に帰って来た先祖様に食べていただくもの、お供え団子は、お盆の期間中におもてなしとして食べていただく団子やぼたもち、そして送り団子はご先祖様をお見送りするときにお供えする団子だそうです。

鹿児島でも、地域によってお供えの仕方に違いがあるかもしれませんが、祖母の家では13日にぼたもち、14日に鼻つまん団子を作り15日までお供えしていました。

鼻つまん団子アップ

そして、13日から15日は肉や魚など生臭物(なまぐさもの)を食べない。出汁(だし)もその間は、煮干しや鰹節ではなく、昆布でとっていたそうです。ご先祖様をしのび、手間を惜しまず、きめ細やかな精進料理を作っていた昔の人たちの真心に触れました。

ところで、昨日スーパーに買い物に行ったら、「お盆のおもてなし」というPOP広告が店内あちこちに貼られ、握りずしの盛り合わせ、焼き肉用の肉の盛り合わせ、オードブル、おはぎ、お団子などの商品がずらりと並べられていました。

最近は、私の家もそうですが、時間と手間をかけてお盆の料理を作るご家庭も少なくなってきているのではないでしょうか。

そこで、せめて一品だけでもと、今日、娘と一緒に鼻つまん団子を作りました。祖母や母から教えてもらったもの。

丸めた後に、左手の人差し指で団子を支え、右手の親指と人差し指を使ってぎゅっとつまんで鼻のような形にします。

丸めた後に、左手の人差し指で団子を支え、右手の親指と人差し指を使ってぎゅっとつまんで鼻のような形

この形にすると、火の通りが早いとか。
鼻つまん団子という響きがなんともかわいらしいですよね。

祖母から母へ、伝えられてきた鹿児島のお盆の伝統料理。

母は今でもきちんと作っていますが、それを私が作らなくなったら、娘にも伝えていけない。そうやって、いろんな古き良き鹿児島の風習が途絶えていくのはやはり寂しい。

きちんとすることは難しいと思いますが、昔の人たちの思いを胸にしまって、私なりに大事にしていきたいと思っています。

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